男子校でも彼女は欲しい
はぁ、女の子成分が足りない…
そう言いながら登校をしているのは今年の4月に晴れて高校生になった藤宮遥人だ。
なぜ遥斗がそんなことを言ってるかって?
それは、遥斗が入学した陽明高校は県内一の進学校と呼ばれているが、正真正銘の《《男子校》》なのである!
もとより遥斗は中学の時も結構モテていた。中学の遥斗は野球部に入っていた。しかもエースで4番だった上に顔もイケメンだったのだ。
だが、中学生の遥斗は野球に打ち込んでいたので恋愛など二の次だった。そして遥斗が陽明高校に入学したのは野球が強い学校という理由で毎日電車で20分程乗ったあと少し坂になっている道を登ったところに学校がある。
「はぁ、カバン重すぎだろ」そんなことを愚痴りながら登校していたら後ろから呼ばれる声が聞こえた
「よう遥斗!ため息吐いたら幸せが逃げるぞ、飲み込め」そう言って近くの空気を食わそうとしてくるのはクラスメイトで親友の近藤悠汰だ。悠汰はバスケ部に所属しているので身長が190cmもある。遥斗も180ちょいあるので高い方だが、やはり悠汰と並ぶと小さく感じてしまう。
「何が悲しくてクマみたいにデカい奴の手を食わないといけないんだよっ!どうせなら美女にやって欲しいわ!」遥斗は言ってから後悔した。ここからの流れが分かってしまう…
「あっ、遥斗は彼女居ないもんな…可哀想に」
そう、何を隠そう悠汰にはひと駅前にある女子校のバスケ部員と付き合っているのである。うん、ずるい、ずるいぞ悠汰!
「今日もハルと悠汰は仲良いな」「よう!カンちゃん」
カンちゃんと呼ばれているのはこれまた遥斗と悠汰のクラスメイトの櫻井寛太だ。
「悠汰、なんの話してたの?」「遥斗が彼女欲しいらしいぞ」 おい、俺はそんなこと言ってないぞ…
「確かにハルは中学のときも彼女いなかったよね、あんなに告られてたのに」そう何を隠そう遥斗と寛太は同じ中学出身だ「あの時の俺は野球しか興味なかったんだよ」「「今もだろ!!!」」
男子高校生しかも片方はデカい2人でハモられると威圧感があるな、などと考えているとすぐに学校に着いた。
遥斗達3人は同じ1ー2組だ。
教室に入ると仲の良い渡辺和翔と中村翔太郎と合流し、いつも通り仲良く話し始めた。
話題は決まって前日の夜のバラエティかゲームの話。
今日も最近流行りのFPSゲームの話で盛り上がっていると、予鈴がなってしまう。いつも思うが早く感じるのは俺だけでは無いはずだ。
しかしさすが進学校と言うべきか予鈴がなるとすぐみんな各自の席へ戻る。
遥斗の席は1番後ろの窓際の席。他の4人も離れた席にいる。しかし、遥斗の隣の席には山田龍という名前のかっこいいラノベ好きの男子がいる。(まぁ全員男子だが…)
遥斗も実をいうとラノベやアニメが好きな男子高校生だ。しかもアニメはリアタイ視聴を信条に掲げる程だ。でも特に仲の良い4人でそういう系の話が出来る人がいないので龍と話す時間はとても楽しい。いつも予鈴から担任の仲田先生が来るまでの間や休み時間などずっと盛り上がっている。ついこの前龍と龍の仲の良い友達と遥斗の3人でアニメイトにラノベやグッズを買いに三宮へ行ったばかりだ。
1〜4時間目の数学や化学などの難しい授業を耐えて、待望の5、6時間目の体育が始まる。この陽明高校では今年は5月26日に体育祭がある。よって1週間の体育の授業がいつもの2倍ほどある。体育の苦手な龍にとっては憂鬱だろうが、遥斗や悠汰などの体育会系の人達からするととても嬉しい期間だ。
今日は初めに出場競技を決め、その後練習という流れだ。
出場競技決めだが、龍などの運動が苦手な人達は玉入れという暗黙のルールが陽明高校にはある。その影響か、他の競技は体育会系が集まり、ガチ勢も多いので見応えたっぷりだ。
遥斗は中学時代からなんでもそつなくこなすので助っ人的な立ち位置にいる。今年はリレーに出場する。しかし、悠汰は中学から背が高いので騎馬戦の支える側ばかりだった。今年もそうだ。(可哀想に…ドンマイ悠汰)
2組では15分ほどでだいたい出場競技が決まったので、練習に入るだが、陽明高校では競技の練習が1週間しかない。そのため、競技はほとんどぶっつけ本番で、練習するのは入退場などのつまらないものばかりになる。
そんなこんなで5月25日(体育祭前日)を迎える。