ロリは計画通りの顔をした
結局、ライネベルテは留学生としてタナノフ国に滞在する事となった。
謁見の間を出て、自分を送ってくれた馬車へと向かう。ドルーガとナッジも付いてきた。
馬車の側には一人の長身女性が佇んでいたが、ライネベルテの姿を見つけると駆け寄ってくる。体のとある部分が「デデーン、デデーン」と聞こえてきそうな勢いで。
「ロリ様!その笑顔は…良い結果でしたのね」
「うん!留学生として滞在する事になったの。だからモネアとはしばらく会えなくなるわ」
「ううっ…わたくしはロリ様が生まれた時からずっとお世話をしておりました。成人するまでは一緒にいられると思いましたのに…
こんなに早くお別れになってしまうなんてぇぇぇぇ!!悲しいですわぁぁぁ!!」
「嫌ぁね、そんな今生の別れみたいに。
この先どうなっても、とりあえず3ヶ月後には一旦マルロワに帰るわよ」
「そうなんですね!ああ…それでもやっぱり寂しいですわぁぁぁ!!!」
一瞬だけ喜んで、そしてまた大号泣しながらヒシッ!とライネベルテに抱きつくモネアだった。
ドルーガ達は離れた所から見守っていたが、
「…あれは乳母か?ナッジ」
「…でしょうね。あのおっぱ…コホン。可愛らしい女性ですね。ご主人とお子さんが羨ましい…」
二人は彼女を見た目で勝手に乳母と決めつけていたのだった。ちなみに彼女はまだ独身である。
・・・・・・・
その後、モネアはマルロワ国へ帰った。きっと今日の事をレイドラント王達に報告するだろう。
ライネベルテはひとまず着替えて、夜の晩餐会に出席する事となった。
そして、元々花嫁用として用意されていた部屋に案内される。
姉の代わりにノコノコやってきたガキンチョの自分だが、とりあえずタナノフ人には嫌われてはいないらしい。むしろ、好かれているのかもしれない。
何故なら今、ライネベルテはムキムキなタナノフ女性メイドさん達に、髪を巻かれーの、リボンをつけられーの…
「こっちのドレスの方が可愛いわよ!」
「いーえ、これのが愛らしいわ!」
「バカね、こっちの方が食べちゃいたくなるわよ!」
と言い合いされーの…チヤホヤぶりであるからだ。最後の発言は意味不明だが。
結局、純白のドレスから、家から持ってきた別のドレスに着替えた。しかし、その色はオレンジ。メイドさん達が退室したあと、ライネベルテはボヤく。
「何でまたこんな子供っぽいドレスしかないのよ…これじゃドルーガ様をおとせないじゃない」
そう、ライネベルテの目的は彼をおとす事であった。
(でもまあ、上々の出来だったわね。いきなり11のガキンチョが結婚したーい!なんて言っても、相手にされないのは分かっていたもの。
それなら留学生として滞在させてもらう…先に高いハードルを出して一気に下げる、イイ作戦だったわね。
王への上目遣いがダメならウルウル泣き落としでいこうと思ってたけど、使わずに済んでよかったわ。泣くのは最後の武器にしたいもの)
フフフ、計画通りね…と、ライネベルテは某大人気マンガで黒いノートを拾った主人公の顔をした。とても子供には見えない。
(それにしても…正装のドルーガ様はマジ格好良かったわ!身長は190近くないかしら?!褐色肌だから金の装飾が映えること映えること。
それに服では隠しきれない筋肉…早く触りたい!ああでもいきなりベタベタしたらただの◯女よ。
それでなくてもこちらから好き好きアピールしちゃって部が悪いんだから。少しは向こうからもアプローチさせなきゃ!
さぁどう駆け引きしようかしらね…ドュフフ…あらやだ、前世の笑い方が出かけたわ)
不敵な笑みを浮かべながら、ライネベルテは晩餐会に呼ばれるまでずっとその表情をし続け、妄想するのであった。
・・・・・・・
その頃、ダンデ国王は自室にて一通の手紙を読んでいた。ライネベルテの滞在を許可した際、マルロワの使者からこっそり受け取ったものである。
差出人はマルロワ国王レイドラントからだった。
「なになに…
『もしライネベルテがタナノフに滞在する事になったら、よろしく頼む。
あの子は吾輩達大人が思っている以上に、本気でドルーガ殿を好きになったようだ。もし彼の好みでないならば、どうかなるべく傷つけないように断ってほしい。
昔からどこか大人びていたが、人を好きだと言ったのはこれが生まれて初めてだ。まるで運命の人を見つけたかのように…』
…とな。まぁ、あの子の目を見れば本気である事は伝わってきたがな。
しかし不思議だな、あの子がドルーガより歳上のように感じたのは。ヤツがまだ幼稚な所がある所為か…。もう23なのにな。
しばらく様子を見るが、意外と良い組み合わせかもしれないな」
そう呟きながら、ダンデは筆を取った。
「さて、急ぎ返事を書いてやるか。安心せい、悪いようにはせんと。
ワイも孫ができたようで嬉し…おっと。嫁になろうとして来たのに孫扱いするのは可哀想か。
ドルーガもきっと彼女を受け入れてくれる…それはそれで娘を溺愛しているレイドラントが号泣しそうだな。
むむっ、書き間違えた!…手紙というのは本当に厄介だな」
ダンデは中々返事が書けず、時間だけが過ぎるのだった。




