幼馴染とハッピーバースデー
プロローグ
寒くも、暑くもない真っ白なドーム。記憶力のいい幼馴染と違い、俺は自分の記憶をうまく思い出すことができない。
昔のことを思いだそうとすると決まって酷い頭痛に襲われる。
今日は14歳という節目の歳だ。今日のことも、いつか思い出せなくなるんだろうか。
ぼんやりとベッドで考えていると、軽やかな足音とが聞こえてきた。
「ウィーちゃん!!お誕生日、おめでとう!!!」
満開の笑顔で、俺の胸に飛び込んできたのは、幼馴染のマーチ・ベイリーだった。
ピンク色の髪の柔らかな触り心地は大好きだ。
でも、
「おい!いい加減にしろよ!慎みをもて!!!」
いつの間にか、ふくよかに成長した胸は頂けない。今だって、柔らかな感触が当たっている。
肩を持って引きはがすと、不満そうな顔をする。
「ウィーちゃんのけち!もう!せっかく朝ごはん作ったのに、今日も寝坊するからだよ!」
腰に手をあて、膨れる幼馴染。
「え、朝ごはん、作ったのか?マーチが?ロボットに任せずに!?」
最近はマーチの朝ごはん衝動はめっきりなくなったので、油断していた。
俺的にはここには二つの不満点がある。
一つ、マーチが作らずとも、優秀な調理ロボットによって、カロリー計算のなされたそこそこに食える食事を得ることができる。
だから俺は料理を使用と思ったことはない。
二つ、マーチの作る飯は、はっきり言ってまずい。
俺の記憶の限りだと、マーチと料理ロボットの飯した食べたことはないが、おそらくマーチの飯は世界基準でもまずいと思う。
「まじか....マーチさん......」
「ん?なーに、ウィーちゃん!」
結局、マーチの笑顔を見たらなにも言えないが。
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「ねえねえ!私のごはん、どうだった?ウィーちゃんの誕生日だから、張りきったの!」
期待をありありと示す、青空のような瞳の前で、まずいなどと言えるだろうか。
「ウン。オイシカッタ。アリガトウ。」
眩しすぎる瞳をみないように、言葉を吐く。
「えへへへ~。そっか!また、作るね!!」
「そうだな!!!誕生日とか、特別な日は作ろうな!!!」
暗に普段は作らなくていいと伝えたつもりだが、鈍いマーチには伝わってなさそうだ。
マーチは視線を落とすと、少し身じろいだあとに、言った。
「ねえ、私はこんな日々がさ、毎日続けばいいと思うよ」
まっすぐな瞳だった。本心から、切に願うような言葉に反応が遅れる。
「ああ、そうだな。」