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頼まれ事
「えっ、今なんて言ったの。菫」
行き交う生徒の目を気にしながら聞いた。
瞳をうるうるさせながら、俺の目を見つめてくる。
その瞳はズルいだろー。
恥ずかしそうに意を決して言う。
「だから付き合いたい人がいるの。手伝ってくれない」
俺は片手で顔を覆い小さくため息を吐く。
「返事はまた後で。それでいいか」
「うん、またね。じゃあ、帰るから」
そう言い残し廊下を走って行った。
はあー、何でこうなるんだろう。どうにかしないと。
立ち尽くしていると、あっ君が
「どうした」
と言ってきたので先ほどのことを話しながら家に帰る。
「菫のやつ、俺に付き合いたい人とひっつけろって頼んできてさ。あっ君どうにかしてくれよ」
「頼まれたのはコウなんだから、頑張れよ」
「他人事なんだから。あっ君は」
あっ君とわかれ家に着いた。
玄関扉を開けて中に入る。
「ただいま」
靴を脱ぎスリッパに履き替えてリビングに向かう。
ソファに座る姉が、
「疲れてんじゃない。あんた」
といい声で聞いてきた。
姉にはお見通しだった。
「今から飯作るから」
「うん。お願いー」
姉は全く家事が出来ない。
おかずを作っている間も悩んでいた。