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2–1 作戦会議


 とある森の中で張られたテントの中で不穏な空気感の中。


「さて。諸君! これより勇者狩り作戦会議を始めようと思う」


 次の目的地に向かう最中、俺は三人に向けて言う。


「アクト師匠。眠いです」


「アクト様。それより髪が乱れてしまいました。何とかなりませんか?」


「アクト親分。お腹空きました。何か食べるものはありませんか?」


 移動疲れが残っているのか。三人は俺の話よりも自分の欲望が表に出ていた。

 確かにここまで連れ回すように歩いていたが、悪役としての自覚が足りないのではないだろうか。


「おい。弟子。人質。子分。お前らは悪役として自覚はあるのか? 緩いこと言ってんじゃねぇよ」


「私はアクト師匠の強さを盗めたらそれでいいのですが」


「私はアクト様の傍にずっと居られるなら何でも……」


「アクト親分と行動していれば食料に困ることありませんし」


 三人のやる気のない口調に俺は歯切りしした。


「馬鹿野郎。俺の目的は最強の悪役ヒーローになることだ。そのあたり分かっているのか。生温いこと言ってんじゃねぇぞ、お前ら!」


「それは分かっていますよ」


「分かっていますけど」


「ねぇ」


 と三人は顔を合わせて納得したように頷く。

 その空気感に俺は置いてけぼりにされた気分だった。


「な、何だよ。はっきり言えよ」


「では代表して言いますが、アクト師匠」とラスカは口を開く。


 謎の緊張感が襲いかかる。


「アクト師匠って悪役より英雄が合っていると思いますよ」


「な、何だと?」


「強くて頼りになるので悪役としては勿体ないです」


 褒められているようで俺としては嬉しくない。むしろバカにされた気分である。


「大体、お前らこそ悪役に相応しくない」


「どういう意味ですか」


「お前ら、可愛過ぎるんだよ。どこにそんな顔の悪役がいる!」


 ボッと三人は何故か赤面になり、モジモジする。


「アクト様が可愛いなんて勿体無いお言葉です」


 俺が悪役らしくないのはいいとしてこの三人が一緒だと余計に悪役に見えない。

 だが、俺にとってこいつらは傍に置くメリットがある。


 どうしたものか。そうだ!


「良いことを思い付いた。お前ら、顔を隠せ」


「顔を隠す?」


「可愛い顔を隠すことでより悪役らしく見える。どうだ。名案だろう」


 ナイスアイデアをぶつけた俺だったが、三人の顔は不機嫌である。

 何か言いたそうである。


「何だよ。文句でもあるのか?」


「アクト様がそうしろと言うならそうします。ですが、私たちの願いも聞いてもらえますか? 交換条件です」


 レミリアは真剣な眼差しで言う。


 何だ。この真面目な雰囲気は? 嫌な予感がしてならない。


「言うだけ言ってみろ」


 そう言うと三人は顔を合わせて頷いた。

 まさか三人の意見が一致した願いなのだろうか。


 今後に関わることだと思い、心の準備を整えた。


「あの、私たちを呼ぶときは名前で呼んでください」


「名前?」


「はい。いつも人質とか弟子とか子分とか素っ気無いじゃないですか」


「何だ。気に入っていたんじゃないのかよ」


「全然気に入りません」


「分かったよ。名前だな。レミリア」


「アクト様が私の名前を呼んでくださった」


「あの、私も呼んでください」


「ラスカ」


「私も是非」


「ニグル」


「はふぅぅ。幸せ」


 何だよ。こいつら。名前くらいで大袈裟だな。


「今後は名前で呼んでやる。それで文句ないな?」


「は、はい」


「なら俺の願いも聞け。勇者と戦うときは顔を隠すんだ」


「隠すと言ってもどうやって?」


「何か仮面でも被れよ」


「仮面……ですか」


「はーい。なら私が作ります。仮面」


 名乗りを上げたのはレミリアだ。


「よし。任せた。それと勇者を仕留めるフォーメーションを決めておこう」


「フォーメーションですか?」


「俺に考えがある」


 対勇者に打ち勝つためには無鉄砲に突っ込むだけでは返り討ちに遭う。

 しっかり作戦を練って逆に返り討ちにする。


 俺は様々な悪知恵が働き、三人と取り決めを行なった。


「そううまくいきますかね?」と、不安を漏らすのはニグルだ。


「ドラゴンのお前には使いようが沢山ある。悪役の見せ場にニグルの存在は大きい」


「本当ですか? アクト親分がそう言うならニグル頑張っちゃおうかな」


 単純な奴だ。扱いやすくて助かる。


 完璧な作戦であることには間違いないが、実戦で通用するまで確証が持てない。

 俺の作戦を早く試したい。


「ラスカ。俺の作戦が成功するか実験をしたい。練習できるような場所はないか?」


「そうですね。街に入る前に旅の疲れを癒す宿があります。そこに行けば勇者が何組か訪れていると思いますよ?」


「そうか。なら、その宿に行って試してみよう。レミリア。それまでに仮面を三つ用意してくれ」


「三つ? アクト様はしないんですか?」


「俺の顔はどんな時だろうと晒す。この顔を印象に残して恐怖を染み込ませるからな」


「なるほど。分かりました。では仮面の準備をしますね」


「そういえば決めなければならないことがあると思うのですが」とニグルは挙手をする。


「決めなければならないこと?」


「私たちはもう単独ではないんです。一種の組織に近いです。ならその名称が無いと勇者に名乗る時に困りませんか?」


「なるほど。一理ある。だが、名前か」


 俺はそれぞれ考えた名前を聞く。


「あの、アクト様ファンクラブなんてどうでしょう」とレミリアが提案する。


「却下だ」


「そんな!」


「次!」


「はい。私が考えた名前は最強最悪恐怖破壊絶対万歳なんてどうでしょう」とニグルが提案する。


「却下だ。てか、本気で考えろ」


「私はいつでも本気ですのに!」


「最後は私ですね。『アクトファミリー』なんてどうでしょう?」


「普通すぎる気もするけど、一番マシだな」


「では採用ですか?」


「よし。今日から俺たちは『アクトファミリー』と名乗る。いいな?」


「「「はい!」」」


 三人の良い返事を受け、組織名がアクトファミリーに決まった。

 正直俺として名前は何でもよかった。変な名前以外。

 作戦会議は終了した。


 名前の呼び方に反抗されるとは思わなかったが、考えてみれば心の中ではキチンと名前を呼んでいたが、声に出した時は三人の立場による名称でしか呼んでいなかったことに気付く。女はどうも名前で呼ばれることに幸福感を覚えるらしい。


 その後、旅の疲れを癒し、勇者討伐に向けて俺たちは念入りに準備をして予行練習を繰り返した。

 本物の勇者を相手に実験を行うため、作戦会議は大事な時間になったことを俺は知る。


最後までご愛読ありがとうございます。

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