秘伝晶輪寺拳法入門 その3 〜『急鍛法』概要編〜
いよいよ、打撃の実技に関しての、具体的な鍛錬法に入るわけですが__その為に、必要な器具をば揃えて頂きたい。
大した代物じゃありません。軽めの、大体1kgから500gくらいのダンベル、前なら百均コーナーになんぼでも置いてあったのに、ちょっと前の鉄材価格高騰のあおりを受けて、最近は姿を消しました。今時、百円(百五円?)でダンベルなんて手に入りませんね。まあ、手元に有れば何だっていいんですが。
それを両手に一つずつ持っていただきたい。
そのまま、ダンベルを手にパンチを撃つ。
具体的にはこれだけです。
ただし__最初に繰り返し述べましたね、そう『スピードこそパワー』。目一杯の速度でパンチを撃ちます。初心者は、いきなり重いのはやめた方がいい。500〜300g程度の、できたらウレタンで包まれてる奴がいい。エアロビなんかで使ってるようなの。
室内や、周りに人が居る所では絶対にやってはいけません。手から離れたら大変なことになりますから。
自分はこれを『急鍛法』と名付けました。
時々、鉄アレイシャドウとか称して何発も、シャドウボクシング風にパンチを連打したり、酷いのになると手に持つ得物が5kgとか言うような、筆者からすると信じられんような愚行を行う人もいます。
良いですか、スピードこそパワーなのです。
加速度がつくと、たった数百グラムの重量が、人間の手に余るような暴力を発揮することもあります。
マグナム弾を御存じでしょうか?
普通の弾丸に比べると比較にならない位の威力を持った、元々狩猟用に開発された大型弾頭です。たとえ防弾チョッキで表面は無傷でも、直撃すれば骨は砕け、内臓も破裂するという驚異的な殺傷能力を与えられた弾丸です。
なぜ、このマグナムは通常の弾丸に比べて強大な威力を発揮するのか、その秘密は速度にあります。大きさでも、同じ口径の弾丸と比較してマグナムは弾頭の丈が多少長い、つまり重量が重いのも事実ですが、それ以上に速度が凄まじい。尤も、弾頭が長い理由は、速度が増すと空気抵抗も倍加するためにその圧力に負けないよう、弾丸自体の重量を増したと言う事も理由ではありますが。とはいえ、そのマグナムでさえ、弾頭重量は大体20グラムにも達しません。そんな、ちっぽけな代物でも、速度が加わる事によって鉄球が直撃したほどの衝撃を与える事が可能なのです。
まさに『スピードこそパワー』なのです。
野球で、時速140km代の球を投げたらそこそこ速球投手、150kmなら剛速球、160kmともなれば、本場メジャーリーガーですらおいそれとは出せない球速です。
我々素人からすれば、150kmがしょっちゅう投げられるんだったら、思いきり放れば、まぐれで180kmくらい出やせんか、などと思ったりもしますが、現実はそうはままいりません。朝から晩まで野球の練習に明け暮れる、プロのピッチャーが、あれだけ毎年投げているにもかかわらず、今の段階では、いまだ170kmですら計測された事はない。
しかも、野球で使用しているボールは、硬式野球でもその重量は大体140グラム代だとの事、そんな軽い球を、鍛えに鍛えたプロの投手が全身を使って思い切り投げているのにもかかわらず、時速170kmにも届かない。しかも、この硬式ボールが生身の人体に直撃すればただでは済みません。いや、ヘルメットやプロテクターを着用していてさえ、怪我は日常的に起こります。
スピードこそパワー、速度さえ加われば、500グラムのダンベルが、如何にハードな練習器具になりえるか、お判りになられたでしょうか?
次回は、フォームなど細かい説明をいたします。