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文化祭編─文化祭二日目6~後ろから抱擁

わたあめを売っている上級生の教室の前では、長い列が出来ていた。

「人気だね、星峰さん」

「うん。夏祭りくらいでしか食べないからじゃない。安いし」

「そうだよね、それくらいでしか食べないよね」

隣にいる星峰さんの表情が未だに暗く、声音も低い。

「......」

「......」

二人の間に沈黙が続く。


後ろから衝撃を受け、背中にやわらかい感触を感じた。

身体に腕を絡め、抱擁される。

「うっ。何ですかっ?誰です?」

突然の衝撃に小さく呻き、腕を引き剥がそうとするが中々離れない。

「そろそろやめてやれ!」

と近くから抱擁する人物を制する声がして、声の方向に視線を向けると見知った人物が呆れた表情を浮かべていた。

「......っ!」

「久しぶりだね!こうちゃん、大変だね。こいつのおもりをいつもだろ!」

姉を指差し、横腹に拳をめり込ませ、やめされる女性。

「何で文化祭に怜奈さんがっ!?」

「そりゃ~あ、驚くかぁ!こいつに誘われてな。いきづまってたし、ネタにと。そんな感じできたってぇーんだ」

腹を抱え、低く呻き続ける姉を一瞥して満面の笑みの波佐見怜奈。

波佐見怜奈は、姉よりも年上で売れっ子作家。学生を主人公にした作品を数多く生み出している。

「涼更君、誰なの?」

「姉の美羽と従姉の波佐見怜奈さん」

「えっと、私ぃっ......涼更君の恋人っ、でっえぇぇ......っと、星峰香っっ、ですぅっ!よろしくっ......おね、がいしまぁっすぅっ」

「ううぅぅ......コウの恋びっ......とっぉぉ......」

波佐見の肩に手を置いて、呻きながら星峰さんに視線を向ける姉。

「そうかぁ~!こうちゃんの恋人ってかぁー。よろしくね、こうちゃんのことを」

星峰さんの手を握り、嬉しそうな波佐見。

「は、はっはいぃっ!」

返事と同時に勢いよく頭をさげる星峰さん。

緊張した星峰さんって新鮮だなぁ、と隣にいる星峰さんの横顔を見つめた俺。


その後、わたあめを購入した俺と星峰さんと姉と従姉で文化祭を回ることになり、30分後に姉と従姉の二人と別れた。



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