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ロリは寝坊した


 三国武闘会当日。



「ロリ様、そろそろ起きてくださいませ。お昼になってしまいますわ」


 モネアに揺さぶられて、しぶしぶ目を開けるライネベルテ。


「うーん…まだ眠いもん…」


「まぁなんて愛らしい…はっ、甘やかすのはいけませんわ!

 もう陛下をはじめ、皆様会場に向かわれましたよ」


「んー?会場って…えっ!!!!」


 慌ててベッドから飛び出す。


「そうよ、今日は武闘会の日じゃない!急いで支度しなきゃ!何で起こしてくれなかったのー!」


「起こしましたわよ何度も。

 でもロリ様、『シュワルートが終わるまで待ってー』って仰るのですもの。何ですかそれは?もう終わりましたの?」


「何ソレ…あ、ごめん夢の中の話よ。忘れてちょうだい…」


 ライネベルテは、前世で乙女ゲームをしている夢を見ていたのだった。攻略対象は全て筋肉系男子の。






・・・・・・・





 一方、会場ではあらかじめ予選を勝ち抜いてきた精鋭達が集結していた。

 今日は1日かけて、明日の決勝戦に進む2名まで絞っていく予定だ。


 ここで武闘会のルールを説明しよう。


 各選手の胸に牡丹の花をつけて、その花を散らせば勝ちという、非常にシンプルなものである。似た話を何かのアニメで見た、とは言ってはいけない。


 自らの拳で散らすも良し、武器を使用するのも良し…但し魔法の使用は厳禁である。あくまでも武闘会だから。

 会場となるリングの四隅には、マルロワから派遣された魔法師が配置される。もし魔法を使ったのであれば魔具が感知しその者を失格とする。


 武器にも制限がある。主催者側が用意した木製の剣、槍、ハンマー等が選べる。万が一相手を殺してしまったら、その時点でも失格である。


 時間制限はないが、ある程度早く決着がつけられるようリングは狭めに作られている。場外に出てしまっても失格だ。


 …ルールは以上である。



 開催にあたり、レイドラント国王と娘のリリディエラが登場し挨拶をすると、会場の男共がざわついた。


「あれがマルロワの麗しき月…なんとお美しい」


「あの慈愛に満ちた瞳…吸い込まれそうだ」


 その様子を、ドルーガとナッジは離れた控え室の窓から覗いていた。

 参加者は皆同じ部屋にいるのだが、王族であるドルーガは念の為別室であった。


「くっそー、ここからだとよく見えないですけど…あれは絶対美人ですね!もう雰囲気で分かりますよ!」


「んー、あの細さ…体は鍛えてなさそうだな。

 よく見りゃ目も笑ってねぇし、本当は副賞にされたのを嫌がってるんじゃないか?」


「相変わらず視力良すぎですね殿下!

 そりゃあ、お姫様があんな無骨な観衆に囲まれたら多少は怯みますよ。かわいそうに」


 ちなみにドルーガの推察は半分は当たり、半分はハズレである。

 この時のリリディエラは微笑みながら、


(うっわ観衆ゴリゴリマッチョばっかじゃん。無理無理無理無理!

 で、でも大会参加者はそうでない方がいるはずよ。頑張るのよルル!きっとどこかに素敵な殿方がいるはずだわ!)


 と意気込んでいたのだった。


 王と王女が下がると、いよいよ試合開始となった。

 ドルーガとナッジはそれぞれ順当に勝ち進む。トーナメント表を見た所、2人は決勝戦まで当たらないようになっている。

 ナッジは内心ラッキーと思っていた…次の対戦相手に出会うまでは。


「ふむ。あなたはあの有名な、前回優勝者アイザック殿の部下ですか。戦い甲斐がありますね」


「お前、ドルーガ王子の側近だってな。相手にとって不足はねぇ!全力で行くぜ!」


 こうしてナッジと…アイシス国近衛隊士のセルゲイが対戦した。

 両者ともスピード重視型で、互いが隙をついて胸の牡丹を散らそうと素早く剣を交わし、奮闘した。

 それでも中々決着がつかず、2人の体力は限界に近づいていた。


「ハァ…ハァ…決勝で殿下と対戦するまで強敵はいないと思っていたのに…予想外でしたね…」


「クッソ…こんな所で手こずるなんて…アイザック隊長は難なく優勝したってぇのに…」


「…そろそろ決着をつけますよ。僕は絶対優勝して…リリディエラ様と…可愛い女の子とお近づきになるんだ…」


「あ?…さっき挨拶してた女か。ああいう、いかにも守られてますって感じの女、好みじゃねぇんだよなぁ」


「な、なんですと?!あ、あなたお姫様になんて事を!!」


 セルゲイの暴言に過剰に反応するナッジ。


「うるせぇな。オレはちゃんと自分の身は自分で守れる、しっかりした女が良いんだよ。

 そんで、強くて背も高くて無駄な脂肪が一切無くて一緒に鍛錬してくれる女だと最高だな」


「そんな筋肉ムキムキな女性、僕は嫌です!」


「サーシャはムキムキじゃねぇよ!」


「誰ですかその人?!!」


「っしゃあ!隙あり!!!!」


「?!しまっ…」


 ナッジがツッコミをした瞬間に、セルゲイが文字通り突っ込んできて、直接手で彼の胸の牡丹をむしった。

 試合を見ていた審判が叫ぶ。


「勝者、セルゲイ!!」


 おおーっ、と観衆が沸いた。


「くっ、不覚……!」


 ナッジはその場に崩れた。



 ドルーガ王子の側近を倒すという、今大会のダークホースだったセルゲイ。


 しかし次の対戦中に、好きな女から着けてもらったという軍服のボタンが取れてリング外に落ち、律儀に拾いに行った為に場外と判定され負けたのだった。


 この2人、それぞれ仲良くおマヌケであった。

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