表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第五章】 美少女と、魔物の住処で性(さが)を知る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/172

●112


 困惑する戦士と僧侶と魔法使い、そして彼らを説得しようとする勇者を無視して、魔王リディアはケイティとレイチェルに向き直った。


「さあ、契約書を燃やすのじゃ」


「リディアさんは、ケイティたちを売るつもりですか?」


 また一段と気温が冷えた。

 魔王リディアが怒っている。


「お前たちは、絶対に契約してはいけない相手と契約をした。この意味は分かるな?」


「……はい。申し訳ありませんでした」


「早く契約書を燃やすのじゃ」


 今やケイティとレイチェルは、気の毒なほどに震えている。


「それは、ケイティたちに対する死刑宣告です」


「別に妾は、お前らを殺そうとは思っておらん。契約書を燃やせばそれでいい」


「相手は勇者パーティーです。ショーン様との契約を切ったら、レイチェルたちは殺されてしまいます」


「妾の知ったことではない」


 あまりにもバッサリと、魔王リディアはケイティとレイチェルを切り捨てた。


「ピンチの時にショーン様に助けてほしいという、ただの乙女心だったんです」


「ショーン様を害そうだなんて思惑は、ただの一つも無かったんです」


 ついにケイティとレイチェルは泣き始めた。

 しかし魔王リディアの考えが変わることはなかった。


「理由はどうあれ、事実としてお前はショーンと契約をした。しかも、本来使い魔とするような契約を、じゃ」


「悪戯心だったんです! まさか本当に契約してくれるとは思わなかったんです!」


「軽率に契約を交わしたことに関してはショーンにも非がある。ゆえに契約書を燃やすなら、妾はお前らを殺すことはしないでやると言っておる。しかし不敬なお前らに、妾たちが手を貸してやる理由はない」


 そこまで言うと、魔王リディアは俺に向き直った。


「ショーンよ、お主にはあとで長ーい説教をするつもりじゃ。覚悟をしておくがいい」


「契約書をよく読まずにサインをしてすみません。反省してます」


 素直に謝った。

 この状況を招いたのは俺だ。

 俺が軽率にサインをしなければ、状況は違っていたはずだ。


「あの子は荷物持ちさんの上司なのでしょうか?」


「ただの子どもに見えるけど、勇者を簡単に投げ飛ばしていたものね」


「今はどうでもいい。それよりもあの魔物たちだ」


 いつの間にか話がついたらしい勇者パーティーが、俺たちを見つめていた。


「さあ、契約書を燃やして勇者に殺されるか、契約書を燃やさず妾に殺されるか、好きな方を選ぶがいい」


 魔王リディアがケイティとレイチェルに近づいた。

 わざとらしく指をポキポキと鳴らしている。


「勇者は知らんが、妾は優しくはないぞ。じわじわといたぶりながら殺してやる」


 一方で、ケイティとレイチェルは号泣中だ。


「妾が相手なら万に一つの勝ち目も無いが、勇者が相手なら万に一つは、のう」


 魔王リディアが、これまたわざとらしいほどの笑みを浮かべている。

 こんな相手が近づいて来たら、俺でも号泣する自信がある。


 恐怖に勝てなくなったのか、それとも考えた上で選択したのかは分からないが、ケイティとレイチェルの住処から一枚の紙が飛んできた。

 俺がサインをした『ケイティとレイチェルのファンクラブ会員に関する契約書』もとい、ケイティとレイチェルを守る契約書だ。


「これが契約書です。煮るなり焼くなり好きにしてください」


「では遠慮なく」


 ケイティが契約書を献上すると、魔王リディアは契約書を一読した後、手から炎を出して燃やしてしまった。


「……あっ! 短剣をしまえます!」


 契約書が燃えたおかげで、これまで持ったままだった短剣を鞘に納めることが出来た。


「しまえたとしても、この状況でしまうのはどうかと思うのじゃ」


 魔王リディアが勇者パーティーを見ながら言った。

 散々待たされた勇者は苛々しているようだ。


「もういいか?」


「勇者、契約書が燃えるのを律義に待っていてくれたんですね! 勇者って意外といいところがあるじゃないですか!」


「騙されたばかりだというのに、ショーンは単純じゃのう。勇者が待っていたのは、ショーンのためではなく、後ろめたさとか罪悪感が理由じゃろう。もしくは妾が恐いか、じゃな」


 魔王リディアに図星をつかれたのだろう勇者は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ