表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/38

2–17 盗聴


 ザザザッと雑音が静まった時、ラスカの声が聞こえてきた。


「アクト師匠。聞こえますか」


「あぁ」


「マティアスの隠れ家の前に着きました。これより接触したいと思います」


「了解。気をつけろよ」


「はい」


 無線機は繋いだままの状態でラスカは潜入する。

 ガザガザと雑音が響くが、無線機の構造上、仕方がないこと。

 後は何事もなく指示通りラスカが動いてくれることを祈るばかりだ。


「マティアス・ジェファードだな」


「何者だ? ん、貴様は確か……闘技場で戦った奴か」


「その通り。我々はアクトファミリーだ。よく覚えておけ」


「俺に何の用だ。まさか貴様、一人か。あの人相が悪い悪党は一緒じゃないのか?」


「彼は我らのボス。アクトレータ・ボルゾイ様だ。今は私、一人だ。戦うつもりは一切ない。話をしようと言うんだ。剣を構えるのを辞めてもらえるか?」


「……話って何だ?」


「あの戦いで傷もなく無事でいるとはチートスキルの力か?」


「関係ないだろ。まさか、そんな無駄話をする為にわざわざ来たのか?」


「まさか。よく聞くがいい。お前の仲間のルチア・シファーは我々が預かった」


「やはりお前らの仕業だったか」


「その言い方だと薄々勘付いていたようですね」


「彼女は勝手な行動をするおてんば娘でな。目を離すとすぐどこかに行ってしまう。あの闘技場から姿が見えないことからもしかしてと思ったが、そういうことか」


 よし。この流れまで順調だ。

 後はルチアを人質に奴をダンジョンに呼び出せれば完璧だ。

 頼むぞ。ラスカ。


「彼女を返して欲しければ……」


「おい。ルチアに何をした! 無事じゃなければ今すぐお前を殺すぞ!」


 言葉だけでマティアスの気迫が凄まじいのが分かる。

 完全にキレている時の口調だ。


「あぁ、無事だ。何もしていない」


 ラスカの声が震えているのが伝わった。

 状況は分からないが、剣を向けられているに違いない。


 まぁ、実際に何もしていないとは言い切れないほど、ルチアには精神的、肉体的苦痛を僅かながらに与えていたことは内緒だ。もし、正直にそんなことを言ってしまえばラスカは殺されるだろう。


 今の立場上、優位に立てるのはラスカの方だ。恐怖を断ち切れ。


「安心しろ。我々の要望に答えれば無事に彼女を返す」


「まぁ、そう来ることは読めている。それでそちらの要望とは?」


「ダンジョンに来い。ボス、アクトレータ様はお前と戦うことを希望している」


「ダンジョンだと? どうしてわざわざそんなことを? そんなに戦いたければここに呼べ。いつでも戦ってやる」


「お前に選択肢はないぞ。人質がどうなってもいいのか?」


「ちっ。ダンジョンって。完全に敵地へ飛び込めってことか」


 そう、完全に罠であるが、奴に断ることは出来ない。

 人質が掛かっているのだから。


「そうだ。勇者パーティ総出来ることだ。お前に断る権限はないのだから」


「ふっ。そうでもないさ。お前一人でノコノコとここに来たことは失敗だったな」


「!?」


 ブオォォォォ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! と無線機から雑音が響く。


 何だ? 戦闘でも始まったのだろうか。

 声だけでは状況が全く分からない。


「おい。ラスカ。何があった? 大丈夫か?」


「アクト師匠。問題ありません。攻撃を仕掛けられましたが、防御魔法で防いだところです。うわっ! また来た」


 ザザザザザザザザザッ! と、更に雑音が激しくなった。


 主人公とも思えない行動だ。


 ただ怒りに任せてぶつけているだけにしか見えない。

 そんなことをすれば人質がどうなるか分かっているのか。

 あまりにも無謀な行動だ。


「その防御魔法を解いた瞬間、お前は俺の魔力に飲まれて死ぬ。さぁ、ルチアの解放をしてもらおうか」


「そんなこと出来るわけ……」


 マティアスの目的はラスカを人質にとってルチアと交換しようと考えている。

 その行動を取ることは想定していたが、ここまで強引に来るとは思わなかった。

 見た目はクールぶっているが、ヒロインのことになれば正常ではいられないらしい。


 だが、これでマティアスにとってルチアは掛替えにない人物であると分かった。


「ラスカ。奴にダンジョンの場所は伝えたか?」


「師匠……。はい。後は私がうまくこの場から退散できれば任務完了です。ですが、マティアスはかなり興奮した状態です」


「逃げられそうもないか?」


「防御で抑えていますが、魔法を解いた瞬間に捕まってしまいます。マティアスの仲間はルディの他に二人います。三人で私を捉えようと囲まれている状況ですね」


「飛べ。魔法は使い方次第っていつの日か言っただろ。お前ならこの場を切り抜けられるはずだ」


「でも、もし捕まってしまえば……」


「自分を信じろ。俺はお前を信じている」


「アクト師匠……。分かりました。やってみます」


 ラスカは決心を固めた。


「どうした。もう諦めたらどうだ!」


 再び雑音が大きく響く。


 攻撃を受けていることが伝わった。


「なに! 交わされた?」


「私を人質に取れなくて残念でした! ルチアを返して欲しければダンジョンに来るのです。それ以外にあなたたちの選択肢はありません。では、待っている。さらばだ。マティアス・ジェファード! あははは! わははは!」


 ラスカの笑い声が耳元に響いた。こいつ、ノリノリだな。まぁ、それくらいがちょうどいい。

 一時はどうなるかと思ったが、うまくいったようだ。


「アクト様。ラスカちゃんはどうなりました?」


「安心しろ。任務は遂行された」


「良かった」


 ラスカの任務は遂行された。これで間違いなくマティアスはダンジョンに来るだろう。

 少しヒヤッとさせられたが、結果よければ良しとしよう。


「さて。モタモタしていられない。絶対攻略不可のダンジョンを作り上げるぞ」


 俺は最終段階へ踏み込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ