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呼び出しと新たな一歩

「とはいえどうしようかね…」


オリエンテーションが終わった翌日である今日は、学校が休みだった。

そのため考える時間はたっぷりとあったが、時間があるというのは時に考えものでもある。


俺の性格上、悩んだらこのままズルズルといってしまうことは目に見えているからだ。

鉄は熱いうちに打てともいうし、できれば今日にでも告白したい。


(でももし失敗したら…)


そんな不安も確かにある。それがこれまで俺に二の足を踏ませていた原因だ。

だけど、今は勝算もあった。食事の時の天華の態度、そして琴音からの後押しだ。


琴音の言うことが本当なら、俺たちは両想いのはずだし、それなら断られる可能性なんて…


(ない、よな?)


嫌な予感が脳裏によぎる。

あれだけ多くの人間が天華の周りにはいるのだ。

好意を寄せているやつだってひとりやふたりどころの話ではないだろう。

今でもたまに告白されているなんて話も耳にする。

それらは今のところ全て断っているみたいだけど、実はとっくに俺以外のやつに心が惹かれていてもおかしくないのだ。


それこそ、西野みたいなやつに――


「ええい、もう悩むのはやめだ!」


嫌な考えを振り切るように、俺は勢いのまま天華を呼び出すことにした。

天華の番号を選び出し、発信ボタンをタップして、そのまま耳へとスマホを当てる。

チャットで告白しようかとも一瞬考えたが、それはなんだか不誠実な気がした。

少なくとも、俺や天華らしいやり方じゃない。

もっと直接的なほうがきっとお互い好みだろう。


永遠にも感じるような長い電子音の後に、音声がプツリと途切れ、微かな息遣いが聞こえてきた。


「もしもし?」


それは天華の声だ。分かってはいたが、やはり緊張してしまう。


「あ、ああ。天華、だよな?俺だ、雪斗だ」


「そんなの画面みたら分かるわよ…」


電話越しに天華の呆れた声が聞こえたが、そんなことは些細なことだ。

なにせ今は心臓がバクバクと大きな音を立てている真っ最中である。

声が震えていなかっただけ、俺としては上出来だった。


「そ、そうだよな…それで天華、今日時間あるか?」


「…え?あ、あるけど…」


向こうから、ゴクリと唾を飲む音が聞こえてきた、気がする。

天華も緊張してるんだろうか。俺と気持ちが通じているというのなら、きっとそうだと思いたい。


「良かった…あ、あのさ。大事な話あるんだけど、午後から会えないか?」


「え…」


「い、いや!無理ならいいんだけど!」


相当の勇気を振り絞った呼び出しの言葉の後、情けないことに俺はすぐに尻込みしてしまった。

肝心のところで弱気の虫が顔を出す。


(何言ってんだ俺。ここでヘタレんなよ!)


さすがにここは男を見せなきゃいけないときだろ!

俺は自分自身を叱咤激励し、なけなしの勇気を振り絞る。

言葉を訂正して、どうしても来て欲しいと言い直そうとしたが、その前に天華の声が聞こえてきた。


「い、いいわよ…どこで会うの?」


「えっ、いいのか!?」


「いいって言ってるでしょ!それで、どこで会うのよ!?」


何故か天華は大声を出してきた。どうやら向こうもテンパってるらしい。


(やっぱり、これって脈ありってことか…?)


いや、決め付けるのはまだ早い。

返事の遅い俺にじれているだけかもしれないのだ。


なんにせよ、言葉を返さなくてはいけないだろう。


「それじゃ昔遊んだ公園で、13時に待ち合わせでいいか?その、待ってるから」


「…うん、分かった」


俺が告げた後、僅かな沈黙が続き、やがて天華との通話は切れた。

電話の後、大きな虚脱感が俺を襲う。



やった、やってしまった。

俺はついに踏み出したのだ。天華との関係を変える一歩を、俺は自分から踏み出すことができた。

背中を押してくれた琴音と、俺に勇気をくれた西野には感謝してもしきれない。


だけど、まだこれで終わりじゃない。本番はこのあとだ。

俺は今以上の勇気を振り絞らなければならないだろう。


どのみち、もう後には引けないんだ。こうなったら出たとこ勝負。やれるだけやってやる!


俺は午後の告白のために、早速準備に取り掛かるのだった。

ブクマありがとうございます


次でプロローグ終了となります、お待たせしてすみません

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだか、おらワクワクして来たぞ!!
[一言] まだプロローグだからこれからも話が続いてくれるのかな? この小説ほんとに好きだからこれからも続いてほしいな...
[一言] まだプロローグじゃったか。 ここからどういう思考回路のもと、ツンデレは告白を断るのか。素直になれないながらもようやく掴んだチャンスをどうフイにしてしまうのか
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