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1-5 勘違いが勘違いを呼ぶ


「な、な、何ですか。その女は!」


 外で見守っていたラスカはナワナワと指先を震わせながら言い放つ。

 説明するもの面倒だ。


「人質だ」


「人質がそんなベタベタ懐かないでしょ! どちらかと言えば完全に惚れられていますよね?」


 レミリアはずっと俺の腕にしがみ付いたままだ。

 歩き辛いったらありゃしない。

 生憎、それを見たラスカは納得する訳も無いだろう。


「あなた。師匠の何ですか」 

 

「だからこいつは……」


「師匠には聞いていません。それで? あなたは師匠の何かな? ん?」


 距離を詰めながらラスカはレミリアに問い正す。


「わ、私はその……アクト様とは深い関係以外ありませんよ。なんちゃって」


 ポッとレミリアは頬を赤らめる。

 その反応は勘違いさせるからやめてほしいと思うがもう遅い。


「はぁ? 師匠。こいつなんですか。私と言う弟子が居ながら彼女まで作るおつもりですか?」


「別にお前を弟子と認めた訳でもないし、こいつを彼女と認めた訳でもない。勝手にお前らがそうやって解釈しているだけだろう」


「キィィィィ。あんまりです」


 ラスカは拗ねるが、こいつは何がしたいんだ。

 まぁ、俺は弟子が居ようが彼女が居ようが関係ない。

 今回の悪事は空振りに終わったが、次はそうはいかない。


 表向きだけの勇者を壊滅した俺を見る住民はチラチラと注目始める。


「あなた。もしかしてビクトリーファミリーを壊滅したんですか?」


 一人の住人が声を掛けてくる。


「あぁ? だったらどうした」


 形だけ勇者とはいえ、勇者は勇者。俺の行ったことをよく思わない連中だろうか。

 文句があるやつは勇者ではなかろうと全員ぶっ飛ばす。

 そう覚悟していた俺だったが、実はそうでもなかった。


「本当にありがとう。彼らは勝手にアジトを作って迷惑をしていたんだ。悪党を倒してくれるから目を瞑っていたが、好き勝手して皆迷惑していた。君、もしかして良い勇者なんだろ?」


「良い勇者? どこを見て言っている」


「どこってその純白な服装は勇者そのもの。顔は少し怖いが、君は良い勇者だろ?」


「ちっ。やっぱ白ってダメだな」


「皆! 聞いてくれ。このお方がビクトリーファミリーに一泡吹かせてくれたぞ!」


「それは本当か」


「え? あの少年が?」


 徐々に噂を聞きつけた住民は話を大きく持ち上げる。

 面倒なことになってきた。


 これ以上、変な噂が立ってしまったら後々面倒だ。

 勇者と勘違いされてしまえば俺の今後に大きく関わってしまう。


「おい。弟子! ズラかるぞ」


「はい。アクト師匠」


 人の目を避けるように街を走り抜ける。

 住民は憧れの目で追いかけて来るが、俺は振り切った。


「勇者がやられて喜ぶ住民って聞いたことないぞ。どうなっているんだ。この街は!」


「アクト師匠。申し訳ありません。私の調査不足でした」


 反省の意味を込めてラスカはしょんぼりと言う。


 別にラスカが悪いわけではない。

 この街がおかしいだけだ。


「勇者がたくさんいるわけではなく勇者擬きがいる意味なのか?」


「確かにその線も捨て切れませんね。この街はそろそろ出た方が無難かと」


「弟子。初めて意見が合ったな。今回の目的は空振りに終わったが、この失敗を生かして次に繋げる。それも勉強だ」


「はい。アクト師匠」


目立つことは避けたいのでそろそろこの街を出なければならない。

人通りを避けたところでようやく足を止めた。


「あの、一つ気になったのですが」


「何だよ」


「アクト様は悪い人なんですか?」


 申し訳なさそうにレミリアは問う。

 何を今更。


「見て分からないか? お前は人質。俺は悪党。そう言う構造になっているだろうが」


「あ、私って人質なんですか? アクト様の恋人ではなくて?」


「さっきからそう言っているだろうが」


 状況がまるで分かっていなかったレミリアはようやく自分の置かれた状況を理解した。


「まぁ、アクト様の傍に居られるのであれば人質でも恋人でも構いませんよ。私は」


 頬を赤めながらレミリアは乙女の顔をする。

 やっぱりこいつ、頭悪いんだな。まぁ、その方が俺としては好都合か。


 そういえば成り行きで金髪美少女を人質に取ってしまったが、誰の人質になったのか聞いていなかった。


「おい。人質」


「は、はい。何でしょう。それよりも名前で呼んでくれると嬉しいのですが。レミリアと」


「お前の祖国はどこにある? そこに行けば財宝があるんだろう?」


「えっと……その件なのですが」


「何だ?」


「私の祖国は……」


 その地名を聞いた俺はピンと来なかった。

 魔王城という鳥籠の中で過ごしてきた俺は外の世界の地名など全く知らない。


「どこだよ。そこは」


「それって異世界の裏側じゃないですか」


 反応を見せたのはラスカだ。


「知っているのか?」


「はい。地形にはある程度知っています」


「距離的にどうなんだ?」


「短期間で行ける距離ではないですよ。乗り物を使ったとしても何年も掛かると思います」


「お前、どうやってここまで来たんだよ」


「私もよく分からないんです。何かに乗せられて気付いたらここに……」


「なるほど」


 俺の瞬間移動の力があっても複数人で出来るものではない。

 地道に移動するしかないだろう。


「まぁ、いい。その祖国に向かう価値があるほど財宝があるんだよな?」


「も、勿論です。私は大聖女ですから」


 胸を張って言うところを見れば良いところの娘であることは明確。

 人質としての価値が高くなった。


「なら決まりだ。そこを目的地にしながら移動の道中で悪党の道を極める。それで行こう」


「は、はい。アクト様の人質として同行します」


「私も弟子として同行します」


 二人は乗り気のようだ。

 一人旅を楽しむつもりだったが、弟子と人質と行動することになってしまったが、問題はないだろう。旅は道連れという。一人二人増えたところで俺の道が途切れることはない。


「おい。弟子。お前、地名は詳しいか?」


「ラスカと名前で呼んでほしいところですが、弟子という響きも良いと思ってしまいました。地名に関しては幼い時から勉強して頭に入っていますよ」


「なら好都合だ。次に俺の目的に当てはまる街はどこだ?」


「そうですね。ブック!」


 ラスカは呪文を唱えると地図が記載されたマップが頭上に現れた。


「今、私たちがいる始まりの街はここです。この先にドラニグルという街が存在します。始まりの街を旅立った勇者があえて遠回りして避ける街として知られています」


「遠回り? 何かあるのか?」


「噂によれば終焉の地として有名です。詳細は行って見ないと分かりませんが、血の匂いが絶えないとか行ったら二度と戻れないという噂があるようです。私も気になっていたのですが、機会がなくて噂しか情報はありません。行きますか?」


「ほぉ。それは興味深い。そこに行こう」


「こ、怖いですよ。アクト様」


 レミリアは身体を震わせながら抱きつく。


「心配いらない。人質を殺してしまったら人質にならないからな」


「例え、危ない目に遭ったとしても身体を張って守るから安心しろってことですね?」


「俺、そんなこと言ったか?」


 旅に必要な備品を買い集めて門の前に集合するが、二人とも遅いことに俺は苛立ち始めていた。


「何をしてやがる。ちょっと買い出しするって言って何時間待たせるんだよ」


 その時である。ラスカとレミリアが現れるが、背中には自分の身体以上の大きな鞄を担いでいた。


「何だよ、その荷物」


「女の子は荷物が多いものだよ」


「置いて行け」


「え?」


「邪魔だ。必要なものがあれば現地調達すれば済む話だろ」


「でも、もし必要な時になかったら」


「その時に考えればいいだろう」


 鞄の中を確認するとラスカは食料。レミリアは衣類で溢れていた。

 現地調達で済むことから荷物は半分以下になる。


「これでいい。さて。行こうじゃねぇか。俺の悪道へ」


「はい。アクト様!」


「はい。アクト師匠!」


 二人を引き連れて俺は次なる街へ目指す。

 俺の悪道は留まることを知らない。


最後までご愛読ありがとうございます。

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