文化祭編─文化祭一日目1~文化祭開始前の準備
文化祭一日目。
俺は、登校して教室に入り、ロッカーに鞄を突っ込んで、廊下に出て、屋上に向かう。
俺のクラスの出し物は、執事・メイド喫茶だ。俺は、調理を担当することになった。
調理と言っても、簡単なものばかりで、盛り付けをするだけだ。
俺には、執事の格好なんて似合うはずもないので、黙々と裏で作業をすることにした。
クラスメートと連携が取れるようなものではないから。
まあ、来年にはクラスメートとは離れることになるのだから、今だけの辛抱だよな。
屋上の扉を開けて、屋上に出て、夏の暑さが少しとどまっているが涼しい風が吹いていて、暑さはあまり気にならない。
屋上から景色を見渡していると、嘉納さんが後ろから名前を呼んでいるのに気付き、振り返る。
「コウちゃん!ここにいた、机を動かさないといけない時間だよ。教室にきて~コウちゃん!」
「夏乃さん。今いくよ、似合ってるよ。クラT」
ブラウスではなく、水色のクラスTシャツを着ていて、下は制服のスカートという格好の嘉納さんに感想を伝え、駆け寄る。
俺は、彼女と並んで屋上を後にして、教室に戻る。
教室に入るとクラスメートの大半がいた。
動かしていない机を移動させ、テーブルクロスを敷いて、床に座る。
隣に座る嘉納さんが話し掛けてきた。
「今日だけさ。私と回ってくれない、文化祭?」
いつもより低い声で誘ってきた彼女。
「いいよ、夏乃さん。最初はどこにする?」
「いいの?てっきり断られるかと思ったけど......本当に、いいの。コウちゃん」
「友達と回るらしいし。憧れの文化祭だから、一人っていうのも何か。ねっそうでしょ、夏乃さん」
「うん、そう......だね。ありがとうっコウちゃん!私が行きたいのは──」
時刻は、8時20分になり、クラスメート達が教室を出ていく。
8時30分に体育館に移動することになっているが、俺と数人は教室に残り、隣の特別教室に移り相手に出す食べ物の下準備をしていた。
誰一人一言も発することなく、下準備を続けた。




