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文化祭編─*溢れだす秘めた想いは気付かれない

私は、涼更君に文化祭を回ろうと誘ったが断られてしまった。

なんだかんだ言って、いつもは付き合ってくれているが、即答されてしまったことに深く傷を負った。

香が交際していなければ、彼に出逢えていなかったわけだし。

彼と出逢うことさえなかった私も存在するわけで。

香が昔のままで、勇気を振り絞らず声を掛けていなければ──彼が告白を断っていれば、等と『もしも』を思うと、今の涼更君と良好な関係でいれることがとても幸せだなぁと想う私。


教室を後にして、廊下を歩いていると二年の時にお世話になった矢賀戸先生が声を掛けてきた。

「星峰......だよな?久しぶりだね。今日は妹の様子をかい?」

「はい......もしかして、矢賀戸先生?お久しぶりです、いやあぁ~そうではなくて......すずっ──」

「言いかけてやめないでよ、星峰。スズッの後に続くのは?」

「大したことじゃないです、ほんと。お元気そうで何よりです、矢賀戸先生」

「ま、まあね......星峰も変わらず元気そうだ。またね、星峰」

そう言い残し、手を振りながら去っていくミディアムショートの女性教師。

追及されずになんとかのりきれた。

再び、歩きだし演劇部の演劇が観賞できる教室に向かう。


涼更君は、香や友達以外の誰にでも優しくするだろうなぁ。私に対しても、香と同じように優しく接しているのだから。

香を想い、それと等しいほどの優しさを私にも向けて向き合ってくれるのは涼更君しかいないだろうと想える。

そんな彼だからこそ、香から奪い私だけの涼更君にしたいと想ってしまう。

醜い感情がふつふつと沸き上がるのはおかしいのかな......そんな秘めた想いは、彼には届きようもないだろう。

人間らしいそんな感情を抱えながら──彼を想いながら演劇部の演劇を眺めた。


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