番外編─中学生だった頃の二人
補足
コウは、菫に振られるまでは仲良しで、コウちゃん·スミちゃんと呼び合うほどでした。
前の菫は内気でしたが、高校では明るく振る舞っている感じです。
人前でコウちゃん·スミちゃんはさすがに···
中学に通い、一年が経過したある日の昼休み。
食堂から戻ってきた俺は、給食を食べ終えていた幼馴染みの三条菫に教室の前で待ち伏せされていたのに気付かず、素通りして教室に入った。
学生服の袖を後ろから引っ張られて、ようやく気付いて立ち止まる俺。
「なに無視決め込んで通り過ぎんの、コウちゃん。相談にのってくれない?幼馴染みなんだし、いいでしょ?コウちゃん」
「単に気付かなかっただけだし。無視するほど嫌ってないよ、スミちゃんのこと。幼馴染みってことがなくても、スミちゃんの相談にのってるじゃん。それで相談っていうのは?」
「いじめられてるんだ......いや、いじめなの......かな。私が過剰に反応してるだけ......っていう、のか。中々クラスに馴染めない、んだよね......私。癖毛もなおらないし、話しかけることも難し......っく、てぇっうっぐっすうっ......どうじいぃだあぁらあ、いいがぁなあぁあああー」
俺の胸に顔を埋め泣き出した菫。
廊下で彼女のクラスメートとすれ違うとき、陰口が聞こえるのを思い出す俺。
彼女は内気な性格で他人と話すことが苦手だ。
友達がつくりやすい俺とは違い、壊れやすく脆い幼馴染みの彼女──三条菫。
俺は、彼女の背中に腕を回し抱き締める。
「できるだけのことはやるよ。中学生にできるのは所詮、ちっぽけなことだろうけど。やれることはやるよ、いつでも思いの丈を吐き出してもいいから」
「......ありっがあぁどおぉうぅー、コウちゃんっっううぅあぁぁー」
学生服が菫の鼻水と涙で汚れた。
うっ......どうしよう、汚れた学生服。
廊下にいた一人の女子と目が合い、すぐに駆け出した彼女。
彼女も菫と似たような雰囲気だったな。
泣き続け、離れない菫に困惑しながら、菫に似た彼女が気になった俺だった。
***
俺は、高校に入学した俺と菫の立場......というか、立ち位置が変わるだなんて、思わなかったな。
高校では、菫がクラスの人気者になっていたから。
俺は、中学で他人と関わることに嫌気が差した。あまりにも多くのしつこいべったりとした黒々と禍々しい悪意を見すぎたせいで。
今月の17日に更新する予定です。
あくまで予定ですので。