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1−7 ドラニグル到着


 新米勇者が必ず遠回りすると言われている街、ドラニグル。

 ここは終焉の地と言われており、入ったら二度と帰れないと言われている街だ。

 目的地が近づいてきた矢先、些細なトラブルが発生していた。


「ふぇぇぇ。師匠! 助けて下さい」


 ラスカの足はロープに絡まって木に吊るされていた。


「お前、何をやっているんだよ」


「分かりません。何か罠に掛かったんです」


「ちっ。しゃーねぇ」


 ロープを雑に切ってラスカを助ける。

 罠ってことは人間が仕掛けたものに違いない。

 よく見るとこれは猛獣を捉えるための仕掛けだ。どうしてこんなところに?


「きゃ! アクト様! 助けて」


 今度はレミリアだ。

 餌に釣られた猛獣が引っかかる罠だ。何故、人間のお前がそんなものに引っかかるのだろうか。拾い食いでもしようとしたのだろうか。


「おい。無闇に変なものに触るなよ。この辺はやたらと仕掛けが多い」


「はい。すみません」


 罠があると言うことは近くに仕掛けた人物がいることは間違いない。

 人の気配は感じないが、どうなっているのだろうか。


「師匠。この先にドラニグルがあります。そこに住む住人の仕業でしょうか」


 ラスカはマップを使って現在地を照らし合わせる。

 つまりこの数多くの罠はそう言うことだ。


「少なからず人はいるってことは分かったな。街はどっちだ?」


「ここからまっすぐ進んだ先ですね」


「なら話は早い。罠に気をつけながら進むぞ」


「フギャー!」


 言った傍からレミリアは再び罠に掛かる。


「ちっ。世話の焼ける人質だな。弟子! 面倒見てやれ」


「はい。師匠!」


 街の正面まで行くと木材が並べられた壁が一面に広がっていた。

 おそらくこの奥がドラニグルに違いない。


「ここがドラニグルで間違いなさそうだな」


「はい。地図と現在地を照らし合わせるとここで間違いないですね」


「それにしても入り口はどこでしょう? 入るような場所が全く無いのですが?」


「無いなら作ればいい話だろ?」


 俺は木材の壁に手を翳した。


「師匠。破壊するつもりですか?」


「別にいいだろう?」


「ダメです。また変な仕掛けが施されていたら後々面倒ですよ」


「ならどうする? 登れるような高さでは無いし、近くに入り口なんて見当たらねぇ」


「私に任せて下さい」


 ラスカは地面に向けて魔術を放つ。

 結界が浮かび上がり、俺たちの周囲に円が描かれる。

 すると足場が浮遊してエレベーターのように上昇した。


「ほう。こんなことも出来るのか」


「はい。魔術は使いようですから」


 木材の壁より高く上昇して街の風景を目の当たりにする。

 建物がいくつかあるが、街というよりは村に近い。


 農家が盛んであるのか、村の半分以上が畑になっており、村人は釜を振り下ろして畑を耕している。

 終焉の地と言われているにも関わらず、そこは村として平穏に見える。

 どこにも変な噂になる要素は見当たらなかった。


「何だよ。普通の街……いや、村じゃないかよ」


「確かに見た目は普通ですね。ラスカ。本当にここって勇者が避ける街なんですか?」


「それは間違いないと思います。見た目では分からないですが、現地の人に聞いてみましょうか?」


「弟子。村の中に降りてくれ。中なら変な仕掛けは無さそうだ」


「はい」


 その村の地に着いたことで何かが伝わった気がした。

 何か焦げ臭いものが鼻を刺激した。

 それに変な違和感を感じる。


「弟子。念のため、俺たちの周りに防御結界を張ってくれ」


「は、はい」


 防御結界を張ったことを確認して村の中心まで歩き、適当に村人の一人に声をかける。


「おい! そこのお前!」


「ひ、ヒィィィィ! 侵入者だ!」


 俺の顔を見た村人は腰を抜かして走って逃げていく。


「あ? 何だよ。失礼なやつだな」


「アクト様の顔が怖いので逃げちゃったんですよ」


「そればかりはどうしようもない」


 次の瞬間、弓矢が俺の方へ向かってきた。

 防御結界があることでその弓矢は俺に届くことはない。

 気付けば俺の周りには何十人もの村人が取り囲んでいた。

 その手には何かしらの武器が握られている。


「ほぅ。歓迎にしては随分と多所帯じゃないか。活気があって何よりだ」


「アクト様。全然歓迎されているようには見えないのですが?」


「むしろその逆ですね。状況はかなりやばいです」


 村人に取り囲まれたその奥から長い髭を生やした老人が現れた。

 威厳を放っていることからこの村の長だと推測出来た。


「小僧。どうやってここ入った?」


「普通に上から」


「まぁ、それは良い。ここがどうゆう街か分かって入ったのか? 命が欲しければ今すぐ立ち去れ。これは忠告ではない。命令だ」


「俺は命令するのは好きだが、されるのが一番嫌いなんだ。俺の機嫌を損ねる前に謝罪した方がいいんじゃ無いのか? クソジジィ。これは忠告だぜ?」


「育ちが悪い小僧だ。何も知らないから平気でそんなことをほざけるんじゃ。いいか。ここは支配された街だ。今は街というより村に近いが昔はもっと栄えていた。だが、今となっては街の面積も人も半分以下に減ってしまった。それは全て滅んでしまったからだ」


「……滅んだ?」


「左様。もう一度言う。この街は支配された街だ。誰も逆らえずただ支配者様のご機嫌を取ることで今の街が保たれている。それでもわしらは懸命に生きている。余所者のお主らでは到底分かることのできないことだ。去れ。さもなくば我々も容赦しないぞよ?」


 村人全員は警戒態勢だ。次の攻撃を仕掛ける為に構える。


「や、やばいですよ。アクト様」


「確かに。何か普通では無いです。ここは一旦引きましょう。アクト師匠」


「そう喚くな。俺が付いている。何も恐れることはない」


「アクト師匠……」


「アクト様……素敵」


 二人はうっとりと目を輝かせながら俺を見つめる。

 それにしてもこの街には支配者がいるのか。


 村人を見る限り、相当飼い慣らされているように受け取れる。

 それほど支配者に恐れていると言う訳だ。


 まさかそんな悪人がいるとは。同じ悪人としてどのように支配をしているのか気になるところではある。

 俺も将来、世界を支配するためには一部の街から支配する必要がある。

 その参考に見ておくのも勉強だ。


「掛かれ!」


 長老の合図で再び総攻撃が俺に飛んできた。

 この程度の攻撃、防御するまでもない。俺は一歩前に出て受け止める。

 無傷で俺は四方の攻撃を止めた。


「緩いな。殺気はあるが、肝心な攻撃に力が乗っていない。これでは攻撃とは言えないぜ」


「な、何だと!」


 村人の驚きと共にラスカとレミリアはうっとりだ。


「流石、アクト様」


「師匠。カッコいいです」


 村人の武器をヘシ折ったことで彼らに最早戦意は消え失せた。

 俺の興味は最初から村人ではなく別にあった。


最後までご愛読ありがとうございます。

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