文化祭編─文化祭前日
ようやく文化祭の前日になる。
朝から、授業はなく文化祭の出し物の準備だけだ。
俺のクラスは、午後の6時30分に後片付けを終え、帰宅できることになった。
俺は、星峰さんのクラスを目指して廊下を歩いていた。
窓に目を向けると、辺りは薄暗くなっていた。
はぁー、とため息しか出ない。
教室は、扉が閉まっていて教室内からセリフが聞こえていた。
終わりそうもなさそうだが、帰れるか確認を取るため、そっと扉を開けた。
俺に気付いた、三つ編みの女子が駆け寄ってきて、耳もとで謝る。
「あっ、香ちゃんの彼氏さん。まだ終わりそうにないよ、ごめんね。わざわざきてもらったのに」
「そうなんだ。何時頃かな、終わるのは?」
「えっーと、7時過ぎかも。香ちゃんとしたの、もう」
首を傾げピンとたてたひとさし指を突っつく要領で頬に触れながら答えた後、にやけた顔を近付け、聞く彼女。
「キスは、だけど。問題になるようなことはしてないからねっ」
「まあ、そうだろうね。そういうことは、社会人になって責任を取れる歳でないとね。ごめんごめん、気になってつい、っていうのだよ。気を悪くさせたのならごめんね」
意外と口数が多いのに驚いた。
「別にいいよ。それは同意見なんだけど......観てていいかな、並志野さん?」
「私はいいけど、香ちゃんが怒るんじゃない?」
「たまには怒られるのもいいかな、なんて。冗談、また来るよ。じゃあ」
「う、うん......Mなの、涼更くんって?」
「そういうんじゃないから、引かないで」
俺は、教室を出て、扉を閉めて歩き出す。
星峰さんと帰り、彼女の家まで送っていって、帰宅した。
「ただいま」
リビングに足を踏み入れると母さんとぶつかりそうになる。
「うわっ、お帰りコウ。夕飯できてるから食べちゃいなさい」
「うん、わかったよ」
返事して、椅子に腰をおろし、夕飯に手をつけた。
「コウ、あんた。菫ちゃんが最近様子がおかしいらしいけど、知らない?」
「えっ、ううん......知らないよ」
「そう......あんたがおかしかった日からとか言ってたけど──」
「へ、へぇ......そうなんだ」
母さんの耳にも届いてたのか、そりゃそうか。
リビングに姉はおらず、静かで姉が嫌がることをして、気持ちを紛らわしたい気分になる俺だった。
次回は、やっと文化祭本番に入ります!




