交友関係が広くても知らない人物
翌日、登校すると俺の席で待ち構える篤生の姿があり、挨拶を交わす。
「おはよう、あっ君。どうしたの?」
「コウ......おはよう。大丈夫か心配で......」
「今のところは何とか......ね。星峰さんがいなければ、もう......」
「そうか......堪えられなくなったら担任に相談しなよ、コウ。じゃあ──」
立ち去ろうと歩み出す彼を引き留め、気になる話題を訊ねた。
「待って、あっ君!並志野さんって知ってる?」
足をとめ、振り返り彼が首を傾げた。
「並志野って?誰のこと......」
唐突に出された苗字に彼は聞き覚えのない苗字の反応を返した。
「星峰さんのクラスの......学級委員長みたいな女子、なんだけど......以前は三つ編みだった」
「学級委員長みたい......三つ編み?......悪い、コウが訊いた女子のことは知らない。他をあたって。じゃあ、またな」
「そう......ごめん。また」
教室を出ていく彼の姿が消え、椅子に腰をおろして頭を抱えた俺。
交友関係が広い篤生が知らないとなると相当だな。
一瞬ではあったが表情が強張るのを感じたが触れようにも触れられなかった。
昨日、スタバで一息ついたときに並志野にゲームがそれほどまでに上手いのか訊いたが友達と遊んでたらと返された。
追及したがそれ以上はこたえず、はぐらかす彼女だった。
知られたくない友人との付き合いが......と勘繰るが無理そうだ。
誰しも触れられたくないモノがある──並志野が抱える秘密は闇が深そうな気配を感じる。不気味に感じてしまうのはそのせいでもあるような。
クラスメートが続々と登校してきて、教室が騒がしくなりだした。




