番外編─バレンタインデー2
バレンタインデーの前日。
リビングで、香をからかっているとスマホが着信を告げる。
「もしも~し。こはっち、例の彼に渡すんでしょ。私に構ってて、いいの~」
『うっさい、スズちゃん。そんなことはどうでもいいの。今年は誰かにあげるの、スズちゃん?男っ毛ないようだけどぉ~』
「からかわないでぇよぉ、まあ、可愛い妹の彼氏に市販のかな。無理だからね、私ぃ」
『うっわ~かわいそうぅ。よってこなくなったしね、前より』
「誰のせいだ、誰のせいっ!こはっち!」
『だぁ~れぇだろうー?』
「わかりきってるくせして、ほんとっやになるよ」
『はははっ』
琥珀は高らかに笑っている。
私は、昔の思い出に浸り始めた。
小学生の頃からの友達で他クラスになることはなかった。綴雨葉琥珀とは腐れ縁、とでもいうのか、そんな感じだ。その頃の彼女は、正義感が強くあって、周りから浮いていた。
「うっさい、ツヅウバのブス、ブース」
などと男子から言われていることが多かった。
彼女と仲良くしていたせいか、私まで大半の男子から嫌われていた。
数人の男子だけは、仲よくしてくれて、バレンタインデーにチョコを渡して、ホワイトデーにお返しをくれた。
そんなこんなで、今は男子から好かれることもなく、唯一好意を抱いているのは、香の彼氏だけだ。何かと優しくしてくれる。
私には、バレンタインデーは縁遠いものとなった。
私は、昔のバレンタインデーの思い出に浸っていた。
「私は、今から渡すチョコを買いにいくから。きるね、こはっちまた~」
私は通話を切り、自宅を出ていく。




