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日々雑感  作者: 晶輪寺零
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ルールとは何ぞや?(スポーツ競技の章)

スポーツ関連の書籍をパラパラ立ち読んでおりますと、様々な”新理論”が次々と出てくる、前にも書いたことですね。国民的スポーツマンとしてその名を轟かせた内藤選手のトレーナーがお書きになった、ボクシング関係の”革命的新理論”によりますと、パンチ力は天成の資質だと思われているが、後天的な訓練で強化できる、との事です。


へー、てなもんで。


不思議な感覚ですね。練習とは、後天的な訓練によって技術を習得するものです。パンチ力は訓練によって強化する、などと言う事は当たり前だと筆者は思ってました。このエッセイの、前の項で書いた急鍛法なんかはその一端です。パンチ力は天性の素質が全てだ、などというのは、練習法自体が間違っていたのではないかと思ったりします。しかし、それは立場の違い、目的意識の違い、考え方の違いであるに過ぎません。




武術とスポーツの違いとは何でしょう?


まあ、これについてはいやと言うほど言い尽くされてきました。ですから、それぞれの意見というものが有るので唯一絶対の答えなどというものはおいそれとは出せないのだけれど、自分の個人的な意見を述べさせていただければ、それはルールだ、という事になります。夢枕獏先生の小説でも書かれていましたが、スポーツとはルールです。ルールが全てなのです。

ですから、サッカーでどうして手を使うと反則になるだとか、野球でファウルゾーンを越えたらノーカウントなのはおかしいとか、ボクシングで蹴りを使ってはいかんというのは納得行かん、などとはスポーツの世界では通らないわけです。


いわゆる、悪法も法なり、がスポーツの原則であり大前提なのです。


ですから、ボクシングの世界でパンチ力の養成についてあまり研究が進まなかったのは、別にボクシングそのものとは全く関係が無い。別にボクシングのルールに欠陥がある訳じゃありません。手にグラブをはめ、3分と定められた時間内にパンチだけを使って競い合う競技、それがボクシングな訳です。ラケットを使ってボールを打つのがテニスであるのと同じ、将棋や囲碁、チェスなどと同じ考えの元に成立するのがボクシング、ひいてはスポーツな訳です。

ボクシングは体重にあわせて階級を細かく分けてパンチを打ち合う採点競技ですからフットワークを使ってジャブを素早く打ち込むという方法が目下のところ一番有効なので、パンチ力についてはそれほど意識を払わず、天性で強いやつだけ強かったらそれで良い、という考え方でも充分だと言う訳です。



しかし、世の中には裏と表がある。スポーツ競技においてもまた然り。



日本の野球選手が本場メジャーリーグで活躍するのも今では極当たり前の情景ですが、最初は夢のまた夢みたいな感じでありました。マッシーさんの苦労話が、日本球界においては身の程をわきまえろなどという意味合いの教訓として引き合いに出された程度で、とても正気の沙汰では有りませんでした。その開拓者とも言うべき選手が野茂英雄投手ですが、彼の活躍により、その後の日本人選手のルートも開けたわけです。時あたかも大リーグはスト真っ最中、サラリーキャップ制導入をめぐって有力選手が試合出場を拒否してペナントレースも中断するという異例の事態でありました。その仲裁に現役の大統領クリントンまでが乗り出すという異例尽くし、それでも解決の糸口が見出せないメジャーリーグに単身飛び込んだのが野茂選手でした。そこで得意のフォークを切り札に、本場大リーグの強打者を手玉に取る快投乱麻の大活躍、サンシン、という言葉を流行させ、ノモマニアなんて言葉もできるほどの人気振りでした。しかし、何故このフォークがこれほどまでに有効だったのでしょうか?実は、その当時メジャーでは曲がる角度の小さなスプリットフィンガーが主流で、野茂投手や、後にメジャー入りした佐々木投手のような角度のある本格的なフォークボールの使い手が居なかった。その為、既に名を為した一流プレーヤーほどこのフォークに梃子摺りました。むしろ、あまり型のできていない若手選手に打ち込まれることも多かった。

ええ、長々と野球を引き合いに出して何を言いたいかと言うと、要するに競技とはこういうもの、当世の流行にはついていけても、使い手の絶えて久しい戦法が突如出現すると、戸惑うということです。



昔、ボクシングは倒すか倒されるかの戦いでした。

しかし、長い歴史の中でやり方が変化し、ジャブを基本としたヒットアンドアウェイの戦術が主流となった。ヘビー級ですら、モハメッド・アリの出現により、こういったアウトボクシングが正統派とみなされるようになった。

ならば、その裏をかいて一撃必殺のハードパンチを意図的に養成すれば、一時的にでも一人勝ちできるのではないか、というわけです。

この、内藤選手のトレーナーという方の練習方法がどれだけ有効かは存じませんが、もしも成功したら、倒すか倒されるかのスタイルが復活するかもしれませんね。

まあ、K-1なんかでは、創始者の石井館長が出場選手に判定ではなく、KO決着を心がけろ、お客さんを喜ばせることを第一に考えろ、と言い聞かせているそうですが。



また野球の話に戻りますが、イチローがメジャーでも、主役というわけではないにしてもなにやら特殊技能を獲得した異能のプレーヤーとして特別な、独自のポジションを確立しています。それは、ホームランが主役の大鑑巨砲主義がまかり通るメジャーにあって特別な存在感を発揮しえ居るからでは有りますが、実はメジャーリーグだって昔はイチローみたいなヒット主体のプレースタイルが主流だったそうです。

それがベーブ・ルース出現によって、ホームランが主役の、ドライバーショット型の打棒スタイルが第一線に躍り出たそうです。



よくルールの裏をかく、なんて言葉が使われたりしますが、結局の所は現状の裏をかく、意識の裏をかくという意味でもあります。

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