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2–6 決勝戦その1

 

 試合前から闘技場では今か今かと観客から声援が飛び交い続けていた。

 ピーピーうるさい連中を他所に俺は選手であるラスカに再度打ち合わせしていた。


「いいか。ラスカ。呉々も無茶はせず、正体がバレないように注意しろ」


「勿論です。アクト師匠!」


 ラスカはカラスの仮面に黒マント姿で正体不明の選手として周囲に認識されていた。

 気合い充分で体調も良さそうで何よりだ。


「俺の独断で危険と判断した場合はギブアップしてもらう。この腕輪が振動した時は迷わず降参しろ」


 俺は試合前に用意した小道具をラスカに身に付けさせた。

 これは遠隔で操作が可能で振動がする単純な機械だ。


「分かっています。無理はしません。ひたすら相手の攻撃を受け流すだけです」


「よし。頼んだぞ。俺たちも観客席から見守っているからな」


「はい。では行ってきます」


 ラスカのたくましい後ろ姿に向かってレミリアとニグルは「頑張って」と声援を送る。


「さて。俺たちも観客席に急ぐぞ」


「「はい」」


 少し出遅れた為か、どこも席が埋まっていた。隅っこの見え辛い席しか残っていない。

 しかも三人並んで座ることができず、バラバラの席が無造作に空いていた。これではしっかりと応援が出来ないではないか。


 こうなればあの手で行くしかない。

 見渡しが良い席に座る一般人に脅しをかけて強引に席を横取りした俺はでかい態度で座った。

 その脅しを見ていた周囲の客は俺を避けるようにゆっくりと離れる。


「おう。ここ空いているぞ。お前らも立っていないで座れよ」


「空いていると言うより無理やり空けたのでは?」


「ニグルちゃん。そういうことは言わないの」


 レミリアはニグルに注意した後、俺の両サイドに二人は座る。

 しばし、試合が始まるまでジッと待ち、遂にその時が来た。



「会場に集まる皆様。お待たせしました。いよいよ決勝戦の幕開けです。まずはここまで勝ち抜いた四人の選手をそれぞれ紹介しましょう。まず一人目の選手はマティアス・ジェファードだ。勇者ギルド登録後、数々の悪役を討伐。その戦闘はパーフェクトであり、敵の攻撃を一切受けず一撃で倒す戦いぶりだ。現在、無敗記録を更新中。勇者の期待の星であります」


 観客席の中央にある巨大なモニターにマティアスのプロモーションムービーが流れた。

 かなり持ち上げられている演出だ。


 映像が終わると共に本人が選手の入場口から現れる。

 観客に向けて手を振っており、余裕が感じられる。


 今大会で俺が最も警戒している人物だ。睨みつけるようにガンを飛ばすが、本人はまるで気づいていない。その余裕がいつまで続くか楽しみだ。


「そして二人目の選手はルチア・ミルルクだ。冒険者ギルド登録後、目立った実績はまだありませんが、彼女は超能力者で珍しい力を使います。その力により悪役を翻弄し、打ち負かす隠れた実力者でその名を徐々に広げています。今大会でその名を更に広められるか期待が高まります」


 プロモーションムービーはルチアの実力というより彼女本人の可愛さを全面に出したものであり、アイドルムービーかと勘違いしてしまうようなものである。


 プロモーションムービー終了後の本人登場はまるでアイドルで観客から多大な人気を集めている。

 可愛いは正義ということだろうか。まぁ、実力よりも可愛さが目立っているのは事実である。


「そして三人目の選手はルディ・シァーだ。冒険者ギルドの登録では個人成績Bランクとまずまずの実力者。魔導師であり、魔術系の攻撃を巧みに使い、敵には一切の手を抜かない執着心で有名だ。努力家であり、負けた戦いは一から分析して同じ失敗を繰り返さないことをモットーにしています」


 プロモーションムービーでは勉強や努力を重ねている姿が前面に出されていた。

 本人登場は前の二人ほど歓声は多くなかったが、頑張れといった励ましの声が多かった。


「さぁ。いよいよ。最後の選手の紹介だ。ニグル。冒険者ギルド登録は誰よりも浅く、正直その実力は未知数。どんな力を使うのか、どういう戦い方をするのか。今後に期待の選手になります」


 プロモーションムービーは昨日の録画のみで過去のデータが全くない状態だった。


「あれ? 私、冒険者ギルドなんて登録していませんよ?」とニグルは首を傾げた。


「俺が手を打っておいた。この大会に参加する為に必要な最低条件は冒険者ギルドに登録すること。だが、悪役である俺たちが正規の登録なんて出来ない。ラスカが偽造してこの街に入ってすぐ登録を済ませておいた」


「そんなことをしていたんですか。でも偽造でもあの冒険者ギルドを欺くなんてどんな裏技を使ったんですか?」


「ラスカは元勇者パーティーに所属していた。つまり冒険者ギルドの構造を知っているんだ。ラスカは過去に登録があるから調べられたら即アウト。だからニグルの経歴を嘘の情報に書き換えて登録した。まぁ、使い捨ての登録だから問題ない。その登録を使い続けると嘘がバレるがな。あくまでこの大会に出場するだけの捨て登録だ」


「へー流石ですね」


「この大会は勇者専用の大会だ。冒険者ギルドの登録が条件の時点で俺たちのような悪役はそもそも参加できない。だが、その裏を掻いてこうして参加が出来ているんだ。きっとこの大会の運営が事実を知ったら目玉が飛び出るだろうな」


「それは面白そうですね」


「見てください。ラスカちゃんが会場に入ってきますよ」


 仮面に黒マント姿でまさに正体不明の人物としてラスカは現れた。


 決勝進出の選手が全員揃ったことでいよいよ始まると会場は緊張した空気が流れた。


「さぁ、この四人によるバトルロワイアルがいよいよ始まります。勝利条件は予選と同じです。場外に落とすか、相手が負けを認めるまで戦いが続けられます。最後の一人がこの大会の頂点となります。選手の皆さん。準備はいいですね?」


 リングの四方にそれぞれラスカを含めた選手は頷いた。


「それでは決勝戦! 開始!」


 ゴーンと鐘が鳴り響いたことで試合開始の合図が行われた。


 だが、開始をされたが、誰も動かない。

 まずは様子見といったところだろうか。


 どのみち、ラスカは攻撃を仕掛けることはない。ラスカは敵の攻撃を防ぐ為の防御をするだけだ。

 そして張り詰めた空気の中、三人の選手が動いた。決勝戦が本格的に動き出した。


「はあぁぁぁ!」


 まず攻撃を仕掛けたのはマティアスだ。


 自慢の剣を一振りしてラスカにその斬撃が飛ぶ。



 ガッガガガガガガガガガガガガ!



 ズザッン!



「うっ!」


 ラスカはその強力な斬撃を得意の防御魔法で押さえ込む。

 一撃で敵を沈めるマティアスの攻撃を受け止めた。


 一発目からかなり重い攻撃だ。さすがのラスカも苦しいか?


 それに続くようにルチア、ルディもラスカに攻撃を仕掛けるが、ラスカは何とか踏み止まる。


「よし。ナイス! ラスカちゃん。全部受け止めている! 絶対防御は伊達じゃないわね」


「……まずいな」


「アクト様? まずいって?」とレミリアは首を傾げる。


「よく見ろ。ラスカが一方的に狙われている」


「あ、そういえば」


「バトルロワイアルは敵味方関係なく自分の生き残りを掛けた戦いだ。だが、言い換えると集団で攻撃をされるリスクもあるってわけだ」


「でもどうしてラスカちゃんが狙われるの?」


「単純な話、まずは弱そうな奴を排除すること。強い奴はともかく、弱い奴は早めに倒した方が楽だ」


「でも逆に弱い者で協力して強い者を倒すことも作戦のうちでは?」


「確かにその線も作戦として有力だ。だが、そうじゃない場合の事態も想定できる」


「そうじゃない場合?」


「ちっ。やられたな。おそらくこの状況はまさしくその事態だ」


「アクト様。どういうことですか? 私たちにも分かるように言って下さいよ」


「……グルだよ。マティアス、ルチア、ルディ。俺の推測が正しければこいつらは同じ勇者パーティーだ。つまり、この戦いは初めから三対一が決まっていた試合って訳だ」


「そ、そんな。それじゃラスカちゃんは」


「このまま続けても勝ち目はないだろうな」


「じゃ、早く棄権するように指示を出して下さい」


「とっくにやっているよ」


「……え?」


「さっきから信号を送っているんだが、壊れているのか、気づいていないのか反応がないんだよ」


「それって……」


 俺の嫌な予感が更に加速していた。



最後までご愛読ありがとうございます。

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