番外編─バレンタインデー1
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中二のバレンタインデー当日、チョコが下駄箱に入っていた。
生まれて初めてのチョコだ。
家族から貰えるが、家族以外の女子から貰うなんて思いもしなかった。
登校して、下駄箱の扉を開けるとチョコが入っていた。
大好物のホワイトチョコだった。しかもハートの形。
メモ帳の紙が添えられていて、
『直接渡せない私を許してください。私はあなたに救われました。ありがとうございます。もし、よかったら食べてください。 かおり』
と、書かれていた。
メモ帳の紙を見て、思い出した。
前もこのようなことがあったことを。
かおりなんて、通っている学校に5人はいる。
俺が誰かを救ったことなんてない。
貰えたのだから素直に受け取っておこう。
何故、俺の好みを知っているのか不思議だ。
鞄に丁寧に入れる。
教室には何人かクラスメートがいた。
授業中、来月のお返しを考えていたが、返す相手がわからないことに気付いたのは放課後だった。
下駄箱で靴に履き替えて、昇降口を抜け、校舎を出たところで一人の女子が気になった。
彼女がしていた手袋に身に覚えがあった。一年の頃に下駄箱に入っていた手袋と同じだった。
涼更は、バレンタインデーに『かおり』から貰ったチョコが初めてだ。家族以外の女子からのチョコは。