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2–10 一時中断


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!



 会場が炎に包まれた直後、ニグルが羽ばたいた。

 これはもう勝負どころではない。

 闘技場から一気に離れることになる。


「おい。ニグル! どう言うつもりだ。もう少しで奴を倒せたって言うのに」


 俺はニグルに吠えた。だが、ニグルの表情は変わらない。

 この場を離れることしか頭にない様子だ。


「ニグルを許してください。提案したのは私です」


 ニグルの背中からひょこっと現れたラスカは言う。


「ラカスの指示か。後で説教だ。覚悟しておけ」


「ひっ!」


「あの、私もラスカちゃんの指示に賛成しました」


 レミリアは庇うように言う。


 どうやら三人で考えた作戦のようだ。

 おそらく決着がついた後に逃げられないと見越して手を打ったと思うが、それは大きなお世話だ。俺のためにやってくれたとは言え、独断での行動は控えてほしい。


「ちっ。まぁいい。それよりその引っ掛かっている奴は何だ」


「はい?」


 レミリアとニグルは首を傾げる。


「下だ。下」


「下?」


 俺はニグルの足元に視線を向けた。二人も同様に視線を足元に向ける。

 その人物は振り落とされないように必死にニグルの足にしがみ付いていた。


「……絶対に逃さないんだから」


 俺たちに鋭い視線を向けるその人物は青髪美少女のルチアだ。


「げっ! いつの間に」


 ニグルは足をバタつかせて必死に振りほどこうとする。

 ただ、上空から投げ飛ばされれば大怪我では済まない。

 それは死を意味するのだ。必死なのも分かる。


 だが、どうして主人公サイドの女が引っかかっているのだろうか。

 おそらく俺を逃さない為についてきてしまったのだろう。


 俺は名案を思い付いた。と言うよりも悪知恵が働いた。

 こいつは使えるかもしれないと浅はかな考えを思いついた。


「おい。ニグル。俺に名案がある。このままこいつを連れていけ」


「は、はい」


 俺はニグルに乗って悠々とアジトへ向かうことになる。

 決着が付かずうまくいかなかったが、思わぬおまけを手に入れたことで幸福感を覚えていた。






 エルグランドから少し離れた場所に俺たちの一時的なアジトを設けた。

 適当に見つけた空き家だが、生活をする環境としては充分である。

 暮らすとしても長くてひと月だろうか。


「おい! 放せ。こんなことをしてタダじゃ済まないわよ!」


 ルチアを縄で拘束したが、よく吠えた。

 こうなってしまえばただの女だ。


「うるさい娘ですね。やっちゃいますか? アクト親分」


「まぁ、待て。こいつはいい餌になる。手荒な真似はやめろ」


「おい! 餌ってどう言う意味だよ。私に何をする気だ。この悪党!」


「お前はあの主人公を誘き寄せる餌だ。それまでの間、ここでおとなしくしてもらうぞ」


「ぐぐぐ!」


 暴れても無駄だと判断したのか。ルチアは悔しそうに歯切りをする。


「それにしてもどうして付いて来たんですかね。こいつ」とニグルは質問を投げかける。


「こいつじゃない。私はルチア・シァー。お前らの正体を掴んでマティくんに知らせるためだ!」


「へっ。それで捕まってんじゃ意味ないぜ」


 ルチアは図星だったのか、黙ってしまう。


 俺たちにとって敵の仲間を拘束したのは大きな成果だ。

 三人を説教しようと思っていたが、それ以上の成果が出たことでその気は失せてしまう。

 主人公サイドのヒロインとなればレベルが高い。見た目も能力も見れば見るほど魅力に感じる。


「おい。何をジロジロ見ている? まさか私にエロいことをしようと考えているんじゃないだろうな?」


「お望みならばしてやろうか?」


「ここから逃がしてくれるなら好きなだけ触らせてあげるよ?」


 ルチアは誘惑を仕掛けた。


「ダメです。アクト様。そういうことは私で我慢して下さいよ」とレミリアは耳元に囁く。


 こいつ、嫉妬でもしているのか? まぁ、いい。


「お前ら、こいつの行動に目を光らせておけ」


 俺は三人にそう指示をした。


 マティアスとの戦いで体力を消耗した俺は空腹を感じた。

 拘束したルチアの目の前で食事をしながら作戦会議をしている時だった。


 グゥーと大きな音が響いた。

 その音はルチアの方からした。


「そこで次の段階として……」


「アクト様。聞こえていますよね?」


「アクト師匠は聞こえた上で続けていると思います。多分……」


「アクト親分、酷いですね」


「ねぇ」「おいってば」「聞いていますか?」


 と、ルチアは自分の存在に気づいてもらおうと俺に向けて声を掛け続ける。


「まず、最優先事項として……」


 話を続けようとした俺に対してついにルチアは反応する。


「ちょっと。聞こえているでしょ? 無視しないでくれる?」


「ウルセェな。なんだよ」


「私にも何か食べさせなさいよ。自分たちだけ食べてないでさ」とルチアから文句が飛び交う。


「あぁ?」


「心が痛まないの? お腹を空かした美少女が目の前にいるのよ。普通可哀想だと思うでしょ?」


「全然」


「ぐっ。私がバカだったわ。あなたたちは悪党ですものね」


 グゥーとルチアは更に腹の虫を鳴らす。


「アクト様。何かあげませんか」と、心配になったレミリアは言う。


「お前は黙っていろ」


 俺はルチアの目の前に歩み寄る。

 俺を前にしたルチアは酷く睨む。

 ルチアの瞳を見ると憎しみ満ちたものが見えた。この顔だ。俺が好きな顔をしている。


「おい。飯が食いたいのか?」


「そうだ。早く食わせろ!」


 飢えているのか、ルチアは今にも噛みつきそうな威厳を放っていた。


「だったらお願いしろよ。何か食べさせてください。お願いします。アクトレータ様と言ったら考えてやるよ」


「だ、誰が貴様なんかに媚を売るか」


「俺は別にどっちでも構わないぜ。飯が食えるか食えないかはお前次第だ」


「ぐぐぐ!」


 ルチアは自分の中で格闘していた。

 その間も腹の虫が収まることはない。むしろピークを迎えていた。


「ほら。どうした? 早く言ってみろよ。腹の虫は限界だぜ?」


「……下さい。……します」


 ボソボソとルチアは何か言う。


「何だって? 全然聞こえないな? これじゃ飯はお預けかな?」


「何か食べさせて下さい! お願いします! アクトレータ様!」


 ルチアは訴えるように言う。完全にプライドを捨てた瞬間である。


「クックック。い・や・だ」


「ふざけるな。ちゃんと要望通り言ったじゃないか!」


「俺は考えてやると言っただけだ。食わせてやるなんて一言も言っていない」


 そう言い放った直後、ルチアの脳内でブチギレる音が聞こえた気がした。


「ふっざっけんなよ、グオォラアァァァ!」



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