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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

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●140


 少しすると、パーカーが干し柿を持って戻ってきた。

 皿に乗っている干し柿は四つ。

 パーカー自身は食べるつもりがないらしい。


「干し柿を考えた者は天才なのじゃ」


 皿が置かれるなり、リディアが干し柿を手に取った。

 パーカーにうながされ、残りの面々も干し柿を口に運ぶ。


「お腹が空いていたこともあって、ものすごく美味しく感じます」


「本当ですね。糖分が染み渡ります」


「あっ! ショーン、髪が乱れてるわよ」


 干し柿を味わっていると、ヴァネッサが俺の髪の乱れに気付いた。

 確かに結んでいるはずの髪がはらはらと落ちてきている気がする。


「じゃあ結び直しましょうかね」


「ショーンくんはかなり髪が伸びましたよね」


「これはリディアさんに魔法で伸ばしてもらったんですよ」


 結局、武闘大会の前に髪を伸ばしてもらってから、ずっとそのままにしている。


「鬱陶しいから早く切れと言っておるんじゃがのう。安易に伸ばさなければ良かったのじゃ」


 リディアがじとっとした目で俺のことを見た。

 俺としては、結んでいるから鬱陶しいというほどではないのだが、見ている側からすると邪魔なのだろうか。

 俺も髪を洗うときだけは面倒だが。


「ねえ。伸びる前からそうだったけど、ショーンのそれって地毛なの?」


「実は私も思ってました。オシャレだな、って」


 二人が何のことを言っているのかはすぐに分かった。

 俺の髪色のことだ。

 俺の髪は、黒い髪にピンク色の毛が混ざっている。


「これは地毛ですよ。染めたわけでもないのに、ところどころ変な色の毛が生えてくるんですよね」


「ちょっと。変な色って言わないでよ。その色、あたしの髪色に似てるじゃない!」


「あっ、すみません。でもヴァネッサさんは俺とは違って、その髪色が似合っていると思いますよ」


 そんなつもりはなかったのだが、失言をしてしまったようだ。

 確かに俺のピンク色の毛は、ヴァネッサの珊瑚色の髪色に似ていると言えるかもしれない。


「ショーン、本当にそう思ってるの? 許されたくて適当なことを言ってるんじゃないでしょうね!?」


「思ってますよ。活発なヴァネッサさんによくお似合いの色です」


「本当に本当? ショーンは、あたしの髪が綺麗だと思ってくれてるの?」


「はい。俺の髪はさておき、ヴァネッサさんは綺麗ですよ」


「…………あ、ありがと」


 ヴァネッサは何故か自身の頬を押さえながらそっぽを向いた。

 するとその様子を見ていたドロシーがくすくすと笑い始めた。


「ヴァネッサちゃんってば、かーわいい」


「からかわないでよ、ドロシー」


「からかってなんかいませんよ。いつの世も、恋する乙女は可愛いものです」


「……妾はなんだかむず痒くなってきたのじゃ」


 リディアが自身の身体を掻きむしり始めた。


 自身のことを魔王だと偽っていたリディアに思うところはあるが、こうしていると仲良しパーティーのように感じられる。

 少なくともリディアは、ヴァネッサやドロシーを害そうとはしていないようだ。


 そんなことを考えながら、俺は自身の髪をほどいた。

 結び直す前に、手櫛で軽く梳かしていく。

 すると。


「ああっ、ああああああ!?!?」


 突然、パーカーが叫んだ。

 また発作が出たのかもしれない。


「……パーカーさん?」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


「落ち着いてください、パーカーさん」


 パーカーは床に頭を擦りつけながら、狂ったようにひたすら謝罪をしている。


「私が悪かった! 全部私と彼らのせいだ! 君には本当に申し訳ないことをした!」


「どうしよう!? 食堂のときみたいに教会へ連れて行った方が良いのかしら!?」


 ヴァネッサも軽くパニックを起こしている。

 場がより混乱するから、とりあえずヴァネッサだけでも落ち着いてほしい。


「私は殺される覚悟が出来ている! 君には私を殺す権利がある!」


「大丈夫ですよ。ここにいる誰も、パーカーさんを殺したりはしません」


 ヴァネッサと違い、ドロシーは冷静なようだ。

 ゆっくりとした口調で、パーカーを落ち着かせようとしている。


「いいや。君は私たちを許せないと思って、それで研究所を焼いたのだろう!?」


「パーカーさん、安心してください。研究所と関係のある人はここにはいませんよ」


「いるじゃないか、そこに!」


 そう言ってパーカーが指差したのは、俺だった。


「ショーンくん、どういうことか分かりますか?」


「いいえ。俺にもパーカーさんが何の話をしているのかさっぱり……」


「申し訳なかった、被検体X! 君を置いて逃げて悪かった!」


「被検体X?」


 そういえばその単語は、盗賊団のアジトにあった日記で見た気がする。

 しかしどうして今その単語を?


 パーカーが困惑する俺の手を、がしっと握った。


「俺が……ですか?」


「そうだ! 君が、残酷な仕打ちに耐えかねて研究所を焼いた、被検体Xだ!」


「俺が、被検体X……?」


 その瞬間、頭の中に凄惨な記憶が雪崩れ込んできた。





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