文化祭編─文化祭三日目5~取り戻した関係&キスが演技だとしても
無事に星峰さんが登校し、文化祭の最後となる体育館での催し物である星峰さんのクラスによる演劇が予定通りに開演した。
演目は有名なもので、誰もが一度は聞いたことのあるものだ。
案外、本格的なセットで学校の演劇とは思えないもので、星峰さんの相手役の男子が迫真な演技をするものだから驚きが跳ね上がったのは言うまでもない。
両者の逢いたくてもなかなか逢えない気持ちがひしひしと伝わってきた。
白を基調としたテールコートをびしっと着こなした青年を演じる男子がやっとの思いで星峰さんが演じる女性に逢えて、胸に秘めていた想いを告げてキスをするシーンに差し掛かる直前なんて体育館中が期待を込めた雰囲気に満たされたくらいだ
。
星峰さんと男子がキスをしているシーンはまともに見れないほどで、幾ら演技であれど、恋人が他の男子とキスをしている場面など平常心でいられるわけなどない。
男子は彼女の腰の少し上の辺りに手を添えて、ぐいっと身体を引き寄せて、彼女の唇に顔を近付けそのまま──。
ライトが消え、暗転してまもなくすると再び舞台がライトアップされて、舞踏会で行うようなステップを星峰さんと彼が三分ほど踏み続け、クラスの演劇が終幕となった。
彼女のクラスの演劇を終え、30分経過し、文化祭の閉会式へと移った。
「これにて──」
20分も経たずして閉会式が終わり、教師の指示に従い、ぞろぞろと体育館を出ていき教室へと戻っていく。
着替え終えれなかったようで星峰さんは純白のドレス姿のままで駆け寄ってきた。
「どう......だった?すずさ、らくん......」
羞恥に悶えながらも、感想を訪ねてきた。
「とても、良かったけど......キスをしてて、もやっとした......かな」
「う、うん......」
俯く彼女の返答は短かった。
「後片付けが終わったら、教室まで行くから」
「うん、ありがとう。じゃあ、また後でね!涼更くんっ」
「うん、後で」
彼女と別れて、教室へと歩を進めた。
相変わらず教室には重々しい空気が漂っていた。
後片付けがあらかた終わり、解散となった教室を抜け、彼女の教室へと急いだ。
何度かトラブルに見舞われたが、波乱の文化祭はこうして幕を閉じた。
長い文化祭編が、やっと終わりを迎え、日常に。
長い間、粘り強く、根気よく読み続けてくださり、本当にありがとうございます!
次回は、番外編を挟み、本編になります。
内容はもう決まっています。
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