文化祭編─文化祭三日目2~殴られた痛みよりも彼女を傷付けた事実がよっぽどこたえる
未だに宮地からの告白の返事を彼女に告げられていなかった。
答えは決まっている。決まっているが、少なからずだが感情が揺れていた。
彼女による勇気の告白は誰のどんな告白よりも重苦しく乗りかかってくるものだ。なんせ、全校生徒──高校関係者以外もその場にいた告白だ。
軽々しく断られたと思われたら、そこで関係が潰えるのは分かりきったことだ。
告白を断られる辛さは自身が身にしみていることであり、経験したからこそ、誰であろうと告白を断られる辛さを経験させたくない。......しかし、俺には星峰さんという恋人の存在が居て......
そんなことを脳内でぐるぐる巡らしながら、トイレまで歩き、トイレに到着し、入ろうと曲がる寸前に右頬に伝わる鈍い痛みとハンパない衝撃を感じた瞬間に身体が宙を浮いて、吹っ飛んでいった。
三メートルほどだろうか?まるでアニメのような感じで吹き飛ばされるとは思ってもみなかった。
幸いして、なのだろうか......廊下には巻き込まれるような人もおらず、俺だけが被害にあっただけだ。
「ぅぅー......ナタ、だっ......れだ、よぅ......」
低い呻き声をあげながら、途絶え途絶えに訊ねた。
右の歯が今にも折れそうで、鈍い痛みと床にぶつかった衝撃と諸々の身体の痛みで瞼が開けずらいながらも細めた瞳で殴ってきた相手を確認した。
登校中に見掛けた宮地と痴話喧嘩をしていた例のイケてるメンズであり、鋭い眼光でこちらを睨んでいた。
勢いよく殴ったにも関わらず髪型が乱れておらず、ワックスで固めているのだろう控えめな金髪で長めの髪の男子だ。筋トレが趣味とでもいう感じに仕上がった筋肉をつけている。
いきなりで何で殴られたんだよ、彼に。
「お前だろ?涼更ってぇのはぁっ!冴えねぇコイツのどこが良いんだか!マジカで見ると冴えねぇのがマスってもんだぜ!宮地が俺の前で何度も何度も口にするから苛立ちまくりだぁっ!てめぇなんかの名前なんぞ聞きたくねぇのに......口を開けば、涼更、涼更涼更、涼更涼更涼更──なんて念仏を唱えるかのように言いやがる。鬱陶しいんだよ、てめぇのそんざいがよぅ~っっ!」
校内であるにも関わらず、叫びながら罵り、捲し立てる彼に、自覚はしているが赤の他人に──しかも、何も知らないクセに一方的に罵ってくるのに苛立ちを覚えた。
八つ当たりもいいところだ。
「──」
罵りながら、距離を縮めてくる彼から逃走をはかろうとするが痛みで動けそうにないところに颯爽と現れた一人の女性──涼更美羽の姿が。
「うちの可愛い弟に手荒なことして、許されると思っての?アンタ」
姉をカッコいいと思ったのはこれが初めて......かも、しれない。




