転生ロリ王女は脳筋王子におとされた
それから。
地面に倒れ伏せていた竜は、やがてキラキラと輝きながら空へと昇っていき、消えた。
…竜の正体が何だったのかはわからない。
ライネベルテは「あの有名な七つの玉を集めれば呼び出せるのかしら…」と呟いていたが、誰も聞いてはいなかった。
リンリンとランランは、それを見届けた後、ドルーガ達にペコリと頭を下げて仲良く駆けて行った。
留学生として、残された在留期間を目一杯楽しむのだろう。そうライネベルテは思った。
「このリア獣達め…!」とうらやましそうに呟くナッジを見ながら。
各国に散らばっていった魔獣は、全て弱体化し、各々討伐された。
アイシスに現れたという渡り人が、魔獣を生み出していた者と戦い勝利したからだという。
国境付近で戦っていたダンデも無事生還し、城の外でささやかな祝勝会が行われた。
「えーーっ?!渡り人って日本から来た人なの?!」
「なんだ、知らなかったのかロリ。
渡り人が現れたのは、そいつを含めて3人目だそうだが…皆『ニホン』という国から来たそうだぞ」
「うっそ……!日本人はどんだけ異世界転移が好きなの?!
ファンタジーの叩き売りじゃないのよ…!
ああ、今度その人と会えないかお父様を通じてお手紙を書きましょ…」
ドルーガから驚きの事実を聞いたあと、ライネベルテはこっそり彼に耳打ちした。
「あのね、ドラ様…実はロリも、前世は日本で生まれ育ったのです」
「本当か?!それはスッゲェな!
どんな国だ?食いもんは美味いのか?!」
「そうですわね。
特に私が育った所は『くいだおれの町』って言われるくらい、美味しいものにあふれてましたね。戦争のない、平和な国でした」
「っへぇー!!そりゃうらやましい!」
「でもタナノフのご飯もとても美味しいですわよ?ロリはすっかり気に入っちゃいました!」
と、そこへダンデがやってきた。
「お!ロリちゃんや、タナノフがお気に召したかい?
それならまた遊びに来るとエエ!」
………そう、ライネベルテは数日後にマルロワへ帰る予定なのだ。
「はい!色々落ち着いたら、是非またお邪魔します。手紙もたくさん書きますわね」
「…なぁ、ロリ。本当に国に帰るのか?」
と、ドルーガが少し小さい声で言った。
「ええ。今回の騒動で各々の国で被害が出ましたから。まだ滞在許可を頂いた3ヶ月間には達していませんが…一旦帰りますわ。
マルロワへ戻って、自分なりにできる事を探して行動します」
「そっか。偉いなロリは…」
「なんじゃドルーガ!お前ロリちゃんがいなくて寂しいのか!」
ダンデはカカッ!と笑った。
「揶揄わないでくれよ父上…」
と、ドルーガはこめかみを掻いた。
「じゃあワイはあっちへ行くか。邪魔者だからな。
…仲良くやるんだぞ?」
そう言って、ダンデはその場から去った。
ダンデ=タナノフ王。
彼は後に、ドルーガの即位にあわせて隠居した。
旅行好きが高じて大陸中を回り、あらゆる場所で目撃情報が出た。
その中には「貴族の格好をした女性と共にいた」というものもあった。
ドルーガが庶子である事から、彼女が母親ではないかという噂も出たが、その真偽は定かではない……………。
・・・・・・・
ライネベルテは、ドルーガと共に自室へと向かった。
「モネアさああああああん!!!
僕の事、忘れないで下さいねぇぇ!!
またロリ様と遊びに来て下さいねぇ!!」
「な、ナッジ様ったら…!酔っているのかしら?」
と、途中でモネアに抱きつき再び猛アピールしているナッジを見かけ…
「ねー、コレめっちゃ美味しいんだけど何の肉ー?!」
「さぁ、忘れたわー。その辺で気絶してた魔獣じゃなかったかしら?」
「ギャハハ!得体の知れないモンを食べてるの?ウチら!ウケるわ!!」
と、謎肉で鍋パーティーをしている酔っ払いメイド達を見かけながら…
ライネベルテの部屋に着くと、ドルーガは彼女を横抱きにして、一緒にベッドへ腰掛けた。
「……静かだな……」
「ええ…」
「初めてロリと会った時は…まさかこうなるとは思ってなかったな…」
「うふふ。じゃあロリの完全勝利!ですわね。
ロリは最初から狙っていましたもの。ドラ様を絶!対!おとしてやるって」
それを聞いたドルーガは苦笑した。
「ハハッ…そういや最初は姉のかわりに嫁ぎに来たー、って言ってたもんな。
なんかの冗談かと思っていたけどさ」
そう言いながら、彼はライネベルテの髪を手で梳いた。
「なぁ。前世のお前はなんて名前だったんだ?」
「え、どうして急に?…舞来、ですけど…」
「マキ、か。そうか…」
そう言いながら、ドルーガは真剣な表情でライネベルテを見た。
「じゃあマキ。礼を言わせてくれ。
きっと前世で早く死んで、つれぇ思いをしただろう。けどそのかわりに俺はロリと出会う事ができた。感謝する。
だから…お前とロリと、これから二人まとめて大事にする。
あと9年したらコッチに来い。絶対幸せにするから。いや、嫌だって言っても連れてくるか」
「ドラ様…」
自分だけでなく、何かとツイてなかった前世の自分をも見てくれている。
そう思うと、ライネベルテの瞳からみるみる涙があふれ、こぼれた。
「……ってオイオイ!まーた泣くのかよ。
これじゃオラが悪者みたいじゃないか」
「ぐすっ……みたい、じゃなくてそうですわ!いっつもロリを泣かせて!
もう…ドラ様脳筋なのにこういう時だけカッコイイんだから!ううん、違うわ。
ドラ様はいつだってカッコ良かった…
ロリは、貴方におとされましたわ…」
「脳筋て…さりげなくひでぇなぁ。
けどオラも負けず嫌いだからな。
ロリに完全勝利したと言われて…カッとして言った。後悔はしていない」
ドルーガは、そう言って笑うのだった。




