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1−10 VSドラゴン戦



 カッ!



 ドッカァァァァァァァァン!



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎



 俺の周囲で爆風が巻き起こる。

 火炎弾が直撃した。


「アクト様‼︎ ラスカちゃん。アクト様が!」


「レミリア。大丈夫。師匠はその程度でやられません。ホラ!」


 煙が晴れた時、俺は同じ位置で棒立ちしていた。

 特に怪我はない。


 俺にも絶対防御スキルが備わっている。この程度の攻撃は何ともない。

 ただスキルがなければただでは済まなかっただろう。

 どこかの女神に感謝すべきか。


「ちっ。いきなり攻撃とは。まぁ、相手はドラゴンだ。一般的な常識はないんだろうな。俺が言えたものではないが行儀悪いやつだな」


「アクト様。ご無事でしたか」


 レミリアは俺の元に駆け寄ってくる。


「あぁ。これからもっと派手になる。お前らはもう少し離れていろ」


「はい。お気をつけて」


 村の破壊ではなく俺を破壊しに来るとは。

 ちょっとばかり苛つかせる竜だな。


「おい。同じ悪党なんだ。少しは仲良くしようって言うのにいきなり攻撃とはなんだよ。躾がなっていないのか。コラ!」


「偶然交わしたかもしれないが、次はそうもいかんぞ。小僧! 次は確実に当てる。覚悟しろ!」


 ダメだ。話がまるで通じない。

 そもそも交わしたように見えたのだろうか。

 ドラゴンって目が悪いのか?


 相手が勇者なら迷わず悪として痛ぶる所だが、悪党同士は仲良くするものだ。

 俺はそんな考えでいる訳だが、ドラゴンにその常識は通用しないと思うべきだろう。


 奴は完全な孤独の悪党。

 味方や敵を問わず破壊するだけの存在なのだろう。

 だったら話は簡単。孤独な悪党は力で押さえつけるに限る。


 俺は全速力で走り、そのまま高く飛び上がった。


「いい加減にしろよ。でかいトカゲ野郎」


 ドカーンと俺はドラゴンの脳天に拳を叩きつけた。

 その衝撃で村全体に衝撃が走る。

 地面が大きく割れ、小さな地震が起こる。


「に、逃げろ! 巻き込まれるぞ」


 村人は一時避難する。

 カラカラと小石を飛び散りながらドラゴンは這い蹲るように立ち上がる。


「どうだ。少しはまともに話ができるようになったか? トカゲ野郎」


「許さん。許さんぞ。この我に絶対的な禁句を二度までに言いよって。覚悟はできているだろうな。小僧!」


「禁句ってトカゲのことか?」


 ピキッとドラゴンから堪忍袋の尾が切れた音が聞こえた気がした。



 グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎



「我はトカゲではない。神聖なドラゴンだ!」


 ドラゴンは激しく体をバタバタさせて地震を起こした。

 駄々っ子にしてはかなり荒っぽい。


「我をここまでコケにしたのは小僧が初めてだ。貴様、生きて帰れると思うなよ」


「ちっ。完全に頭に血が上ってやがる。しゃーねぇ」


 ドラゴンの動きを封じる。

 そのでかい図体で踏み潰されたらさすがの俺でもタダでは済まない。

 ギリギリでドラゴンの踏みつけを回避しながら攻撃の隙を窺う。


「ちょこまかとすばしっこい小僧め! 力の差を見せつけてやるわ!」


 バッとドラゴンは大きく翼を広げて飛んだ。


「これでも喰らえ!」


 ドラゴンは翼をバタバタと羽ばたいて暴風を生み出す。

 なんて風圧だ。

 耐えるのがやっと。


「グハハハ! そのまま吹き飛ぶが良い。遥か彼方まで」


「ちっ。良い気になるのも今のうちだぞ」


こうなったら空中戦と行こうか。


 バッ! バッ!


【銀翼の翼】発動!


 俺にも空を飛び回るスキルがあるんだよ。


「貴様、我と同じ翼があるのか」


「空中戦といこうか」


 ドラゴンは火炎放射を放つ。

 だが、攻撃のモーションから撃つまでが遅い。


 巨体の分、素早さが劣るのだろう。

 その分、攻撃力が凄まじいが、当たらなければ何の意味もない。


「遅いんだよ」


 ドラゴンが火炎放射を吐き出す直後、俺は下顎に向かって拳を叩きつける。



 ゴッ! ドンッ! 



 シューー……ッ。



 すると火炎放射は体内で爆発して口、鼻、目から煙が吹き上がった。

 自滅だ。


「ガッ、ガッ、ガッ……」


 内部から攻撃したことでドラゴンは動きが鈍くなる。

 やったか? いや、これで倒せるほど楽ではないだろう。


「よ、よくもやってくれたな。我をコケにしよって」


「少しは効いたかよ。次は何をしようか?」


「バカにするのも大概にしろ! 次は我の自慢の翼を受けてみよ」


 ドラゴンの翼は銀色に輝いた。


「何だ? 鋼みたいに固くなったような」


「その通りだ。この鋼の翼は鋭利な刃物と化す。貴様を木っ端微塵に切り刻んでくれるわ! わははは!」


 助走を尽きてドラゴンは俺に向かって突っ込んだ。


「なるほど。その自慢の翼、壊してやるよ。粉々にな」


「……!」


 拳に一点集中して硬度を高めた。

 俺の持てる全ての破壊の力を溜め込んで飛んだ。


「さぁ。どちらの硬度が高いか勝負しようじゃないか!」


「消え失せるがよい。小僧!」


 ズバンッと互いの攻撃が交わって背を向けた。

 数秒の沈黙の末、片方のダメージが一気に伝わる。



 スパーン。ズバッ!



「バ、バカな!」


 ドラゴンの翼は半分失われることになった。

 片方の翼がもがれたことでバランスを失ったドラゴンは上空から落下する。


 コントロールを失ったヘリコプターのようにグルグルと円を描くように地面に叩きつけられる。

 次の瞬間、ドンッと強い衝撃音が周辺に響かせることになる。


「へ。ざまーみろ」


「いててて。貴様、我の大事な翼をめちゃくちゃにしおって」


「翼がなければただのトカゲになったな。そっちの方が似合っているんじゃないか?」


「貴様。これ以上、我を侮辱して命がいらないようだな。覚悟はできているか!」


「来いよ。トカゲさん」


「グオォォォォォォォォ‼︎」


 ドラゴンは一気に深呼吸して息を貯める。

 また火を吹くつもりか?


 避けてばかりでは勝負がつかない。

 受け止めてやる。いや。


「はじき返してやる」


 覚悟を決めた俺は手先を一点に集中する。


 カッとドラゴンの口元が光ったその時、爆発するようにとてつもない衝撃波が俺を目掛けて解き放たれる。



 ズズズッッッッッドッッッカーーッッッッッッッン‼︎‼︎‼︎‼︎



「お返しだ。お前の攻撃を返してやるよ!」


 重い渾身の一撃を俺は両手に一点集中して攻撃を跳ね返した。

 おまけに反射の力を込めることで威力が数段増す。


「バ、バカな。我の攻撃を……」



 ボカァァァァァァァァァン‼︎



 激しい爆風と爆音が周囲一帯に立ち込めた。

 それに耐え切った後、ドラゴンは見事に仰向けになって倒れた。


 勇者より手応えがあったが、相手が悪党ドラゴンだったことは少し残念だ。


「ふぅ。少しは懲りたかよ。トカゲ野郎」


 売られた喧嘩に見事、俺は勝利を果たす。

 だが、この勝利が更なる勘違いを産むことになるなんてまだ知らない。





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