秘伝晶輪寺拳法入門 その10 〜脚撃技法(Part1)〜
今回は蹴り技についてです。
足技も、打撃における基本的な考え方は同じ、要するに着打点のみに速度を集めてほしいと言う事ですが--足は手に比べて器用には動きません。よって、打撃点のみに集中するのでは無しに、遠くまで突き抜けるようにします。ただし、矢張り目標を基点にして、そうですね、ボールでも蹴り出すように心がけてください。つまり、任意の場所に蹴って運動エネルギーを与えたいものが存在する。衝撃を集めたいのはその部分だけです。標的が、恰もボールで、そこに蹴りのエネルギーを集約して出来るだけ遠くに飛ばす--こういう感じで、蹴って遠くに突き抜けるように、と言う訳です。決して、目標を突き抜けた場所に速度が集中しないように。速度を集中させるのは飽くまで蹴りの目標です。しかし、既に申し上げたが如く、足は手に比べれば不器用でして、速度を集中させてもその余勢を駆って、遠くまで突き抜けるように、と言いたいのですよ。廻し蹴りでも前蹴りでも、基本は同じ。最高速度で目標を、飽くまで標的が存在する空間を通過するようなイメージで蹴り抜いてください。
突き抜けるように、という事に関しては、昔野球中継を観ていてこういう解説を耳にしました。何で蹴り技で野球だ、サッカーじゃないのか、と疑問を抱かれた方も居られるでしょうが、まあ、ここは続きをお読みください。解説者は元中日の守護神、タレントとしても活躍なさった坂東英二さん、マウンドに立っているのは当時阪神タイガースの万年エース候補と言われた中田浩二投手です。坂東さん曰く、
「速いストレートを投げよう思ったら遠くへ投げるつもりで無いといかん。砲丸投げやのうて、槍投げでないと」
これと同じ、言ってみれば、蹴りにおいて、相手の位置がキャッチャーミットかボールを放すポイント、その後どのくらい遠くまで飛んで行くか、という事ですね。
これが、打点における力学的な概要。
そしてですね、自分自身はどういう動きをするか--まず第一に、中国拳法の足技の特徴は軸足です。基本的に、軸足は浮かさない。他の流派だと、蹴りと言うと軸足の踵を上げろと教えますが、中国拳法は違います。出来るだけ安定した形を維持するため、軸足は浮かしません。ただ、固定するのではない。場合によってはしっかり地面に固定して、バランスを維持するといった事も必要ですが、同じように状態によって柔軟に対処する事が大切で、少しばかり浮く事もあります。
次回は、いくつかの練習方法及び、実技を紹介いたします。