文化祭編─文化祭二日目11~罪悪感に苛まれることになろうとは!
体育館での軽音楽部の演奏を聴き終え、教室に戻ろうと廊下を歩んでいた俺。
「ああっっ!おーい、涼更ちゃ~んってぇ聞いてんのぅっ!おーいってばぁ~」
と、そんな呼び掛けに応じることなく立ち止まらずに教室へと足を踏み出し続けた。
「涼更ちゃ~んってばぁっっ!無視すんじゃねぇーよっ、涼更あぁぁ!聞こえてんだろぅ~がぁっ──」
背後から懲りもせずに叫びながら近付いてくる女子の声。
追い付いてきた女子は、容赦のない握力で肩を掴んできた。
「なぁ~にぃ無視してくれちゃってんのかなぁ?涼更ぁぁ!」
「いっってぇぇぇつぅぅ~んだよっっ!誰だよっ、俺の肩を使いもんに出来ねぇようにしてんのはぁっっ!」
ガンをとばす人物に恐怖という感情より痛さでむかっ腹がたって喉が潰れる寸前の声量で反撃に出た俺に、肩を掴む那珂詩歌が呆気にとられた表情で固まってしまった。
俺は、みるみるうちに那珂詩歌の顔が変わり始め、泣き出しそうになる寸前に彼女の口を抑え近くの空き教室に引き摺っていくことにした。
ぅぅぅっっ、ぁぁっぁぅっっ、と呻き抵抗する彼女を教室に入り扉を閉めたのを確認して、口もとにあてた掌を離し、素早く謝る俺。
「うぅぅ、ぐすぅっ......ううっ、こっこわがあぁぁぁっだぁぁぁ、ううぅぅうわぁぁぁぁ──」
泣きじゃくり始め、床にへたりこんでうずくまる彼女にわたわたと慌てて宥めようと屈んで触れると同時に手を振り払われた。
「ごめんっ!ごめん、那珂詩歌ぁっ、泣かせるつもりなんてなかったんだよぅ。ごめんって、なぁ那珂詩歌ぁっ──」
彼女が泣き止んだのは40分後のことだった。
俺は初めて、彼女を泣かせてしまった。
彼女の呼び掛けをわざと無視し続けたわけではなく、考え事で聞こえていなかったという言い訳をさせてほしい。
罪悪感がハンパない。




