呼吸法 その1
今回はいわゆる呼吸法についてです。
呼吸法、というと、これまた腐るほどございまして、それぞれの用途や目的に応じてやり方も違いますが、一つだけ、或いは探せば他にもあるかもしれませんが、ともかくも、これだけは絶対に共通する、と言う事がございます。
それは、力を入れるときには息を吸い込んで、抜くときには息を吐く、と言う事です。
生命活動の根源は呼吸です。その呼吸を空の状態で止めると、自ずから生命活動も低下します。
これは生物である以上、絶対の法則です。
禅なんかでは、呼主吸従とかいって、息を吐く事を主体とするそうですが、これなんかも出来るだけ呼吸量を減らして脳神経の活動を弱めるのが目的であると思われます。実際、雑念が湧いたとき、嫌な事や腹立たしい記憶が脳内によみがえったとき、自分は息を吐き出してそのまま可能な限り止めておきます。こうすれば、酸素の供給を絶たれた脳が活動を弱め、次第次第に感情も収まってきます。簡単な雑念の払い方なので、もしよろしかったらお試しあれ。
このように、吐息は基本的に機能を低下させます。息を吐いた状態で止める事を、ヨーガではシュンヤカといいます。
しかし、間違うととんでもない事にもなります。
それは、一旦吸ってから吐き出すと逆に力が入ってしまう、という事。
整体師の片山洋次郎氏が書いておられましたが、息を吐くと逆に力が入る人が居るそうです。どういう事っちゃ、というと、シャウト効果、つまり大声を出すのと同じ現象が起こる。ボディビルとかウェイトリフティングなんかでバーベルを差し上げながら、アババババババババ、などと意味不明の奇声を発する人が居りますが、あれこそシャウト効果と申しまして、大声を出すと力が倍加する、と言うので意図的に発声しているそうな。つまり、息を吐く、と言う行為を意識しすぎて、吐く前にわざわざ大きく吸い込んでから吐くとこうなる訳です。
前に紹介した急鍛法などは、息を吸い込んでから、腹の底で圧縮させて、発勁終了すると自然に排気する。元々発勁は発声などしない、と教わったからですが、それは太極拳、内家拳のやり方で、空手や、映画に出てくる少林寺の荒法師なんかは景気良く掛け声を出しながら練習しています。自分は閉気法を基本とした内家拳の発勁を学んだので、基本的には発声はしません。ただ、太極拳でも流派によっては開声などという、発声を伴う呼吸法を修練する場合も有るらしく、一概には言えません。古流柔術でも、渋川流か何かではカキエとかいう発声練習で丹田を鍛えるとか言うのを読んだ事も有ります。自分も、急鍛法では発勁終了後にはうなり声のような呼気を漏らす事がある、とは前に書きましたよね。これは意識的な発声ではなく、発勁の後の残心のとき自然と漏れる声ですが、それだけ、大量の気息を下腹部で圧縮するわけです。前回書いたように外家と内家は双方補い合っているわけですから、内家拳から修練しても、どこかで外家拳的な鍛錬も必要なわけです。