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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

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136/172

●136 side ミラ


 二人と別れた後、近くの町に到着した私は、宿屋で水晶玉を光らせた。


 この水晶玉は通信用として渡されたものだ。

 重い水晶玉は旅には不向きだと説明をすると、普通よりも軽量化したこの水晶玉を渡されたのだ。

 そういうことではないのだが、水晶玉を持ち歩く苦痛は、常に部屋にこもっている人には分からないのかもしれない。


 やがて光を放つのを止めた水晶玉は、相手の姿を映し出した。


『報告が遅いのではないか、ミラ』


 開口一番、それは無いだろう。

 まずは部下の安全を心配してほしいものだ。


「すみませーん。ちょっと事情がありまして」


『……謝罪が軽いな』


「あはっ、死線を潜り抜けたあとなので、気が抜けてるのかもしれませんね」


『死線? 今回は盗賊団潜入よりも安全な仕事のはずだが?』


「あれも危険でしたけどねー。カーティスさんは私に危険な仕事をさせ過ぎです」


『相応の賃金は渡しているだろう』


 確かにかなりの賃金を貰っているが、仕事は楽であるに越したことはない。


『それで、ちょっとした事情というのは、報告が遅れた理由になるほどのものなのかな』


「いやあ、それがすごいことになりましてねー。さすがのカーティスさんでも驚くと思いますよ」


 私はショーンくんを見つけたこと、ショーンくんの横には魔王であるリディアちゃんがいたこと、二人と一緒に魔物の住処に行ったことを話した。


「……というわけです。あ、王国には言わないでくださいね。私が魔王に殺されちゃうので。ショーンくんが変装をしていたため、同じ村にいたのに間抜けな私が見逃したことにしておいてください」


『……して……した』


「え?」


『どうして僕に話した!?!?』


 カーティスさんは、なぜか頭をかきむしりながら怒鳴っている。


「どうしてって、上司ですから。カーティスさんだって報告を求めたじゃないですか」


『王国に伝えられない報告は聞きたくなかった! ミラの判断で黙っているのならミラの責任だが、聞いてしまったからには僕の責任になるじゃないか! どうしてくれるんだ!?』


 ここまで最低なことを言う上司もそういないだろう。

 いっそ清々しくて好感が持てるかもしれない。


「黙っててくださいね。王国にバラしたら私が魔王に殺されちゃうんですから」


『うっ……都合の良い部下がいなくなるのは困る……』


 すごい。

 カーティスさんがどんどん最低さを更新してくる。


『ミラの見た魔王、本当に魔王だった? ミラの勘違いじゃない?』


「現実逃避しようとしないでください。教えられた通りの金髪赤目でしたよ。子どもの姿でしたけど」


『ほら、ミラの勘違いだ!』


「見た目は子どもでしたが、明らかに子どもじゃありませんでしたよ。殺気もそうですし、指を鳴らすだけで私に尻尾を生やしたんですよ。他人の心も読めるようですし……あと、一蹴りでものすごい距離を吹っ飛ばされました。私じゃなかったら死んでましたよ」


 体術の訓練を受けておいて本当によかった。

 魔王は気軽に蹴っていたが、受け身を取ることの出来ない者だったら大ダメージを負っていたはずだ。


「だから魔王が強いのはすぐに分かったんですが……ショーンくんは全然強そうに見えなかったんですよねー。武闘大会でも大した成績じゃなかったですし。あの程度なら私でも勝てるような気がします」


『あれは爆弾だ。普段は何ともなくても、爆発したら手に負えない』


「カーティスさんはそんな人を勇者パーティーに入れるように進言したんですか?」


『爆弾は爆弾処理班の元に置いておくのが一番安全だからな』


「厄介事を勇者に押し付けたってことですか? やっぱりカーティスさんは最低ですねー」


 この人が国王に進言できる立場にいることには不安しかない。

 カーティスさんは、魔法に関する能力は高いが、引きこもりで根暗で自己中心的で部下を大切にしない最低な人だ。


『被害を最小限にするために出来ることをしたまでだ』


「でもやっぱりショーンくんが爆弾っていうのは違和感があるんですよねー。過去、実際に爆発したことがあるんですか?」


『ある。あれのせいで大勢が死んだ……まあ、死んだ奴らの自業自得とも言えるがな』


 カーティスさんが勝手に爆弾と呼んでいるだけかと思ったが、ショーンくんは実際に爆発したことがあるらしい。

 あのショーンくんが大勢を殺すというのは想像が出来ないが、実績はあるようだ。


『しかし、あれの横に魔王がいるのは良い状況とは言えないな』


「まさか二人を引き離せって言うつもりじゃないですよね? 今度こそ殺されちゃいますよ、私」


『…………』


「今、引き離せって言おうとしてました? 私だっていい加減に転職を検討しますよ?」


『……今さら僕から離れていこうとしたら、ミラの記憶を改ざんして幼少期から僕にものすごく世話になったことにするよ? そして僕に恩返しがしたくて仕方のない身体にして、二度と僕から離れられないようにする』


 嫌悪より先に、人はここまで最低な発言が出来るものなのかと感心してしまった。


「カーティスさん。まさかそんなエグイ魔法を人間相手に使ってるわけじゃないですよね?」


『さすがの僕でもまだ人間相手に使ったことはないよ。人間相手には、ね』


「いくら長い付き合いとはいえ、その一線を越えたら敵認定しますからね」


『冗談だよ。ミラには別の任務を任せようと思ってる。次の任務は……』




 水晶玉での通信を終えた私は、溜息を吐いた。

 賃金が良いためカーティスさんの下で働いているが、そろそろ潮時なのかもしれない。


「でもこの金額を貰える仕事って他に無いのよねー。冒険者としてクエストをこなすにしても、ここまでの金額はなかなか手に入らないし」


 仕方がない。

 もう少しだけカーティスさんの下で働くとするか。


 私は水晶玉をリュックサックにしまうと、代わりに変装道具を取り出した。


「髪を二つに結んで、そばかすを描いて……久しぶりにメガネをかけるのもいいかもね。この前はエラだったから、次はどんな名前にしようかな」





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