1−12 英雄伝説の幕開け
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ドラニグルという街の名前はニグルが勝手に命名したものである。
街に入った侵入者はその場で労働者としてコキを使われる日々を送ることから入ったら二度と帰れない街と言われていたようだ。
だが、そんなニグルの支配が終わりを告げたこの街は新たな街として発展していく為、一からの再スタートを切ることになった。
その第一歩がある提案から始まる。
「アクトレータ殿。主の活躍によりこの村は平穏に戻った。そこで主の銅像と地名を頂きたいのだがよいだろうか?」
なるほど。ここは俺の支配下として街の名前をつけるという訳だろうか。
俺の支配下の証として銅像を建てる訳だな。話が早い連中だ。
「よかろう。俺の銅像を建てろ。ここは俺の支配下して名前を受け継ぐのだ」
「ははぁ! アクトレータ殿。それでこの街の名前を頂きたく思いまして」
「名前か。そうだな。アクト王国と名乗れ!」
「ははぁ!」
「ダサ」とラスカは呟く。
「何だよ。文句あるのか。弟子」
「い、いえ。とてもカッコイイ名前です。はい」
「人質。お前はどう思う?」
「私も横と同じでカッコイイと思いますよ。うん。アクト王国。いいじゃないですか」
嘘なのは見え見えだが、これで俺も悪党として一つの街を支配したことになる。
これが俺の悪党の第一歩になるだろう。
「あぁ。私の街がアクト親分に染まっていく」
「不満か?」
「いえ。むしろ光栄です」
「これで俺もようやく支配者の仲間入りか」
「百年の私の支配はアクト親分に貢献します」
「そんなに支配していたのかよ。てか、お前何歳だよ」
「正確に数えたことはありませんが、大体三百歳くらいかと」
「マジか」
「ドラゴンの平均寿命は千年と言われていますからね」
ニグルの事情を少し知ったことでこの街の謎がようやく知れた気がした。
「アクトレータ殿。完成しました。これが銅像になります」
布で覆いかぶさったものに俺は興味を引いた。
数日後、村人の手によって俺の銅像が完成したとうことでそのお披露目会が行われた。
どれ。悪役らしく仕上がっているか見モノだ。
「これがアクトレータ殿の英雄像です」
バッと布が取り払われた瞬間、俺は目を凝らした。
右手を高く上げてその手には剣が握られている。それにカブトとマントが付けられており、見た目からして勇者のような銅像だ。
「……何だ。これは」
「アクトレータ殿の勇気ある像です」
「お前らは俺がこう見えているのか」
「はい。勿論です。アクトレータ殿は強くてたくましい姿で何事にもめげずに戦い続ける戦士ですからね」
俺はそういうイメージが付いているのか。
それは勇者に対するイメージであって悪役の俺としては真逆のものである。
だが、今更誤解を解くのも面倒な話だ。
一つの街をナワバリにしたという事実は変わらない。まぁ、いいだろう。
街の中心の目立つ位置に俺の銅像は建てられた。
俺が思っていたものとは違っていたものの、このように崇められるのは悪い気分ではない。
アクト王国という名にはまだ乏しい街だ。
「弟子。もう少しこの街を派手に出来ないか? 子分が派手に破壊したせいで面白みがない」
ニグルは俺の後ろで申し訳ないと言ったように身を縮める。
「派手と言いましても具体的にどうすれば?」
「そうだな。まずはこの畑を取っ払って城のようなものをドンッと……」
「待って下さい。アクトレータ殿。畑が無ければ我々はどうやって野菜を作れば良いのですか?」
「そうか。食料を作り出す場所は必要か。ならビニールハウスを作ってやるか。そこで多種多様の野菜を無限に作り出すんだ」
「それでしたら私におまかせ下さい」
ラスカは魔術を唱えて数十個のビニールハウスを出現させる。
「やるじゃないか。これで食料の心配はいらないな」
「まだ面積が余っていますね。城は難しいですが、簡易的な建物であれば作れますよ」
「そうか。なら頼む」
「お任せあれ!」
ラスカの力によって殺風景に近い街は瞬く間に街らしく発展していく。
終焉の地から一気に発展途上の国として姿を変えた。
「いいじゃねぇか。らしくなったな」
「ありがとうございます」
見た目が変わったことで気持ちがスッキリした。
「長老! この国はお前に託す。更なる発展に期待する」
「あ、ありがとうございます」
「俺は次の街を支配する。ここが俺の支配下の第一号だ。そのことを肝に命じて置くことだな」
「し、支配ですか? まるで悪役のような言い方ですな」
「いや、だから悪役だって言ってんだろう」
「アクトレータ殿も冗談を言うんですな」
「あぁ、もういいよ。勇者だろうが悪役だろうが」
どっちでもいいことも無いが、この村人たちは一生勘違いを正すことは出来ないだろう。それはもう諦めた。
「それよりアクトレータ殿。いつ旅立たれるのかな?」
「そうだな。明日の朝には出るよ」
「そうか。それは寂しいですな。では、今夜は晩餐会をして大いに盛り上げよう。村人総出で」
「まぁ、好きにしろ」
その日の夜、焚き火を焚いて村人たちは盛り上がっていた。
酒が進み、和気藹々と村人たちは肩を組んで踊っていた。
死にかけていた連中の印象はどこへいったやら。
「アクトレータ殿。酒は進んでいますかな?」と、長老はちょっかいをかける。
「俺、酒は呑めねぇ」
「そう言えば師匠って何歳ですか?」
「十五」
「未成年じゃ無いですか」
「そう言えばお前らの歳はいくつだ?」
ラスカは十歳。レミリアは十八歳。ニグルは約三百歳。
一部、予想外の例外がいたがドラゴンの基準は俺には分からない。
「酒の良さはまだ分からないが、肉なら分かる。ドンドン肉を持ってこい」
「は、はい」
村人たちは次々と焼いた肉を運ぶ。
今日はとことん食べてやる。俺の悪事に向けて。
その夜。日頃の疲れが溜まっていたこともあり、俺は久しぶりにぐっすり眠ることが出来た。
朝に起きるはずが、気づけば昼前。
「やべ。寝過ごした」
「アクト様。起きられましたか?」
目を覚ますとレミリアが横にいた。
「人質か。悪いな。支度していくか」
「まだ寝ていて構いませんよ。実はラスカちゃんが熱を出しちゃって今日は出られそうに無いです」
「熱? 大丈夫なのか?」
「はい。今はぐっすり眠っていますのでしばらくすれば元気になると思いますよ」
「そうか。ならもう少し寝かせてくれ。まだ疲れが取れていない」
「はい。おやすみなさい」
レミリアは俺の傍から離れようとしない。
頭を撫でてくるが、気が散ってなかなか眠れなかったが、寝たふりを続けた。
その翌日。俺の旅立ちの日を迎える。
いつか名前の通りの王国になって発展していくことを強く願いつつ、俺はこの街から旅立つことになる。
「アクトレータ殿。もう出られるんですか? もう少しゆっくりしていけば良いのに」
「あぁ。だが、俺の目標はここでは留まらない。もっとでっかく俺の名前を多くの連中に切り刻みたいから」
「そうですか。頑張って下さい。我々も名前に恥じぬように発展していきます」
「この街を頼んだぞ。俺がまた戻ってきた時は大きくなっていることを願うよ」
「ありがたきお言葉。アクトレータ殿。いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃいませ」
村人総出で俺を見送った。
またいつかここに戻ってくる時は俺も悪党として大きくなってやる。
そう心に刻んで街を後にした。
「アクト親分。次はどこにいくんですか?」
「そうだな。弟子! 次の行き先はどこがいい?」
「は、はい。えっと、次はここがいいかと」
マップを確認するとここから北に向かった街である。
「ここは?」
「勇者がランクアップを図る為に行くと言われている街です」
「勇者か。それは興味深い。よし。そこに行こう」
「「「はい」」」
弟子のラスカ。人質のレミリア。子分のニグルの三人を連れて俺の悪党としての冒険が加速しようとしていた。
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