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文化祭編─文化祭一日目2~名指し指名!?

本格的に文化祭が始まったのが9時30分すぎだった。

一度に教室に入る人数に制限を設けて、なんとかまわせている感じだ。

一般の方も高校に出入り自由で、主婦らしき女性など見かける。


11時前に注文を受けて、注文の品を知らせにきたメイド服に身を包むクラスメートが俺に声を掛けてきた。

「──すっ......涼更くーん。若い女性の方が涼更くんに会わせてほしいって言ってるけど、大丈夫かな?」

「えっ、大丈夫だよ。盛り付けてから行くよ」

「わかった。伝えとくよ、その人に」

彼女は、そう言い終えて、特別教室から出ていき、教室に戻っていく。

誰だろ、姉ならクラスメートに頼むことなく、遠慮せずに見に来るはずだ。

注文された苺パフェをパフェグラスに盛り付け終えて、特別教室を出て、教室に足を踏み入れて、見知った顔を探すとすぐにわかった。

肩を出して、露出度の高い服を着た柚羽さんの姿があった。

俺は、柚羽さんの席に近付いて行くと、彼女が気付いて苗字を呼ばれた。

「涼更君~。涼更君の執事の格好を見たかったなぁ~残念だよぅ」

「柚羽さん。何で来てるんですか、星峰さんが来ないって言ってましたけど。似合いませんよ、俺が執事の格好なんて」

「そんなことないよ、香はみたいはずだよ。香には見つからないように来たんだよ。すごいでしょ、ねっねぇ!」

「それは無理だったみたいなのに何で声を弾ませてるんですか。ほんとに呆れますよ、柚羽さんには」

彼女の左頬が赤くなってつねられた痕が残っているのをみて、苦笑いを浮かべた。

「ま、まあ......それは。てか呆れるって酷くない、涼更君てばぁ~。友達と歩いてた香にばったり出くわしちゃって、てへへ。手加減しなくて困ったよ、ほんとさぁ」

俯いてからすぐに顔をあげ、頬を膨らまし不機嫌になったかと思えば、笑顔を浮かべながら頬を掻く彼女。

柚羽さんって、ドMなのか。

俺なら、嫌だけどなぁ~。

「そうなんですか。柚羽さんの友達は来てないんですか、文化祭には」

「えっ、ああ......来てないよ。一人だよ、両親は仕事だからね」

「そうですか。ゆっくりしていってください、柚羽さん」

「うん。後でまわれないかな、一緒に?」

「嬉しいですけど、友達と約束してるので。じゃあ」

「そう......なんだ。ごめんね、無理言って。頑張ってね、涼更君」

落ち込んだ表情に変わる彼女には胸が痛むが仕方ない。

俺は、彼女との会話を終わらせ、持ち場に戻る。


その後、ちらほらと、関わりのある人が教室を訪れた。


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