2–8 VS主人公
俺の乱入によって試合は中断となった。
主人公ことマティアスとの戦いが始まったことで最早、大会どころではない。
会場にいる者は不穏な空気を感じているが、俺にとってはそんなこと関係ない。
ようやく念願の主人公と接触ができているのだから。
「ヒャハハハ! 最高だぜ! 主人公!」
ガンッ! と互いの攻撃が受け止められたことでゼロ距離に接触する。
「少しは手応えがあるようだが、その余裕も今のうちだろう」
マティアスはまだ余裕があるような発言をする。
異世界転生者特有の余裕だろうか。こう言った野郎は負けを知らない。
俺も数ある悪役の一人とでも思っているのだろう。
だが、残念だったな。俺は悪役でもチートスキルを与えられた悪役ヒーローだ。
「おい。全力を出せよ。出さないうちにやっちまったらつまらないだろう」
と、俺は煽るように言う。
「確かに俺は全力なんて出し切ってはいない。だが、その必要はない。全力を出さずともお前はやられる」
「面倒くさいな。お前。いいのか? 全力を出さずに負けたら後悔しか残らないぞ?」
「ふっ。忠告ありがとう。だが、一つ言わせてくれ。俺に全力を出して欲しいなら出さしてみろ!」
カキン! と、強制的に距離を取られた。
そう簡単に全力は見られないと言うわけだ。
なら簡単な話だ。全力を出さずにはいられない力を叩き込むだけ。
基本、俺は武器で戦わない。武器に頼らず自分自身の力で相手を叩き込む。
俺は強く拳を握った。
それをリングに振り下ろすことで激しい地震に変わる。
単純な攻撃なだけに足場が崩れてしまえばどんな相手も成す術はない。
ドドドドドドドドドドド!
ガガガガッザザザーン!
「わわわ! 何なのよ、もう!」
「立っていられない」
ルチアとルディはリング上から避難。
完全に戦意喪失だ。
だが、ただ一人。俺の地震攻撃にもろともせず立っている人物がいた。
マティアスだ。結界の足場を作り出し、上空へ免れていたようだ。
「やるな。お前」
「お前もな。だが、これで終わりか?」
「まさか」
俺とマティアスは向かい合う。
今、リング上に立っているのは俺とマティアスだけだ。
会場はジッと俺たちをただ眺めることしかできない。
無言でマティアスは抜いた剣を構え、まっすぐ俺に突っ込んだ。
「反射!」
「!?」
俺は向きを変えた。その効力により進行方向が逆になる。
つまり、マティアスは何もできないまま弾かれてしまう。
ザザザーと弾かれた威力を殺す為、足で地面を蹴る。
「今……何をした?」
「さぁ、なんだろうな」
「いいだろう。お前はただの悪役ではないことを認めてやる。よって特別に俺の本気を見せてやる。喜べ。俺の本気を見られて死ねるんだ」
「そいつは楽しみだ」
派手に戦闘が始まったことで闘技場はヒシヒシと揺れる。
最早、試合どころではない。一部の観客が避難を始める始末だ。
「悪役は俺の手で葬ってやる!」
マティアスの攻撃が飛んできた直後、何かによって弾かれた。
その正体はすぐに分かった。
「おい。ラスカ。何をやっている?」
「アクト師匠の援護を……」
「必要ない。余計な真似はするな。お前は魔力が切れているんだ。無理に出し続けると死ぬぞ」
「しかし相手は勇者です。私も活躍したいです」
「お前の気持ちは分かる。だが、お前の援護で勇者に勝っても俺の気が晴れないことは想像できるだろ?」
「申し訳ありません」
「お前はレミリアとニグルのところへ行っていろ。二人にも邪魔をせず離れるように伝えてくれ。今の混乱騒ぎを利用して逃げ出せば足は付くことはない」
「しかし、アクト師匠はどうするつもりですか? この会場は勇者だらけですよ?」
「俺はうまくやるさ。心配するな。だから早くいけ」
「……分かりました。気をつけて下さい」
ラスカが移動するのをマティアスは見守っていた。
「いいのか? 俺は何人で来ようと歓迎するぜ」
「冗談キツイぜ。俺はお前と一対一でケリをつけたいんだ」
「そうか。その意思は俺も尊重しよう。ルチア! ルディ! お前らもこの場を離れるんだ」
「分かりました」
「お気をつけて」
マティアスは仲間を退場させた。
これでお互いの邪魔をする人物はいない。心置きなくやりあえると言う訳だ。
「だったらどっちが最強か決めようじゃないか! 主人公」
「上等だ! 悪党!」
地上戦、空中戦と激しい一騎打ちが続いた。
ガッガッガッガッガッ!
ドッドッドッドッドッ!
ギギギギギギギギギン!
「な、なんだ。あいつら。とんでもない戦い方をしやがる」
「乱入してきたあいつは何者だ? 勇者なのか?」
「どちらにせよ。ただ事ではない」
「俺たちは何を見せられているんだ」
「まるで大勇者同士の戦いを見ているようだ」
観客からそのような声が飛び交う。
その場にいることが危険と分かっていようと目が離せない人物で占めていた。
一生のうちに見られるものではないと観客は俺たちの戦いに釘付けだった。
見世物ではないが、これだけ多くの人の前で最強勇者を倒した時、その達成感は計り知れないだろう。
「無様な負け姿を見せてもらうぞ」
「それはこっちのセリフだ」
衝撃音が響きながら俺たちの戦いの先は加速する。
ちっ。一発一発が重たい。
これがチートスキルを得た勇者の実力か。
だが、俺にも似たようなスキルが備わっているはずだ。
何故押されている?
俺はマティアスの姿から目を離さず、弱点を見極めていた。
だが、全く奴の隙はない。
立場による関係か。いや、それだけではない。もっと決定的な違いがあるはずだ。
ガンッ! ドンッ!
イテッ。また右肩を狙いやがって。
ん? そうか。こいつ。同じところを狙い撃ちしているんだ。
同じ力でも同じ場所を狙えばいつかそこは崩れる。だから押され始めているんだ。
「おりゃ!」
ガンッ! と俺はマティアスの剣を片手で受け止めた。
それを引き抜こうとマティアスは力を込めるがビクともしない。
「くそ!」
「おい。主人公……いや、マティアス」
「お前の目的は何だ?」
「そんなもの、決まっている。貴様のような極悪人をこの世から消すことだ」
「極悪人ね。まぁ、間違っちゃいない。だが、一つ間違えている」
「!?」
「俺は極悪人ではなく悪役ヒーローだ。極悪人っていうのは完全な悪に染まりきったやつを指す。だが、俺をそれらと一緒にされちゃ困る。俺はな、正義のヒーローをぶっ飛ばす専門の悪役ヒーローだ。そのへんよろしく!」と俺は中指を立てた。
「ふっ。面白い。受けて立とう!」
俺とマティアスはニヤリと口元が笑った。
戦いは更に加速を見せた。
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