文化祭編─佐野志桜里
先輩に告白された数日後の放課後。
教室を出ようとしたところで、担任から呼び止められた。
「涼更くん、佐野さんが──」
「すみませんが今日は無理です」
「でも、す──」
「無理です」
担任の言葉を遮り、教室を後にした。
佐野志桜里とは極力関わりたくない。彼女とは、中学が同じで、その頃から最低なやつだった。
クラスメートの一人を自殺寸前まで追いこんだ。そのクラスメートは、塞ぎこんでしまったが、なんとか、高校に進学したことはわかっている。
リストカットまでしていたらしい。
彼女には人の痛みが理解できないやつだ。罪悪感すら抱いてない。
彼女の名前や姿なんか見たくない。
自販機で、飲み物を買っていると後ろから呼ばれた。
「コウ、何かあった」
「菫か。何もねぇよ」
振り向き、菫に返す。
「ほら、やるよ。菫」
自販機から取り出した、ペットボトルを投げて渡した。
「ありがとう。悩みがあったら言ってね、コウ」
キャッチした菫は、そんなことを言う。
「ねぇって、悩みなんて」
「冷たいよ、コウ。私が振ったから?」
「そうじゃねぇよ。じゃあな」
俺は、菫を残し、レモンティーのペットボトルを掴みながら、廊下を歩く。




