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春隣(はるとなり)

作者: 高石すず音

祖母の一周忌に寄せた詩です。のんびりとした電話の声を思い出しながら、書きました。センシティブな内容を含む作品です。ご了承の上、ご覧下さい。

挿絵(By みてみん)


すっかり買い忘れてしまった

年末の帰省の切符


いつも発売日を覚えていたのは

小雪をすぎると

きまって祖母の電話があったから


「冬休みはいつ帰ってくんの、早よ帰っといで」

そう云って、故郷ふるさとの匂いを届けてくれた


穏やかによく晴れた

こんな土曜の朝だった

思い出したように

祖母から電話があったのは


「帰れるときにいつでも帰っといで、おばあちゃん、待ってる。

今日は話できて、ほんまによかった。ありがとう、ありがとう」


大寒をすぎた朝のこと

祖母が逝った


帰郷の途

光がとろとろと車窓に差しこんで

私の背中をあたためていた

母からメールがきた

「おばあちゃん、もうすぐ帰ってくるよ」


おばあちゃんが家で待っていた

「ただいま」を言った

湯灌ゆかんを済ませた胸元に

庭に咲いていた

紅梅を手向けながら


東京はまだ北風が

通勤の人の背中をまるくしていた

けれど、

祖母の生きた故郷ふるさと

春の足音がたしかに聴こえていた

写真:ぱくたそ

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、なんだか今読んだからこそ刺さる作品でした。 僕はこの秋に帰郷をする予定で、実家とは別の、生まれ育った祖父母の家で暫くお世話になるのです。でもいつか、僕は祖母も……と考えるとしんみり…
2020/09/27 00:56 退会済み
管理
[良い点] 拝読しました。 高石さまのおばあちゃんの電話の言葉。おばあちゃんのお人柄がうかがえる温かい言葉だなあと思いました。しばし、じーんときていました。話せてよかった、ありがとうと言ってくれるな…
[一言]  高石すず音様  こんにちは、中村尚裕です。  温かくも懐かしい思い出と避け得ない別れ。  哀惜の情もさることながら、これまでの温もりをもまた想い返せずにはおれない『温度』を感じます。 …
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