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番外編─二人が交わすキスに込められた想い

無事に高校の卒業を迎え、春休みに何人かと連れだって卒業旅行を楽しんだ俺と星峰さんだった。

高校を卒業して、それ以降の将来(さき)の道がお先真っ暗で無いことは安堵した。

星峰さんと同じ大学に通えること、お互いの両親から同棲の承諾を得られたことに浮かれていた俺。俺だけではなく、もちろん星峰さんも同様だ。


言うまでもなく、お互いの姉がみっともなく実家を離れて暮らすと言い出した俺ら二人を説得しようとしていた。ついでに泣きじゃくりながらと、付け足しておこう。


県外の大学に進んだことにより、通学に時間が掛かるので実家を出て、大学近くに建つ比較的安いアパートを探し、同棲生活を始めた俺らだった。


星峰さんと一緒に暮らせる毎日が楽しい。大学生活は星峰さんという恋人の存在が居て、今までより忙しくはあったが充実感を感じていた。

一つのベッドで二人仲良く就寝して、朝を迎え目覚めると夢じゃないんだな、と実感して自然と綻んでしまう。

そんな俺に気付き、「どうしたの?鴻汰」と微笑みながら訊いてくる星峰さんと目があって、お互いに笑いが込み上げてくる。

お互いが愛しさのあまり手を伸ばし、視線の先にある相手の頬に触れる。

くすぐったい、といった感覚に一瞬襲われるときもあるが触れて触れられている現実に頬が緩むのは抗えないものだ。

それほどに愛し合っている現在(いま)が幸せすぎる。



大学の卒業を迎えようとしてたある日、新居のアパートではなく、夕陽が差しコントラストが絶妙にマッチしたオレンジに染まる街を一望できる公園で結婚をしないかと話題を出した。


「──君が歳をとってく度に恋をしようと思えるキスをするから......これまで以上に香を愛する、愛し続けるよ」

結婚しよう、香と囁き香の唇に俺の唇を重ね、キスを交わした。

彼女の唇が離れ、彼女ははにかんだ表情を浮かべながら、口にした言葉は──



──うん。私を、末永くお願いします。鴻汰ぁっ、好きだよ!大好きだよ!皆に自慢できる素敵な夫になってねっ鴻汰っ!


だった。


再び、俺と星峰さんは“歳をとっても恋をしようと思えるキス”を交わした。




結婚して、数年後には涼更香が女の子を出産した。

娘に名付けた名前は──。








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