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0-6 力試し

この話から第一話へ繋がります。


 

 自給自足をしていた森を出発してどこか適当に人が多そうな街を目指していた。

 普通に歩いていたがどこまで歩いても森は抜け出せない。


 これでは何時間、何日掛かるか分かったものじゃない。

 ちっ。こうなったら先程、習得した瞬間移動とやらを試しに使ってみるか。


「スキル! 瞬間移動」


 しかし、瞬間移動は発動しない。

 ん? 何か発動条件を間違えたか?


「スキル! 瞬間移動!」


 声を張ってもやはり発動しない。

 何故だ?


【瞬間移動を発動する為には一度訪れた場所ではないと発動しません】


 心の中で誰かが呟いた。

 訪れた場所じゃないと発動しないだと?


 今の俺には魔王城しか瞬間移動できないってことか。

 何だよ。使えないじゃないかよ。


【スキル:銀翼の翼なら発動可能です。自分の意思で飛行移動可能なので便利かと】


 と、申し訳ない程度に言われる。


「なるほど。ならそれで我慢するか。それよりお前、誰だよ。いちいち俺の中で喋りかけやがって」


【私はあなたの中に宿るAIのような存在です。スキルを習得したり、解説や発動の手助けをする存在です。鬱陶しいならオフにしておくことも可能です。どうしますか?】


「まぁ、知らずのうちにスキルを獲得しても自分じゃ分からねぇ。獲得の時とその使い方だけ説明しろ。助言とかどうでもいいことは喋るな」


【かしこまりました】


 どうして今になってスキルを獲得したのだろうか。

 魔王城にいた時はそんな素振りは一切なかったのに不思議だ。


 まぁ、環境も変われば出来ることも変わるんだろ。俺はそう捉えることにした。

 ブァッと俺の背中に大きな翼が生えた。

 神経を集中させることで翼がバサバサと動く。


「さて、行くか!」


 地面を蹴って軽々と大空へ羽ばたく。

 まるで鳥になったようで自由に飛行する。


「これはいい。早いし、何より気持ちいい」


 長年過ごしていた森に名残惜しいとは思わないが、一瞬で森を抜けた。

 抜けた先は荒野で更地が続いていた。


 数年ぶりに景色が変わったことで新鮮味を感じる。


「少し遊ぶか」


 荒野の大地に目掛けて拳を強く叩きつけた。



 ゴゴゴゴゴッゴゴゴッ! と、地面が割れた。



 誰もいないところで自分の力を発揮するため暴れまくった。

 周囲にいた生き物は俺から避難するように逃げ回る。


「なるほど。強くなったことは間違いない。勇者も倒せそうだ」


 そんな時だ。鳥獣や魔獣が次々と俺の前に姿を現した。


「何だ?」


 ブォォォォォォォォォ‼︎ と、激しい奇声を上げる。


 おそらくここは奴らのナワバリに違いない。


「けっ。丁度、暇を持て余していたところだ。遊んでやるよ」


 上、右、左、前、後ろから鳥獣や魔獣が俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。


 ボンッ! と、ベクトル操作のスキルを使い、相手の攻撃を全反射させた。


 向かってきた鳥獣と魔獣は次々と吹き飛ばされる。


「なるほど。こうやって使うのか」


 スキルの使い方が分かってきたところで俺は一気に勝敗を決めるため、高く飛んだ。


「面倒だ。まとめて葬ってやるよ」


 破壊砲を奴らの中心に放ち、大爆発が巻き起こる。

 全滅だ。


「ハハハハハハハハハ! 俺こそ最強だ。これで勇者だろうが魔王だろうが倒してやる。悪役ヒーローの誕生の瞬間だぜ!」


 俺は自分の強さに浸っていた。

 これこそ俺が求めていた最強の力だ。


 もう何も恐れる必要ない。

 待っていろ。正義に満ち溢れた主人公ども。

 俺は飛んだ。


 人がいっぱいいる気配を感じ取った俺は街の入り口に着地する。


 着いた先は始まりの街。


 新大陸三代都市の一つとされる。


 勇者の始まりの地とされており、多くの勇者はここから冒険を始めたとされる。

 そのこともあり、この街では初代にオープンさせたと言われる冒険者ギルドがあり、その歴史は古い。


 多くの英雄の像が街の各地で建てられているのがその証拠でもある。

 一説によればこの街は別名【勇者の旅立ちの地】と言われている。


 と、まぁ入り口の看板に長々とそのようなことが書かれている訳だが、俺は運が良い。


 勇者の街か。つまり、この街には多くの勇者がいるという訳だ。

 俺にとってこんな好都合の街は他にない。


「さて、この街でひと暴れしてやるか」


 早速、街に乗り込もうと入り口に足を踏み入れたその時だ。

 キンッと警備隊の二人が持っていた鉄棒をクロスして俺の進行を妨害した。


「止まれ。ここに入る為には国王陛下の許可があるもの以外は入ることが出来ない」


「あぁ? 文句あるのか?」


「貴様。どこから来た? 怪しいな。ちょっと調べさせて貰おうか?」


 警備隊が俺に触れようとしたその時だ。

 透視化発動。


「あれ? いない? どこだ?」


 辺りを見渡す警備隊は俺の姿が見えずに混乱していた。

 無理もない。

 今の俺は誰にも見えない。透視化により見えなくなっているのだから。


 他人に関わられるのも面倒だからしばらくこのままでいるか。

 透視化のまま街の内部を散策することに。


 まずは冒険者ギルドに向かうことにした。

 そこなら確実に勇者がいるからだ。


【スキル:透視化は十分間のみ有効です】


 何だよ。すぐ切れるのか。

 まぁ、姿が見えるようになっても関係ない。


 街の侵入は完了した。

 俺はゆらりと冒険者ギルドを目指して歩き進めた。

 これがアクトレータ・ボルゾイの生い立ちだ。


最後までご愛読ありがとうございます。

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