表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/145

文化祭編─幼馴染みと会話

文化祭の準備が終わり、昇降口を出てすぐの壁に菫が寄り掛かっていた。

切ない表情をしながら俯いていた。

辺りが真っ暗なのに、表情がはっきりとわかっていた。

一瞥して、通り抜けようと歩きだしたところで、菫に呼び止められる。

「コウ、いいかな?ちょっと」

俺は、足をとめ、返事をする。

「いいけど。何だよ、フラれたのか?先輩に」

「違う。一緒に帰るの断って、コウを待ってたの」

「ふーん。気にしてんの、俺のこと?」

「そう......だよ。気にしたら、心配したらだめなの?仕方なかったの、好きだったんだもん。先輩のことが......」

菫の声が小さくなっていく。

「もういいから。何が聞きたいんだよ」

「変わったね......コウ。振ったからそんなに冷たいの私に」

「違うからっ。お前が振った俺に頼んできたことだよ。わからねぇの、お前はっ!」

つい、大声で荒らげてしまう。

拳が震えていた。

最悪だな、俺。

そう思っても、言わずにはいられない。

傷付けると知りながら、俺は続ける。

「好きだった奴が他の奴に取られたんだよっ、呆気なく。わかってるよ、俺がお前の頼みを断れば、お前の恋愛は終わってたかも知れない。けど、断れなかった。無理だった。俺が悪いっ!そんなのわかってるっつーの。取られる相手に手を貸した、失敗を願いながら。醜い奴だって自覚してるよっ!俺はぁ、おっれぇはお前のこと──」

俺が想いをすべて吐露して気付く。気付いてしまう。


菫は、大粒の涙をボロボロと流しながら、


「──ごめん、コウ。ごめん、コウ。ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい──ごめんね、コウ。私が悪かったよ」


謝り続けていた。

泣きじゃくり、嗚咽混じりで。


後悔が俺を襲い、何が何だかわからなくなっていった。

目の前で、可愛いはずの顔を涙や鼻水でぐしゃぐしゃの顔で泣きじゃくり、嗚咽混じりの彼女──三条菫をみることができなくなる。

言葉が出てこない、どんな声を掛ければいいのか、思考できず、いつの間にか、力なく歩きだしていた。


気がついたときには、ベッドに横たわっていた。

記憶がすっぽり、ない。どう帰ってきたのか、赤信号で足をとめた回数すら、覚えていない。

身体の所々が痛むのに今さら気付いた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ