秘伝晶輪寺拳法入門 その1 〜スピードこそパワー〜
スピードこそパワー__梶原一騎の空手劇画によく出てくるフレーズです。
いや、このエッセイ、別に梶原一騎の評伝じゃないんですけど、前回に引き続いて氏のキャッチコピーを引用させていただきました。
自分は陳家太極拳を学んだのですが、その時に師から度々言われたのがスピードでした。
一般に太極拳を言うとゆっくり動くと言うイメージが定着しているかもしれませんが、それは一部の現象に過ぎません。武術である以上、スピードはどこかで必要です。
少しばかり中国武術に興味のある方は、同じ太極拳でも陳家は実戦的で動きも激しく、現在広く普及している健康用の簡化太極拳は楊家の末である、というような知識も仕入れてらっしゃるかも知れませんね。
この「スピードこそパワー」というフレーズ、言葉自体は非常に陳腐でオソマツな感じではありますが、一面の真理、と言うか原理を含んではおります。
物体が動く際、その運動エネルギーは速度と言う形になって現れます。動くものが同じなら、後は速度が運動エネルギーそのものと言う事は言える。
打撃と言うか、突きや蹴りの威力は、少なくとも、物理的には速度が決め手となります。
良く、突きや蹴りの威力を計測するとしてその単位をkgで表したりもしてますが、その為の仕事、即ち測定器に重量として現れる数字を作り出す力学的運動は、結局速度なのです。
ただ単に重量だけ測ればよいのなら、別にプロの格闘選手で無くとも、同じ体格の素人でも不都合はない訳ですよね。しかし、それでは測定器をたたいても大した数値は得られません。
尤も、更に名人ともなれば突きに余計な威力はいりません。生身の人間のあらゆる状況を瞬時に把握して、最小限の力で最大の効果を得るのが名人と言う物ではありますが、それは上級者の話であって、とりあえず初級から中級のレベルでは、まず数字であらわされるところの“威力”から始めます。
ここは、打力の基本となるべき力学的な概念から説明していきたいと思います。
ええ、打撃に数字として現れる物理的な力は、結局スピードである、と言う事がお判り頂けたでしょうか?すなわち、打撃の基礎はまず速度を意識して身につける事、そこから練習に入っていただきたいと思う訳であります。
ただし__これも、いや、まずは次に述べる条件をしっかり念頭において練習に励んで頂きたい。
それはですね、スピードが必要とされるのは、打点のみ、と言う事です。