太極拳論 其の三
自分は色々な講習その他に足を運び、その都度我流で取り入れておりまして、小山一夫先生の火の呼吸も習った事は以前にも書きましたね。その際、高等技法である火の呼吸を簡略化して、全身を揺するように行う事もチラッと触れました。
その、火の呼吸による全身の振動に際して、自分は太極拳論にある『虚霊頂勁、気沈丹田』をイメージしております。これをイメージしながら行うと、脊柱に芯が通り、それ以外から力が抜けるような感じになります。元々小山先生はクンダリーニヨーガだそうで、クンダリーニと言うのは尾骶骨から背骨の内部を通る生命エネルギーという風に解釈されております。小山先生は意拳を取り入れたそうですが、自分は太極拳です、というか、元々こっちが本職で火の呼吸を取り入れたわけです。更に、全身を揺する事に意識を集中しておりますと、重心が落ちる感覚が生じます。足の力も抜けて、内側、足の裏は親指に重心が集中し、自然と気沈丹田の感覚、或いは『双重則滞』です。この時、呼吸を伴わず只揺するだけですとこういう感覚は起きません。揺さぶりと呼吸を別々に行ってもこうはなりません。勿論、静かに静止しながらの呼吸もあれば、野口体操みたいな只揺さぶるだけの運動にもそれぞれ一定の意味があります。
余談ですが、この火の呼吸というのはアグニ・プラーナーヤーマと呼ばれておりますが、厳密にはプラーナーヤーマではないそうです。自分は小山先生の講習会に参加した時、火の呼吸をバストリカーだとかいうやつの気が知れない、という事を仲間内で話していたという話を聞きました。その時、バストリカーでないのであれば、カパーラバーティですかと質問したのですが、そちらの方が近いとの事、それで納得行きました。バストリカーはプラーナーヤーマですが、カパーラバーティはクリアー行法です。クリアーとは、体内の糟を取る作業で、英語で鮮明とかいう意味のクリアーと関係が有るのかどうかは知りません。カパーラバーティ・クリアーは頭蓋骨浄化行法とでも訳すべきで、体に詰まった糟を取るのが狙いです。カパーラバーティと言えば、成瀬雅春先生の合宿に参加した時もこれを習いました。成瀬先生のカパーラバーティは、できるだけ腹だけを動かして他は一切動かさないという、大変高度なやり方です。これについての詳細は次回に預けまして、太極拳論に関する自説は一応ここまでといたします。