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2–13 待ち受けるもの


 地下の地下へ続く道を着地しようとした直後、俺は動きを止める。


「おい。見てみろよ」とラスカとレミリアに話しかけた。


「な、何ですか。これは」


 着地地点には無数の針が散りばめられていた。


「もし素直に落下していたら蜂の巣だったな」


 ゴクリとラスカとレミリアは固唾を飲みこむ。


「どうやらここの管理人は相当悪趣味な野郎と見た。何が何でも退けてやる」


「アクト様の方が相当悪趣味だと思いますが」


 レミリアの言葉に耳を貸さず、俺は先頭を進む。

 すると何か無数の気配がした。


「止まれ」


「何かいるんですか?」


「雑魚モンスターだよ」


 目の先にはスライムや下級生物が俺たちの進む道を妨害していた。

 わざわざ俺の出る幕じゃない。

 俺はその場に座り込んだ。


「ラスカ。レミリア。お前らが片付けろ」


「わ、私たちが?」


「無理そうか?」


「そんなことありません。出来ます」


 防御タイプのラスカ。大聖女でお姫様のレミリア。

 一見、この二人は戦闘に向かないが、これまでの旅で俺の背中をずっと見てきた二人なら身についているはずだ。

 敵を倒す戦い方を。


「ハァァァァ!」


「やぁぁぁぁ!」


 二人は微弱ではあるが攻撃魔法を放出して敵を一掃した。


「やりましたよ。アクト師匠」


「私たち二人の力でやり遂げました。アクト様」


 満足げな二人に対して俺は表情を変えずに言う。


「お前ら。どれだけ時間を掛けているんだ?」


「えっと……」


「それに二人でやっとじゃ話にならないな」


 俺の言葉でラスカとレミリアの視線は下を向いた。


「だが、よくやった。この調子で頑張れ」


 その一言で二人は満面の笑みを浮かべて俺に抱きついた。


「アクト師匠!」


「アクト様!」


「バカ! 離れろ」


 全く。世話を焼かされる。

 雑魚狩りは二人に任せるとして俺はこの奥にいる強敵を相手にしなければならない。

 やるときはキッチリやる。


 しばらく進んだ先、細い通路とは一変、広い空間に辿り着いた。


「何かいやがるな」


 暗がりの奥からザワザワと無数のゾンビが姿を現す。


「うぅぅぅ」と呻き声を上げながら俺たちに襲い掛かる。


「はぁ。ようやくまともに喋れる奴が出たと思ったが、まだお預けのようだな。お前らは手を出すな。俺がやる」


「「はい」」



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!



 ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ!



 無数のゾンビ相手に俺は地震を起こして沈める。

 手を伸ばすことしか出来ないゾンビは地下の地下。さらにその奥へ消えていった。


「全く。つまんない相手ばかり出しやがって。まともな奴はいないのかよ」


「アクト様。あれ」


 レミリアが差した先には壁からシャッターが開き、新たな道が開かれた。


「ほう。俺に来いってことだな」


「アクト師匠。罠かもしれませんよ?」


「だったら自ら罠にハマってやるさ」


 俺は開かれた道へ進む。

 入った瞬間、ガシャンと扉は閉ざされて引き返すことは不可能だ。


「おい。回りくどい真似してないで出て来いよ。俺は逃げも隠れもしない」


 俺が部屋の奥に向かって言うとユラリと一人の白衣を来た男が現れる。


「やぁ。君の活躍はモニターで見させてもらったよ。相当の実力者なようだね」


「テメェは何者だ?」


「私はスパナだ」


「このダンジョンの管理人か?」


「管理人? まぁ、管理人と言えば管理人かな?」


「なら話は早い。このダンジョンは俺の支配下にする」


「支配下? 何をバカなこと言っている。大体、君は勇者だろ?」


「俺は勇者じゃない。悪役だ」


「悪役?」


 スパナは俺の格好やラスカとレミリアを細かく見た。

 悪役と言い張っても勇者パーティーだと思われているに違いない。


「なるほど。確かに君は悪役だ」


「確かに俺が悪役に見えないのも無理はないが。ん? 今、なんて言った?」


「君は立派な悪役だ。美少女を無理やりここまで連れてきて脅してきたんだろ? 立派な悪人さ」


「いや、こいつらはただの……」


「そうなんです。私たち、この人に無理やり連れてこられたんです」と、レミリアは事実とは違うことを発言した。

「お前、何を言って……」


「いいじゃないですか。アクト師匠。ここは悪人に見られた方が話はスムーズに進みます。レミリアはそれを見越して演技をしてくれているんですよ」とラスカは俺に耳打ちをする。


「そうだ。俺は悪役だ。そこでこのダンジョンは俺の所有物にする。文句は言わせない」


「君の所有物? それはちょっと難しいんじゃないのかな?」


「なんだと、テメェ?」


「おっと。暴力はやめてくれ。私は見ての通り、力勝負は得意じゃない。私が言いたいのは私の独断では無理という意味だ」


「お前がこのダンジョンの管理人じゃないのか?」


「管理人は管理人でも私は雇われの身だ。管理者は別にいる」


「だったらその管理者をここに呼べ。俺が話をつけてやるよ。勿論、力でな」


「やめといた方がいい。いや、オススメはできない」


「どう言う意味だ?」


「言葉通りの意味さ。管理者はこのダンジョンと一体化しているから君の物にはできないんだよ」


 聞いた話によるとこのダンジョンの仕掛けは管理者の意思によって決定する。

 罠も構造も全てが管理者の意思決定だ。


 そしてその管理者の所在はダンジョンの最下層。地下六階にある一室にいると言う。

 管理者はその場から動くことが出来ず、管理人代役であるスパナ以外存在を知らない。


「管理者への道は繋げた。後は実際に見て判断すればいい。君のような悪人はきっと好かれると思うよ」


 スパナは不敵な笑みを浮かべて俺を見送った。

 すんなり話は進んでしまい、俺はダンジョンの管理者と会うことになった。


 罠か? いや、それは管理者と会って見ないことには分からない。

 険しく困難な道を想像していたが予想外にも管理者への通路は何事もなく進むことが出来た。

 そして最下層に位置する扉の前に俺は辿り着く。


「ここか」


 意を決してとはならず、俺は雑に扉を蹴破った。

 部屋の中央では両手が糸で繋がれて膝をついた女性がいた。

 まるで眠ったように女性は化石と化してした。


「お前がここの管理者か」


(はい。その通りです)


 女性は口を開いていない。脳に直接語りかけられたのだ。


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