太極拳論 其の二
このエッセイで先にダンベルを使った独自の鍛錬法を紹介しました。
その時は、兎に角スピードを追求する、と書いたのですが、最近では、余り速く動かしておりません。土台さえ出来ればいつまでも同じ事をやる必要はありません。既に書いたように、例え500gでも加速がついたら大変な負荷になります。自分はあくまでもスピードを追求する、と言う考えの方が居られるのであれば、それも一つの考えですが、いい加減ダンベルを手放さなければ前に進めません。
今はどういうやり方でダンベルを使っているのかといいますと、太極拳論にある一節に合わせて鍛錬しております。
立如平準、活似車輪。偏沈則随、双重則滞。
この要領に合わせてダンベルを使っています。それも、大体この四句を順番に行う事により、内勁を錬る鍛練にしております。
まずは『立如平準』ですが、これは説明不要かと思います。ただ、最後の『双重則滞』と似ておりますが、内容は正反対です。立如平準だと、全身の力を抜き切ってバランスを重視しながら立ちます。出来るだけバランスを取って、力を抜いた状態で待機する、準備姿勢です。続く『活似車輪』ですが、月刊『秘伝』に掲載されてた、師匠の説明するところの内部ギア、これではないかと自分は解釈しております。このギアは、自分も直接習いました。ダンベルを手に、立如平準で構える、その状態から、主に両脚を主軸にギアを起動させ活似車輪。そして『偏沈則随』ですが、これは平準に立っていた状態から重心を前に移動させます。全身を流れるように前傾させてから、最後は『双重則滞』です。残心の状態で自然と重心が沈みます。この時、両足の親指が握りこまれた状態になり、地に着いているのが足の側面、いわゆる足刀部分だけになると理想的です。両足のエッジで地面に引っ掛けるように立つ、と道場でも教わりました。
前に紹介した急鍛法の時は、打った瞬間ではなく残心の時に脚が捻れた状態に自然と動きましたが、今度のは打ち出す時にギアを意識します。しかし、これって自分は道場で直接習って体に染込んでたから自然にそうなっただけで、全く経験の無い人がいきなりやってもギアを感じることが出来ないかも知れません。その時には悪しからず、ネットや文字による伝達には自然と限界が御座いますから。