文化祭編─文化祭三日目3~可愛いと言いながらも貶す姉と心配を掛けまいとする恋人に救われる
涼更美羽が俺を庇うように彼に向かいボクシング選手のような構え──顔の前で拳をつくり、臨戦態勢に入っていた。
「弟だぁ~っ!二人まとめて相手してやるから掛かってこいよ!」
「──」
「──」
金髪の彼がそう息巻いて、姉の攻撃を待ち構えているが、姉を甘くみすぎており、憐れにさえ思えてしまう──彼が。一発でカタがつくことは言うまでもない。こんな姉だが、彼以上の体格が大きく、引き締まった筋肉の男性を幾人もなぎ倒してきたのだ。
彼が姉に勝てるなんてことはない。
姉が勝てる要因の一つに右手首に身に付けているウォーター・オパールと呼ばれている淡い青色の地色の宝石が埋め込まれたブレスレットがある。
淡い青色の地色にちりばめられた緑や青の輝きを放っているオパールが埋め込まれたブレスレットは、彼女にとってげんかつぎのアイテムみたいなものだ。
大学の講義がある日やお出掛けの日、負けられない試合の日などに必ず身に付ける彼女のブレスレットだ。
ブレスレットのおかげなのかはわからないが、試合に勝ったりと中々にうまくいっている。
そんなこんなで、姉と彼の勝負は呆気なく勝敗がついた。姉が彼の懐に入った瞬間にクラスTシャツの胸元を勢いよく掴んで彼に背負い投げをきめた姉の勝ちに終わった。
姉の足下に倒れた彼は、小さく呻き声をあげていて立ち上がることさえ難しそうに身体を捩っていた。
可哀相に......と、彼についつい同情してしまう。複雑だな、あんなに......。
「コウ、たまには殴られる側の私の痛みもしらないとね。私の気持ちも──」
「うっ......さい、よ......バカぁ、姉貴」
肩を貸しながら、立ち上がらそうとしてくれる姉にそう呟いた。
「助けたのに......あんたってやつは──」
とぶつぶつと言う姉に肩を貸してもらいながら、廊下を一歩一歩歩む涼更姉弟だった。
身体中の痛みが少しずつ引いてきて一人で廊下を歩いていると星峰さんの姿を捉え、「星峰さんっ!」と俯きながら歩く彼女に声を掛けた。
俺の声に気付き、顔をあげて駆け寄って星峰さん。
沈んだ表情を浮かべていたが俺の顔の異変に気付き、「右の頬が腫れてるけど、大丈夫なの?」と気に掛けてくれた。
保健室で手当てをしてもらっていた。
「もう大丈夫だから。あのっ、星峰さんを傷付けてごめんなさいっ!」
彼女に頭を下げて謝罪すると、彼女から困惑した声が漏れた。
「えっ?......あ、ああぅ、ああっと......何?何で謝って......」
頭を上げてよ、と彼女に言われ頭を上げる俺。
「あのぅ~ええっと......なんていうか、その......」
彼女にこれ以上傷付けてしまうようなことはしたくない。その一心で言葉を選ぼうとするがどの言葉を選んでも傷付けてしまいそうで、口にしようにもできなかった。
後半に突入しました。
文化祭も残り数話になります。色々とキャラが出てきましたが···どうなるかはお楽しみにしててください。
キャラのイメージCVが気になれば、Twitterで更新したことをあげたときにでもスレッドのほうで書きますので···




