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2–12 ダンジョンへ

 

 あれからルチアと俺は接触しないまま二日が過ぎた。

 その間、ルチアの身の回りの世話は三人でローテーションをしながら回した。


 変化があったことと言えばルチアは大人しくなったことだ。

 拘束された直後は暴れまわっていたが、今となっては大人しいものだ。


 諦めたのか、それとも何か狙っているのか分からない。

 ニグルがルチアの監視をしている最中のことだ。


「さて。そろそろあいつを利用しないと維持費がバカにならない」


「維持費って食事のことですか?」


「それもあるが、女特有のあれこれだよ」


「それは女の子ですからね」


「それはそれとしてどうやってあの主人公を呼び出すか」


「アクト師匠的にどうしたいんですか?」


「正直分からない」


「いつにもなく自信ないですね」


「何か名案が浮かばなくてな」


「ならダンジョンはどうでしょう?」


「ダンジョン?」


「ダンジョンの最下部でルチアを人質にして待ち構えるんです。勿論、その道のりは険しく大変にするとより楽しめると思いますよ」


「ラスカ。お前、ダンジョンに入ったことあるか?」


「えぇ、何回か。でも、私なんて大したことないですよ。最下層に行ったことはありませんし」


「充分だ。お前の経験を俺に教えてくれ」


「それは構いませんよ」


 俺はラスカからダンジョンとはどういうものなのか。

 その構造や難易度など頭に叩き込んだ。


 何もダンジョンは勇者だけが入れる場所ではない。

 そう、悪役の宝庫でもある。俺は主人公を誘き寄せる名案を思いつく。


「よし。この手で行こう」


 ニヤリと俺は悪知恵が働いた。






 ルチアの見張り役としてニグルを残し、俺はラスカとレミリアと共に隠しダンジョンへと向かう。


「あの、今から何をするのか何も聞かされていないのですが?」とレミリアは不安を漏らす。


「まぁ、別に知る必要もない。今からするのはダンジョンの攻略だ」


「私たちがダンジョンを攻略して何の意味があるんですか? 大体、ダンジョンって勇者がやるべきイベントでしょ?」


「まぁ、ダンジョンの本質は勇者の為に用意されたイベントであることは間違いない。だから俺はそのダンジョンを攻略するんだ」


「あぁ、アクト師匠の企みが何となく分かってきましたよ」


「ラスカちゃん。どう言うことですか?」


「おそらくアクト師匠はダンジョンの乗っ取り。ダンジョンにはそこを指揮する管理人がいるんです。だからその管理人を排除して自分の管理下にしようと企んでいるのかと」


「ラスカ。流石、俺の弟子なだけあるじゃないか」


「やっぱりそう言うことですよね。私から話を聞いてそんな感じはしましたし」


「そう言うことですか。アクト様は悪いことを考えますね。私、ダンジョンについてあまり詳しくないですが、攻略はともかく乗っ取りなんて可能なのですか?」


「レミリア。俺を誰だと思っているんだ。ヒーローを打ち負かす悪役ヒーローだぞ」


 ニヤリと笑って俺は進む。


 ダンジョンの攻略以前にそもそもダンジョンというのはどこにあるのか、その入口となる場所は謎に包まれていることが多い。


 よって勇者たちは入口を探すだけでも多くの神経を使うことになる。人によっては全く見つからない場合もあるのがダンジョンの基本だ。

 だが、俺はそのダンジョンの入口を容易に見つけていた。


「ここだな」


 そこは河原の付近にある岩場だ。

 一見、ダンジョンとは無縁とも言える。

 だが、そういうところが実は怪しい。


「ここがダンジョンの入口ですか? でも入るような場所はないと思いますが」


「確かにここで合っていることは間違いないが、入り方が分からないようじゃ入れない」


「ではどうすれば?」


「ラスカ。お前なら分かるだろ」


「わ、私ですか?」


「弟子として試される時だぞ」と俺はそれっぽいことを言う。


「分かりました。やってみます」


 ラスカは岩の上に小石を何個かタワーのように積み重ねた。

 五段の小石のタワーが崩れずに保てた直後、岩場がスライドして地下へ続く階段が現れた。


「アクト師匠。やりましたよ」


「よし。上出来だ。行くぞ。隠しダンジョンへ」


「「はい」」


 俺はその階段を駆け下りた。

 ダンジョンの攻略へ向けて。


 階段を降りた先は一本道になっており、その先は見えない。

 ネズミや虫が通路の端を駆け巡る。


「俺が先頭を歩く。ラスカとレミリアは俺の後ろをついて来るんだ」


「分かりました」


 ダンジョンは何が仕掛けられているか分からない。

 無警戒で進むのは無謀だ。


 床、壁、天井とどこにどのような仕掛けがされているのは未知数。

 進めど、同じ景色が広がるだけ。


「ん? 行き止まりだと?」


 ついに進める先がなくなってしまう。


「とりあえず引き返してみましょうか。私、少し疲れました」


 と、レミリアは壁に手を置いたその時だ。


 カチャッと手を置いたブロックが沈んだ。

 何かのスイッチを入れてしまったようだ。


「ぎゃ! 私、何かやっちゃいました?」


 ガシャンと壁が現れて俺たちは完全に閉じ込められてしまう。

 完全な密室にラスカとレミリアは慌てふためく。


 次の瞬間、床が無くなり、地下の地下へと落ちた。


「ちっ! 銀翼の翼!」


 背中に翼を生やしてラスカとレミリアを掴む。

 何とか落下は防ぐことが出来た。


「落とし穴か。落ちたらどうなっていたか分かりゃしない」


「すみません。私のせいで」とレミリアは落ち込むように言う。


「気にするな。これがダンジョンだ。少しの油断が命取りだ」


「でもこの後どうするんですか? 落下を免れたとしても壁も天井も脱出する場所はありません」


「なければ作ればいい話だ」


 俺は右足に力を込めて壁を突き破ろうと試みた。

 ガンッと普通であれば破壊する力であるが、壁はビクともしない。


「なるほど。こいつは普通の壁ではないな」


「アクト様。どうしましょう」


「このまま飛んでいても体力の無駄だ。だったらこのダンジョンのセロリーに従って進んでやろうじゃないか」


「もしかして地下へ進むつもりですか?」


「それ以外に道はない。腹くくれよ。お前ら!」


 俺は地下の地下へと続く穴に進んだ。

 勇者用に作られたダンジョンだ。俺に攻略できない訳がない。

 この先に何が待ち受けていようと俺は挑み続けてやるさ。





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