番外編─体育館の舞台上で輝く者達
二年生になった涼更の文化祭の話。
本編の文化祭編が終われば、理解できます。
文化祭の演し物で一番盛り上がると言えば、軽音楽部のステージでの演奏だ。
俺と星峰さんは、軽音楽部の演奏が始まるまで時間があったので、お化け屋敷やら射的などを楽しみ、小腹を空かせクレープを分けあいながら和気藹々として時間を潰した。
去年と違い、クラスが同じなので文化祭の出し物を一緒に回れている。
俺らのクラスは、演劇で星峰さんが去年と同じ演目の同じ役といった感じだった。
彼女は、満更でもない表情をしていたっけ。演劇に決まったときは。
軽音楽部のステージの時間が迫り、体育館まで急ぐ俺と彼女。
体育館に入ると熱気がこもっていた。
ペンライト片手にスタンバイ中の軽音楽部を待っている観客の生徒達。
先輩の宮地悠美がメンバー達を短く紹介した。
「──紹介はこの辺にして、そろそろ始めます。まず、最初はこの曲からスタート!LIP×LIPの──」
一曲目の前奏が流れる直前、舞台上のライトが消え、前奏が流れ始める。
聞き慣れたあの曲の前奏だ。
スピーカーから二人の男子の声であの囁きが流れ、舞台上がライトアップされた。
「ロメオ」
軽音楽部が演奏している前で背中合わせの男子の姿が現れた。
LIP×LIPの有名な曲、『ロメオ』が一曲目だった。
去年の軽音楽部の最初の曲と同じだった。
ダンスを披露している二人の男子はダンス同好会だとのこと。
舞台にはもう一人、女子がいて彼女を取り合うといったのが繰り広げられた。
好きな曲なので文句はないけれど。
星峰さんも盛り上がっていた。
いつの間にかペンライトを片手に熱狂的な声をあげていた。
その後も好きな曲を演奏する軽音楽部。
卒業する宮地先輩がある人にだけ向けて最後の曲を演奏した。
振られた後輩に向けて。
軽音楽部のステージは、40分ほどで終了した。
去年の文化祭は色々とあったが、今年は良いな。最高だよ、文化祭。
体育館を出たところで、隣を歩く彼女が呟いた。
「あの先輩って、まだ未練があるんだね......鴻汰に。後輩にって、鴻汰のことでしょ。はぁー、モテモテなんだから、愛しの彼氏はっ!」
「まあ、そうだろうね。俺は、香一筋だから心配しないで」
俺の返答で隣を歩く恋人、星峰香は弾ける笑顔を見せた。
明日は、俺達のクラスの演し物だ。
演じるなんてなぁ、あれを。
まあ、可愛い恋人である星峰さんに──出来るのだから良いか。
緊張するな、明日の演劇は。
「コウちゃーん。もう終わっちゃったの?軽音楽部のは」
正面から走ってくる女子の声で少しではあるが緊張が和らぐ俺だった。




