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0-5 悪役として

 

 魔王城を出て四年が過ぎた。


 その間、何をしているかと言えば特に何かをするわけではなく森で野宿をしながら自給自足の生活を続けていた。

 適当に良い感じの場所を拠点にして適当に生きていた。


 寝て起きて森で食べられそうな木ノ実や植物を採取して川で魚を捕まえたり、森で生息する適当な動物を狩って、それを食べる。


 後はそれの繰り返しでいつの間にか四年が経っていた。

 同じサイクルを繰り返すだけで生きるのに精一杯だった。


 だから本来の目的である悪役らしいことは何一つ行えていない。

 生きるって言うのも案外大変なことで魔王城では衣食住は全てメイドが用意してくれるので困ることはなかった分、余計大変なことだと身に染みた。


「よし。今日は大漁だな」


 魚が罠に掛かっていることを見て満足しながら拠点であるテントに向かう。

 自給自足の為に必要な知識は魔王城にあった本を参考に試行錯誤でやってみたが、驚くほどうまく出来ていた。

 それに魔王城で修行したことで自給自足に役立つスキルも身についていた。


「闇夜を照らす猛る炎よ、出でよ。照炎(ブァレスト)


 ブオォォッとランタン程度の炎が出て薪に火が燃え移る。


 これで焚き火の準備が出来た。

 母親のメディスンの血を引いていたこともあるのか、どうやら簡単な魔法であれば扱えるようになっていた。

 これだけでも生活の幅が広がった。


 火、風、水、雷と言った自然のものから回復魔法も扱えるほどになっていた。

 生きる為の最低限のことは魔法である程度まかなえる。


 ガサッと背後に何かの気配を感じた。

 振り返ると体長三メートルを超える巨大なモンスターが現れた。


 どうやら魚を焼いた時の匂いに釣られて現れたようだ。

 森のような自然環境であればよくある話だ。


「グォォォォォォォ」と、大の字にしながら俺に対して威嚇をする。


 かなり飢えた様子だ。


「ちっ。人様の食事を邪魔するとは命知らずだな。後悔させてやる」


 俺は食事を中断して襲い掛かるモンスターに迎え撃つ。


「オラよ! これでも喰らいな!」


 俺は握った拳をモンスターの懐に向けて放った。

 一撃でモンスターは仰向けになって倒れこんだ。


 この程度の体術は魔王城で特訓した成果が出ていた。

 その辺のモンスターであれば特別な魔法や術を使わずとも体術のみで何とかなった。


「さて。大漁ついでに肉もゲット。今日はご馳走だな」


 肉を捌きながら俺は上機嫌だった。

 一人焼き肉を堪能して、腹が膨れたところで現実に戻る。

 この生活にも慣れてきた。


 だが、慣れてきた反面、俺は本来の目的を思い出すことになる。 


「……そういえば俺、全然悪役らしいことしていないな」


 そう、悪役として魔王城を飛び出した。と言うより追い出されたものの、ただ生きているだけで悪役らしいことは何一つしていない。


 これでは何の為に生きているのか分からない。

 そもそも、悪役って何をすれば良いんだ?

 まずは勇者パーティーを見つけて倒すことか。

 勇者ってどこにいるんだっけ?


 とりあえずどこかの村に行って冒険者ギルドに行けばいるだろう。

 そんな適当に考えている時である。


 ガサッとこちらに向かって近づく気配を感じる。

 またモンスターかと思い、身構えていた。


 そんな時だ。


 ゾロゾロと人が湧いて出たのだ。

 人間? この森の中に人間が出入りするのは珍しい。

 ここは悪役らしい腕の見せ所ではないのか。


 相手は三人組の男たちだ。


 拳銃や刀を腰に差していることから森に迷って入ったと言う訳ではなさそうだ。

 勇者か? 勇者にしては悪い顔をしている。


「おい。本当にここにいるのかよ。伝説の生物と言われる魔獣っていうのは」


「間違いねぇ。この付近にいるっていう目撃情報が入っているんだ。何としても見つけ出すぞ」


「もし捕まえれば結構な額になるらしいな」


 三人揃って下品な会話をしているところを見るとどうやらこの三人組は密猟者らしい。


 勇者であれば悪役として相手をしようと思えたが、同じ悪党であれば興味はない。

 だが、この付近は俺の拠点だ。変に荒らされるのも困る訳だ。


「おい。兄貴。動物用の罠がありますぜ。この付近に誰かいるんじゃないですか?」


「確かに火の匂いがするな。行ってみよう」


 三人組は俺の拠点を見つけてしまう。

 テントや洗濯物が干されている状態だ。


 ちっ。仕方がねぇ。


「おい。お前ら。ここは俺の縄張りだ。失せろ」


 俺は三人の前に飛び出した。


 だが、三人組は俺の顔を見て仲間の顔を見るとニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた。

 笑い方がいちいち下品で見るに耐えない。


「何だよ。誰かと思えばただのガキかよ」


「おい、ガキ。俺たちは伝説の魔獣を探している。どこにいるか教えてくれないか?」


 この三人組は完全に俺を見下していた。

 悪役にしてもただのボンクラだ。


「しらねぇよ。とっとと失せろ」


 これが俺の最後の忠告だ。


 これで大人しく帰れば痛い目に合うことはないのだが、三人組は違った。

 ズンズンと俺と距離を詰めてきた。


「仕方がねぇ。なら金目の物を出しな。命だけは助けてやるからよ」


「逃げるなら今のうちだぜ? おぉ?」


「ったく。最後のチャンスだったが、仕方がねぇ。お前らは俺の癇に障った」


 三人組はそれぞれ武器を取り出して向かってきた。

 同じ悪党に攻撃するのはちょっと違うが、俺を怒らせたのが運の尽きだ。

 そんなお前たちに少しだけ本気でやってやるよ。


 俺は男たちに向かって正面に突っ込む。

 ズガーンと銃声が響いた瞬間、俺は飛んだ。


 三人組の背後を取ったその時、手刀をそれぞれの首に決めてバタバタと気絶させた。


「ちっ。悪役の風上に置けねぇな」


 手応えが全くないことに俺は首を鳴らしながら空を見上げた。

 悪役らしく三人組の懐から金目の物を拝借して自分の懐に納める。


「悪く思うなよ。悪党」


 その時である。


 ピリッと自分の身体に異変を感じた。


【スキル:ベクトル操作を取得しました】


 何だ? 急に何かが俺に呼びかける声が響いた。

 スキル? 俺に能力が芽生えたとでも言うのか。

 そう思ったのも束の間。次々と取得する声が響く。


【スキル:絶対防御を取得しました】


【スキル:瞬間移動を取得しました】


【スキル:銀翼の翼を取得しました】


【スキル:透視化を取得しました】


 いやいや。一体、幾つスキル習得するんだよ。

 どうやら俺には不思議なスキルが備わったらしい。


 ならそろそろ暴れてやるか。

 悪役として勇者を倒しに。

 まずは……そうだな。決めた。


「よし、街に行こう。そして冒険者ギルドにいく」


 俺の目的地が決まった。

 いよいよ、悪役として暴れる時が来たようだ。


最後までご愛読ありがとうございます。

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