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ロリは見られていた


「…オラに言われたくはないと思うが、お前すんげぇアホだったぞ…」


「面目ないです殿下…」


 ナッジは試合後、負けた事にあまりのショックで、その場で気を失い倒れたのだった。今はベッドに寝かされている。


「所々打撲もしてるし擦り傷もあったぞ。お前気づいてなかっただろ、カッとなってて。

 能力的にはお前の方が上だったと思うが…国に帰ったら主に精神面を鍛えねぇとな」


「はい…」


「オラは決勝戦進出が決まったからな、残りの一試合をこれから見てくる。

 勝ったヤツが明日の対戦相手だから」


「!そうでしたか!おめでとうございます!!

 すみません、気を失ってて見に行けず…」


「あ、そうだ。お前が寝てる間にさっき挨拶してた姫さんが来てな、

『治癒の魔法が使えるから治療しますか』って聞いてきたから、『こんな擦り傷舐めときゃ治るから自分で舐めさせとく』って言って帰らせたぞ」


「えっ姫が?!ちょっ!!!勝手な事言わないで下さいよ殿下あああああああ!!!!折角のお近づきのチャンスがああああ!!」


 ナッジは咄嗟にガバッと起きて叫んだ。

 彼の精神力は、まだまだのようである。






・・・・・・・






 一方、寝坊したライネベルテはようやく会場に到着した。

 歩いているとリリディエラがいたので合流する。


「あら、ロリ。あなたも試合を見に来たの?でもあと一試合で終わるわよ?」


「えっそうなのルル姉様?!くぅん…最初から見たかったわ…」


「まぁその格好!可愛いっ、可愛いわあ!

 モネアに着させてもらったのね。さすがあの人はあなたを着飾るセンスが抜群ね!」


「あたしは真っ赤なドレスが良かったのに許してくれなくて。こんな、子供っぽいオレンジの色にされちゃったわ!

 髪型も、あーでもないこーでもないって…それでこんな時間になっちゃったの」


 リリディエラにまたほっぺをフニフニされながら、ライネベルテはボヤいた。


「実際、子供なんだからいいじゃない。その頭の二つのお団子も、とっても可愛いわよ」


「嫌よこんなミッ◯ーみたいな髪型!」


「え、何ですって?」


「ご、ごめんなさい何でもないわ。

 それよりルル姉様、好みの殿方はみつかって?」


 前世の某キャラクターの名がうっかり出てしまい、慌てて誤魔化す。

 運良く「殿方」という単語にリリディエラが素早く反応してくれた。


「よくぞ聞いてくれたわロリ!

 わたくし、わたくし…運命のお方を見つけちゃったのよ!」


「え?!どなたですの?」


「この後の試合に出る、ウルスト=クリステル様よ!前回の優勝者、アイザック様のお兄様なの。

 アイザック様は前に見た事があるけど、確かにすごくイケメンなのに無表情で何を考えているかわからない人だったわ。

 でもウルスト様は違う。同じくイケメンだけど、笑顔が眩しくて爽やかで…」


 ここで、すかさずライネベルテがつっこんだ。


「…色白で細マッチョだった?」


「そう!そうなのよ!焼けにくい体質なのね。勿論剣術も素晴らしいし、細いけど無駄のない筋肉に白い肌…生傷が映えるわぁ!想像しただけで興奮しちゃう!

 先程から重傷者はわたくしが治癒魔法をかけてあげてるのだけど…ああ、あのお方も大怪我してくれないかしら!直接触れたいわ!」


「…でもそれだと試合に負けるって事よ、姉様?」

 

「あ、そうね。それじゃ駄目だわ!次の試合に勝てば、明日の決勝戦進出が決まるもの。

 既にタナノフ国王子のドルーガ様が進出を決めているから、ウルスト様も是非勝って明日に臨んで欲しいわ」


 王子と聞いて、ライネベルテは思わず質問した。


「あら、王子様がお勝ちになったのね。

 …王族だからって、忖度されたのかしら?」


「違うわよロリ。この大会はガチだからそんな不正はないわ。

 それにドルーガ王子は確かに強かった。大きな体で振り回す槍の威力はすごいし、それでいて隙が無い。

 あれでまだ23歳だって言うから、将来がますます楽しみだわ。

 正直優勝候補だけれど…ちょっとねぇ…」


「?姉様の好みじゃなかったの?」


「色黒だしムキムキで細マッチョじゃないし…でもね、それを妥協できるくらい顔がまた良いのよ!ただ…」


「ただ?」


「先程側近の方がお怪我されてね、『治療しましょうか?』って聞いたら『舐めときゃ治るから舐めさせとく』って断られたの…ちょっと脳筋なのかしらね。

 折角わたくしがわざわざ訪ねたのに、反応薄だったし…ご縁はなさそうよ。

 側近の方も顔は良いんだけど、童顔で…どちらかというとおばさま方に人気が出そうなタイプだったわ」


「姉様言いたい放題ですわね…自由過ぎます」


 ライネベルテはちょっと引いた。


「そりゃ言いたい事も言うわよ?こちとら恥を捨てて大会の副賞なんかになっているのだから。貧乏王族の意地よ!

 さっ、もうすぐ試合が始まるわ。急ぎましょ。ロリ、あなたも全力でウルスト様を応援するのよ!」


「あ!待って姉様…もう!脚が長いから追いつけないわ…くぅーっ、絶対あたしも将来スタイル良くなってやるんだから!」


 必死にトコトコと姉の後をついていくライネベルテ。

 その姿を、だいぶ離れた場所からドルーガが見つけていた。


「ん?あっちに見えるのは、さっきの姫さんと…もう一人ちっさい姫さんがいるな。

 ハハハッ…お天道様がフヨフヨ動いてるみてぇだな」


 ドルーガはまるでオレンジ色の陽だまりのように見える彼女を、微笑ましく見ていたのだった。

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