0−0 悪役に転生したヒーロー
2章の前に
主人公の生い立ちという番外編を挟みます。
全7話構成になりますのでお楽しみ頂けると幸いです。
捻くれ者である俺は周りから避けられる存在だった。
それは中学を卒業した今でも変わらない。
底辺と言われる高校に入学をしたのはいいが、そこでも俺の居場所はなかった。
影口が聞こえてくれば平気で殴りかかるようなどうしようもない奴で周りからは危険人物としてレッテルを貼られていた。
だが、人との関わり合いが苦手な俺には好都合だ。友達とか仲間とか釣り合うのはどうも性に合わねぇ。一人が何より落ち着く。
自分でもこの先、人生に苦労することは分かっていた。
問題事を起こして警察にお世話になることもしばしば。
いずれ刑務所暮らしになる将来が見えるくらい俺はどうしようもない。
逮捕される時は傷害罪か窃盗罪かあるいは殺人罪か。
それくらい俺は正統派に生きていない。
周りから恐れられる一方で、俺のような捻くれ者をよく思わない不良がいるのも事実。
生意気だとよく絡まれることは日常茶飯事。
勿論、売られた喧嘩は全て買う。勝ち負けではなく喧嘩をするのが俺の生きがいになっていた。
まさにクソみたいな人生である。
そんな俺に転機が訪れるのは突然のことであった。
いつものように俺は上級生から喧嘩を売られることになる。
「よう。久我! お前、生意気だな。タイマンで勝負しようぜ。痛い目に合わせてやる」
「上等だ。コラ!」
「逃げるなよ」
「誰が逃げるか!」
俺に逃げるという選択肢はない。やるならとことんやる。
……はずだった。
「逃げずに来たな。久我」
タイマンでやろうと言っていたのにそこには十人の仲間が揃っていた。
見物人としてなら辻褄が合う。だが、その仲間は明らかに痛めつけてやろうと腕をボキボキ鳴らしていた。
「おい。タイマンじゃなかったのかよ。話と違うだろ」
「タイマン? 俺らは悪党だよ。そんなルール知らなねぇな」
「例え悪党でもルールはしっかり守るのが筋じゃねぇのかよ」
「知らねぇよ。ルールもクソもねぇよ! おう、お前らやっちまえ」
「「うおぉぉぉぉぉ‼︎」」
俺、一人に対して十人が一斉に取り囲む。
喧嘩に慣れているとはいえ、相手にできるのは三人が限界だ。
集団で囲まれたら俺には何も出来なかった。
ガッ! ボカッ! ザッ! ドッ!
「…………っ!」
蹴る。殴る。俺はサンドバックになりながらその場に転がる。
今、思えばルール違反の段階で逃げればよかった。
だが、プライドが邪魔して逃げ出せなかった。
弱音が吐けない俺は耐えるしかなかった。
ただ、歯を食い縛り最後まで立ち向かった。
血がいくら流れようと、痛みが全身に伝わっていても相手は攻撃を止めなかった。
おそらく強がる俺の姿がまたイラつかせていると思われているに違いない。
――ダメだ。頭が回らない。意識が……。
次第に意識が遠のく。
自業自得だ。自分の人生はなんてちっぽけなものだったのだろう。意地になってこんな苦しい目に合って情けねぇ。悔し涙なのか血なのか俺の顔はぐちゃぐちゃだ。
どこで間違えたんだろうな。俺の人生ってなんだったんだ。
惨めだな。俺。
きっと俺がいなくなっても誰も悲しまないだろうな。
いや、むしろ喜ぶ奴が出てくるかもしれない。
もし、笑うような奴がいるなら呪ってやるさ。
死んでも死にきれないってこういうことだったんだな。
俺は集団暴行により命を落とした。
永遠の闇が周囲に広がる。
「はーい! ようこそ。おいでくださいました。久我優雅君」
甲高い声で俺の名を呼ぶ誰かに起こされる。
頭に響くその声量を下げてほしいものだ。
目を開けるとそこには白い光景と青髪の美少女が笑顔で立っていた。
「起きたかなーー?」
眩しい笑顔で俺に手を振る。
どこかバカにしたような動作が鼻に付く。
すぐに俺は上体を起こして眠りを覚ました。
周りはまるで雲の上にいるようで白くてフワフワした光景が一面に広がっている。
「あんた、誰だよ」
「私は女神様だよーー。久我優雅君。君は喧嘩によって大量出血ののち死にました。おめでとう」
俺が死んだ? 確か、上級生にタイマンをしようと呼び出されて気がついたら相手は十人に増えて集団リンチされたんだっけ。その程度で死ぬ俺はまだまだだったってことだ。しかし、この女神。人の死を何がおめでとうだ。ぶっとばしてやろうか。見た感じ、弱そうだし。
「おっと。女神をぶっ飛ばすのは言語道断だぞ? まぁ、今の君は空気と同じだから逆に返り討ちになるのがオチだけどね。それでもよければ相手になるけど?」
「テメェ。人の心が読めるのか?」
「それはもう、女神様だからね。女神様に出来ないことなんてないのよ」
「ちっ。めんどくせぇ。それで俺はどうなるんだ。地獄行きか天国行きのジャッジをやろうっていうのか?」
「ノンノンノン。夢の見過ぎだよ。地獄とか天国とかそんなおとぎ話のようなものはありません。あるのは無の世界! 人が死ぬと何もない世界で彷徨うことになっています。ですが、そんな君に嬉しいニュースがあるぞ?」
「……あぁ?」
「元の世界でやり残した君には異世界に転生する権利が与えられました。おめでとう。パチパチパチ」
妙にテンションが高いところが鼻につくが、どうやら異世界に転生できるらしい。
まぁ、悪くねぇ。元の世界には飽きていたところだ。異世界で暴れてやるぜ。
「おい! 女神。異世界といえば勇者や魔術師になれるのか?」
「残念でした。君には主人公のような職業は出来ません。つまり勇者や魔術師みたいなカッコイイ職業は無理なのだよ」
と、女神は腕をクロスさせる。
「なんだと? 異世界といえば主人公補正の職業になるのはお約束じゃねぇのかよ」
「本来であれば勇者にしてあげたいところだけど、生憎ここ最近になって勇者が増えてきて枠がなくなったのですよ。君のような転生者が後を絶たないから」
「じゃ、俺は異世界で何をするんだ。スライムか? 村人Aとかにさせるつもりじゃねぇだろうな?」
「異世界で今、募集している枠があるんです。君にはその枠に入ってもらいます」
「なんだよ。その枠って」
「悪役です。バランスを取る為には勇者ばかり居ては困るんですよ。だから悪役を入れて均等を図るって訳です」
「冗談じゃねぇ。やられ役なんてごめんだ。俺のポリシーに合わねぇ」
「あら。悪役いいじゃないですか。あなたに凄くピッタリだと思いますよ。前世では悪ぶっていたじゃないですか」
「それとこれとは話が別だ」
「安心して下さい。ちゃんとそれなりのスキルは与えますから」
「スキルってなんだよ」
「ふふっ。それは後からのお楽しみに。すぐに実感は出来ませんが、必ずその時は訪れます。せいぜい主人公にすぐやられないように頑張って下さい」
「おい! 女神。俺はどこの悪役に……」
「では転生しますよ! そーれ!」
「って、聞けよ!」
女神が手をかざしたその瞬間、俺の身体は光に包まれた。
あー悪役か。どうなることやら。
本当にいくんだな。異世界に。
俺は不安を残しながら異世界に転生した。
そう、勇者でもなく賢者でもなく悪役に。
やられ役の悪人になるなんて転生損じゃねぇか。全く俺の人生って何なんだ。
最後までご愛読ありがとうございます。
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